パクス・シニカ
パクス・シニカ (Pax Sinica) は中国の覇権により維持された中国国内の平和状態。漢、唐、宋、元、明、清の時代がこれにあたる。これらの時代は政治的、経済的、軍事的、文化的な中華文明の支配に特徴付けられる。 パクスで始まる他の歴史用語は、パクス・ロマーナから派生してパクス・ブリタニカやパクス・アメリカーナなどがあるが、パクスの用語の多くは世界や後世に影響を与える一時代を表しており、これに対してパクス・シニカは中国国内の狭い範囲にとどまり現在社会に残した影響が少ないため、例外といえる。
ユーラシア大陸の大部分を支配したモンゴル帝国(元)の時代はパクス・モンゴリカに分類される。また、中華人民共和国による(経済的)覇権を予想する者が使うこともあるが、一般的ではない。
成り立ちと近隣地域への影響
中華文明は古代の中心から中国化の工程によって徐々に膨張し、漢の発展段階で多数派であった漢人にさまざまな民族を吸収した。後の帝国時代、中国は外部よりも内部に目を向けるようになり、多くの場合より小さい、あるいは後進的な隣人に朝貢を要求するだけになった。パクス・シニカは冊封と言う形で現れ、唐の時代、吐蕃より東、突厥より南のほぼ全ての地域を影響下に置いた。この時代がパクス・シニカの全盛期となり、シルクロードを通した貿易などで利益を上げた。唐が衰えると日本やモンゴル、チベットでは中華文明からの脱却が行われ、日本では国風文化が育まれ、吐蕃ではチベット仏教が発展していった。
関連項目
外部リンク
- 矢吹晋「パクス・アメリカーナ (Pax Americana) からパクス・シニカ Pax Sinica) への転換を説いたジェイクスの新著を酷評した英紙書評」21世紀中国総研『Director's Watching』第54号、2010.03.26