ルウェンゾリ山地
ルウェンゾリ山地は、アフリカ中部、ウガンダとコンゴ民主共和国の国境に位置する山地。小規模ながらも壮観な眺めを持つ。最高峰の標高は5109mである。ルウェンゾリの山頂付近は赤道直下にもかかわらず万年雪を冠しているが、アフリカ大陸で万年雪を戴くのはキリマンジャロ山とケニア山、そしてこのルウェンゾリだけである。ルウェンゾリ山地はしばしばプトレマイオスが記録した「月の山」に比定されることがある。しかし、そう決め付けるには、元の記述が曖昧に過ぎる。
ルウェンゾリ山地は、アフリカ大地溝帯に属する西リフトバレーの側面が隆起したことによって形成された。山地の長さは約120km、幅65kmである。この山地は、深い峡谷に区切られたスタンリー山群 (Mount Stanley, 5109m)、 スピーク山群 (Mount Speke, 4890m)、ベイカー山群 ( Mount Baker, 4843m)、 エミン山群 (Mount Emin, 4798m)、ゲッシ山群 (en:Mount Gessi, 4,715m)、 ルイジ・ディ・サヴォイア山群 (Mount Luigi di Savoia, 4627m)の6つの山塊から成り立っている[1]。
スタンリー山群は最高峰であり、特にいくつかある山頂の中のマルガリータ峰が標高5109mとなっている。300万年前のプレート運動で傾斜し、上方へ圧縮して片麻岩や花崗岩からなる山体が出来たと考えられている。この山地は、すっぽりと雲に覆われていることから、非常に湿潤な地域になっている。
ルウェンゾリ山地は、熱帯雨林から高山草原、さらに雪原と、非常に多彩な植生を持つ山地であることが知られている。コケに覆われた一部の地域には、6mにもなるヒースが生えていることで知られている。また、ジャイアントロベリアが生えている地域もある。もちろん、森林ゾウやいくつかの霊長類、固有種の鳥類など、多彩な植生と調和している個性的な動物相もまた優れたものである。
ルウェンゾリ山地のほとんどは、「ルウェンゾリ山地国立公園」(ウガンダ)、「ヴィルンガ国立公園」(コンゴ民主共和国)として世界遺産に登録されている。
この山地を最初に目撃したヨーロッパ人は探検家のヘンリー・モートン・スタンリーで、1889年であった。それ以前の20年ほどの間に目撃しうる立場にいた探検家たちは、山地が前述の雲に覆われていたことから視認できなかった。
1889年6月7日には、探検隊の副司令官で軍治責任者であったウィリアム・グラント・ステアーズ (William Grant Stairs) が、10677フィート地点に辿り着き、非アフリカ人として最初の登山者となった。最初の登頂者は1906年に成功したルイージ・アメデーオ・ディ・サヴォイア である。
ルウェンゾリの氷河の後退
ルウェンゾリ山頂の氷河も20世紀以降の以降変動の影響を受けている。1906年には、以上の山頂で43もの名付けられた氷河が分布し、氷河が覆う総面積は7.5km² (当時のアフリカ氷河の約半分)であった。ところが2005年の観測では、わずか3つの山に約1.5km² が残るに過ぎなくなっていた。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのリチャード・テイラーらの研究では、地球規模の気候変動にその原因が求められており、山地の植生や生物多様性への影響が研究されている。
脚注
参考文献
- Glaciers of the Middle East and Africa, Williams, Richard S., Jr. (editor) In: U. S. Geological Survey Professional Paper, 1991, pp.G1-G70
- Guide to the Ruwenzori, Osmaston,H.A., Pasteur,D. 1972, Mountain Club of Uganda. 200 p.
- Tropical Glaciers, Kaser, G., Osmaston, H.A. 2002, Cambridge University Press, UK. 207 p.
- Ruwenzori, de Filippi, F. 1909. Constable, London. 408 p.
- Greenpeace article "The Death of the Ice Giants
- BBC Article "Fabled ice field set to vanish"
- Dr Taylor's Homepage, with information about the impact of climate change on Rwenzori.
- Kaser et al. 2004, in International Journal of Climatology 24: 329–339 (2004)