ホピ族

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古今のホピ族。右上・左下の少女の髪形は、20世紀初頭まで流行した「蝶々結い」

ホピ族(Hopi)は、アメリカ・インディアンの部族のひとつ。「ホピ」とは彼らの言葉で「平和の民」という意味である。

文化

  • 主にアリゾナ州北部の6,000km²の保留地(Reservation)に住んでいる。彼らの保留地はナバホ族の保留地に周囲を囲まれている。ホピ族の支族には、アリゾナ州西部、コロラド川沿いの保留地に生活しているものもいる。同地区のホピ族は、メサと呼ばれる3つのテーブルマウンテンに居留している。なお、小惑星(2938)のホピは、ホピ族の名を取り命名されている。
  • 男子の正装は、鉢巻に白服。女子はベルベットのロングドレスで、20世紀初頭までは蝶々型の独特の髪型を結い上げていた。
ホピ族の住居。(ステレオグラム1900年
母親に髪を結ってもらう少女(1900年)
  • トウモロコシの作付け・収穫が全ての儀式の中心である。
  • 西方のサンフランシスコピークの近くの聖なる山に住んでいる、「カチナ」という数百に上る精霊群を守護とする。儀式の際には、このカチナ群に扮したダンサーが踊りを捧げる。儀式の際のトリックスターは「コシャレ」という。
  • カチナの一種、精霊「ココペリ」を南西部に広めたのはホピとされる。
  • 子供たちへの教育用に作られるカラフルな木彫りの「カチナ人形」は、民芸品・芸術品としても人気が高く、日本にも輸入されている。
  • 夏至の頃、「ニーマンの儀式」という非公開の仮面行事を行う。水木しげるはこっそりこれを写生して、画に残している。

食文化

主食はトウモロコシのパンで、プエブロ族と同様、村のあちこちに円いパン焼き窯を持つ。多種類のマメや4色のトウモロコシを栽培しており、赤や青のトウモロコシはピキ・ブレッドという薄いパンにする。サボテンの葉のサラダなど野菜料理が多く、グアカモーレもホピ族が考え出したという説がある[1]

経済

経済

  • トウモロコシを中心とする農業が主体で、独立性が高い。
  • ホピ族は彼らの聖なる食べ物とされるトウモロコシを中心とする農業とホピアートと呼ばれる信仰に基づいたアート作品を作製し販売することで主に生計を立てている。
  • ホピアートの主なる種類はホピジュエリー(シルバーアクセサリー)、精霊カチーナ人形、バスケット及び陶器類。それらのアート品にはホピ族に伝わる信仰や神話などが刻まれ、平和の民ホピ族としての精神を伝えるものとして世界中から愛好されている。

地下資源

  • ホピの住む大地に続くブラックマウンテンという土地からアメリカ合衆国がウランを採掘。このウランが広島市長崎市に投下された原子爆弾の原料にもなったと一説では言われている。ホピの予言では「母なる大地の内臓をえぐってはいけない」と言われており、地球上すべてのウラン採掘に反対している。
  • 彼らの保留地(Reservation)には、ウランのほかにも石炭や地下資源が豊富と考えられ、20世紀初頭からたびたびアメリカ政府によって埋蔵資源が狙われたともいわれている。(→ホピ族の強制移住計画
  • ニューメキシコのナバホ族保留地には、現在25億ドル規模の石炭火力発電所を含む「沙漠の岩のエネルギー計画」が進行しているが、近隣のユテ族などが大気汚染を懸念してこれに反発している。ごく一部のホピ族は同施設に雇用創出の期待をかけており、2009年10月に、この石炭火力発電所の閉鎖を要求している環境保護団体に対し、批判声明を出した。ナバホ族もこれに賛成している。

その他

  • ホピ族の一部は、周辺部族のチェメフエビ族モハーヴェ族ナバホ族と共同で「コロラド川インディアン部族」を結成している。彼らは同州で、インディアン・カジノの「青い水のカジノ」を経営している。
  • アメリカ合衆国の同化政策によって、20世紀には全寮制の「インディアン寄宿学校」に強制入学させられた歴史もある。

ホピの予言

  • 神に導かれ現在の地にホピの人々がやってきた際、大精霊から告げられた予言が「ホピの予言」として知られている。
  • 現在から未来にかけての予言は「世界は今物質への強欲のためにバランスを失っており、このままでは世界は終わる」という警告であった。正しい道を選べば発展の道が残されているという。
  • おおよそ100年前に描かれたロードプランと呼ばれる岩絵には二つの道が記されている。下の道はホピの道と呼ばれる謙虚につつましく生きる道、上の道は欲望のまま生きる道である。人類がホピの道を選んだ場合、未来永劫に豊かで幸せな道が続いている。しかし人類が上の道を選んだ場合、ジグザグ線で示された混乱の道を歩み、その先はない。
  • ホピの予言には様々なことが記されているが、その中に広島・長崎の原子爆弾についても「灰のつまったひょうたん」と予言されていた。また、「東に黒い太陽の昇るとき、ホピは雲母の家に向かい、世界は滅びに向かう」とあった。第二次大戦の後に、トマス・ベンヤクヤたちホピの長老は環境破壊と地球の危機を訴えるため、ニューヨーク国際連合に向かった。このとき、インディアナ州の工業都市ゲーリーの、スモッグと煤煙に煙る空に、黒い太陽が昇るのを見た。そして、ニューヨークに着き、国連ビルを見た彼らは、それが「雲母の家」だと悟り、有名なホピによる全世界への呼びかけを行った。ただしこの予言とされるテキストは最古のものが1948年であり、原子爆弾・国際連合設立後である。

ギャラリー

出典・参考文献

  1. ^ 東理夫 『クックブックに見るアメリカ食の謎』 27頁
  • 東理夫 『クックブックに見るアメリカ食の謎』 東京創元社、2000年。

関連項目

  • ヴィクター・マサエスヴァ - ホピ族出身の写真家、映像作家。ドキュメンタリー映画作品に『ホピ』(1984年)、『イマジニング・インディアン』(1992年)などがある。
  • カチナ - ホピ族が信仰する超自然的な精霊。

外部リンク