ベラ

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ベラ
ホンソメワケベラ
Labroides dimidiatus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ベラ亜目 Labroidei
: ベラ科 Labridae
英名
Wrasse
下位分類群
本文参照

ベラ(倍良、遍羅、英名:Wrasseラス)は、スズキ目ベラ亜目ベラ科 Labridae に属するの総称。世界中の暖かい海に約500種が生息する。日本近海には約130種が生息し、サンゴ礁などで普通に見ることができる。

ベラ科の魚は体長10 - 30センチメートル程度の比較的小さな種類が多いが、コブダイなど体長1メートルに達する大型魚も含まれる。ベラ科の最大種メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)は、まれに体長2メートルを超える個体が存在する。

多くは鮮やかな色彩をもち、雄と雌で体色が異なる。成長に伴って性転換を行う種も多い。キュウセンなど一部の種は、夜には砂に潜って眠ることが知られている。ソメワケベラの仲間は、他の魚の口の中や体表を掃除するという特異な生態をもっており、掃除魚などと呼ばれる。

特徴

4亜科・60属・500種ほどが知られる大きな科である。全世界の熱帯から温帯に広く分布し、浅い海の砂底、岩礁、サンゴ礁に生息する。日本にも数多くの種類が分布している。

成魚の大きさは全長10センチメートルほどのホンソメワケベラから、2メートル以上に達するメガネモチノウオまで種類によって異なるが、ふつう海岸で見られるのは全長20センチメートルほどの小型種が多い。体は細長く側編し、海藻やサンゴ、岩のすき間をすり抜けるのに都合がよい体型をしている。また、種類によっては体をくねらせて砂にもぐることもできる。

体表はスズキ類やイワシなどにくらべて粘液が多く、ぬるぬるしている。体色は種類によってさまざまで、白、黒、青、緑、橙、赤などの組み合わさった美しい体色の種類もいる。また、性別や成長の度合いによって体色がちがう種類もいて、同種でもオスとメス、幼魚と成魚で別種のようにみえる種類もある。

雌性先熟の性転換をすることが知られている。性転換して雄になった個体は雌を惹きつける派手な色彩に変化し、縄張り内の複数の雌と繁殖を行う。また、種類によっては生まれながらの雄もいる。前者を二次雄、後者を一次雄と呼ぶ。一次雄は集団産卵スニーキングストリーキングにより繁殖を行うが、二次雄と同じ派手な色彩に変化し、縄張りを持つこともある。

ほとんどの種類が肉食性で、丈夫な歯をもち、ゴカイ甲殻類などを捕食する。また、ほぼすべての種類が昼行性で、夜は岩陰にひそんだり、海底の砂にもぐったりして眠る。同じようにして冬眠をおこなう種類もある。

利用

からにかけてよく漁獲されるが、のコブダイなど一部を除くと漁業価値は低い。特に釣りで多く漁獲されるが、関東では「餌盗り」や「外道」として扱われ、釣ったその場で捨てられることもある。一方、関西では高級魚として扱われ専門の遊漁船も出るほど人気がある。なおは休眠するので、あまり漁獲されない。

身は軟らかいが、刺身、煮付け、唐揚げ南蛮漬けなど、いろいろな料理で食べられる。キュウセンは関東地方などの東日本では評価が低いが、関西以西、特に瀬戸内海沿岸ではギザミと呼ばれ、美味な魚として評価されている。これは太平洋で育ったものは身が締まらず水っぽく大味になるのに対し、瀬戸内海などで育ったものは早い潮流によって身が引き締まるためである。したがって、個々の地域による文化的、味の嗜好で、価値観の差違が発生しているわけではない。ホンソメワケベラ等、ペットとして飼育されることもある。

別名

クサビ、クサブ(長崎県

分類

ベラ科 Labridae には約500種が含まれる。また分類が困難な種も多い。

以下、下位分類と主な種のリストを挙げる。

ベラ亜科 Labrinae

Labrus bergylta Ascanius, 1767 (Ballan wrasse)

Labrus[1]

Centrolabrus[2]

Symphodus[3]

タキベラ亜科 Bodianinae

  • イラ属 Choerodon
    • イラ Choerodon azurio - 体長25センチメートル。背中はピンク色で顔と尾は青っぽく、背びれと尻びれは黄色っぽい。成長したオスの額はでっぱる。胸びれの上に黒っぽい斜めの線がある。
  • コブダイ属 Semicossyphus
    • コブダイ Semicossyphus reticulatus - カンダイとも呼ばれる。全長1メートル。成長したオスは額が出っ張る。幼魚は体が赤く、背びれ、尻びれ、尾びれが黒、目から尾びれまで白い線が走る。成長すると全身が赤褐色になり見た目は全く別の魚になってしまう。冬が旬で高級魚として扱われる。

ブダイベラ亜科 Pseudodacinae

1属 1種

カンムリベラ亜科 Corinae

明石海峡でつれたキュウセン 2007.6.23
  • ニシキベラ属 Thalassoma
  • ソメワケベラ属 Labroides
  • カンムリベラ属 Coris
  • ササノハベラ属 Pseudolabrus
    • ホシササノハベラ Pseudolabrus sieboldii - 体長20センチメートル。以前はアカササノハベラ P. eoethinus と同種と考えられており、ササノハベラ P. japonicus という名称が与えられていた。両者とも体色は褐色だが、アカササノハベラは名の通り赤みが強い。また、アカササノハベラにはホシササノハベラの体側に見られる白い斑がはっきりしないことや、眼の下から後方に伸びる黒褐色の縞が胸びれまで伸びていることなどがあげられる[1][2]。外洋に面した防波堤などでよく釣れる、釣り人にはおなじみの魚である。
  • オハグロベラ属 Pteragogus
  • キュウセン属 Parajulis
    • キュウセン Parajulis poecilepterus - 日本の本州以南に広く分布し、岩礁と砂底が入り混じったような環境に多い。メスは体長20センチメートルほどで体色は黄褐色で、オスは体長30センチメートル以上になり、体色は黄緑色をしている。成長するにつれメスからオスへ性転換すると考えられている。オスメスとも赤い点線が縦に数本はいり、目から尾びれまでと背びれの根もとに黒い線が走っている。夜や冬は砂にもぐって休眠するため、釣りは日中に行われる。関東ではあまり食用にしないが、関西では好まれ、高値で取引される。特に刺身が珍味であり喜ばれる。
  • ホンベラ属 Halichoeres
    • ホンベラ Halichoeres tenuispinnis - 体長13センチメートル。体色は緑が主体でニシキベラに似ているが、色が薄くまた、赤い色をしている。ベラのなかではキュウセンやニシキベラと並んで温帯域に適している。

モチノウオ亜科 Cheilininae

参考文献

  1. ^ Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2013). Species of Labrus in FishBase. August 2013 version.
  2. ^ Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2013). Species of Centrolabrus in FishBase. August 2013 version.
  3. ^ Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2013). Species of Symphodus in FishBase. October 2013 version.

関連項目