ドドンパ
ドドンパは1960年代に日本で流行した特有のリズム・パターン。
概要
ドドンパの起源については諸説あるが、米国領時代のフィリピンで流行したマンボが源流であるとの説が有力である。フィリピンから大陸に渡ったフィリピン・マンボは、四拍子の2拍目にアクセントがある特徴があった。1960年、フィリピン・マンボの存在を知ったアイ・ジョージがジャズ・セッションなどで徐々にアレンジを加えてゆき、4拍目に「ド・ド」(中抜き三連符)、1拍目に「ン」、2拍目に「パ」、というリズムの特徴がそのまま「ドドンパ」になった[1]。
ドラムスのカップ(ライド・シンバル)とコンガによる特有のリズムと、シックス・コードを多用した和声により軽快に演奏される。
最初の披露は、京都・祇園のクラブ・ベラミで、五山送り火の日に「祇園小唄」のドドンパ編曲を舞妓に踊らせたという。その後関西を中心に人気が沸騰し、1961年1月、渡辺マリの「東京ドドンパ娘」の発売へと至る。この曲の大ヒットで全国規模のドドンパブームが到来した。この頃、ドドンパの起源を巡っては、渡辺マリ所属のビクターとアイ・ジョージ所属のテイチクとの間で論争が起こった[2]。
アイ・ジョージはドドンパを一つの編曲技法・ダンスリズムと捉えており、LP「ドドンパ誕生」「ドドンパ禁止」で、スタンダード楽曲のドドンパ編曲を発表した。そして実際に、ダンスホールやナイトクラブではドドンパ調の編曲がかけられ、ダンスが行われ、さらに楽曲の編曲もなされていた。さらにトリスウイスキーのCMへの楽曲提供(ジョージ自身が出演)は日本初のタイアップCMとされる[3]。
同時期に全盛期を迎えていたロカビリーにおいても、永六輔がLPのジャケットを制作し、中村八大も自身のリサイタルでドドンパを大々的にフィーチャーするなど、積極的な関わりが見られた[4]。その他、美空ひばりも「ひばりのドドンパ」(B面は「車屋さん」)」をシングル発売するなど、様々な歌手がドドンパと銘打った楽曲を発表し、映画のテーマにもなった。1962年発売の北原謙二「若いふたり」も代表曲である。「ドドンパ」の歌詞に合わせ脚を折り曲げ、腰を落とす踊りも流行した。
しかし、「東京ドドンパ娘」を超えるドドンパソングが登場しなかったこともあり、ドドンパブームは終息を迎えることとなる。
その後、1976年に桜たまこが「東京娘」を、1992年にモダンチョキチョキズが「ティーンエイジ・ドドンパ」(アルバム「ローリング・ドドイツ」に収録)を、2004年に氷川きよしが「きよしのドドンパ」を出しヒットとなるが、ドドンパブームの再来とまでは至っていない。
また、1961年夏頃からはドドンパに続いてパチャンガ、スクスクが流行し、さらにチュンガ(ペレス・プラードが生み出したリズムの一つ)も日本に紹介された[5]。
ドドンパ歌謡
歌手・演奏 | 作品 | 発売 | 備考・収録作品 |
---|---|---|---|
アロー・ラテン・グループ | 宇宙でドドンパ | 1960年 | シングル「宇宙でドドンパ/ベートーベンでドドンパ」 |
アロー・ラテン・グループ | ベートーベンでドドンパ | 1960年 | シングル「宇宙でドドンパ/ベートーベンでドドンパ」 「運命」をドドンパにアレンジしたインストルメンタル |
江波孝也 | どんぱんドドンパ | 1961年 | シングル「ドドンパ炭坑節/どんぱんドドンパ」 |
及川三千代 | ドドンパ炭坑節 | 1961年 | シングル「ドドンパ炭坑節/どんぱんドドンパ」 |
奥村愛子 | ドドンパ | 2003年 | シングル「いっさいがっさい」 |
春日八郎 | ドドンパ酒場 | 1961年 | シングル「ドドンパ舞妓はん/ドドンパ酒場」 |
北原謙二 | 若いふたり | 1962年 | シングル「若いふたり/夕べの星が見ていたよ」 |
小林万里 | ドドンパ舞妓はん | 1961年 | シングル「ドドンパ舞妓はん/ドドンパ酒場」 |
桜たまこ | 東京娘 | 1976年 | シングル「東京娘/さよなら健ちゃん」 |
スターダストレビュー | 銀座ネオン・パラダイス | 1981年 | シングル「銀座ネオン・パラダイス/夕暮れのスケッチ」 |
徳永ゆうき | 平成ドドンパ音頭 | 2014年 | シングル「平成ドドンパ音頭」 |
真木柚布子 | 大阪ドドンパ | 1999年 | シングル「大阪ドドンパ/道頓堀セレナーデ」 |
万代陽子 | ドドンパ・No.5 | 1961年 | シングル「ドドンパ・No.5/インスタント・ラブ」 |
万代陽子 | ドドンパ・ハイティーン | 1961年 | シングル「ダイナマイト娘/ドドンパ・ハイティーン」 |
美空ひばり | ひばりのドドンパ | 1961年 | シングル「ひばりのドドンパ/車屋さん」 |
モダンチョキチョキズ | ティーンエイジドドンパ | 1992年 | アルバム『ローリング・ドドイツ』 |
森山加代子 | 可愛いめんどりが歌った | 1961年 | シングル「ポケット・トランジスタ/可愛いめんどりが歌った」 |
氷川きよし | きよしのドドンパ | 2004年 | シングル「きよしのドドンパ」 |
山本正之 | おきょードドンパ | 2000年 | アルバム『十三の魔王』 |
渡辺マリ | 東京ドドンパ娘 | 1961年 | シングル「東京ドドンパ娘/恋愛0米」 |
和田弘とマヒナスターズ&松尾和子 | お座敷小唄 | 1964年 | シングル「お座敷小唄/マヒナのさのさ」 |
脚注
注釈
出典
参考文献
- 輪島裕介『踊る昭和歌謡 リズムからみる大衆音楽』NHK出版新書、2015年2月10日。ISBN 978-4-14-088454-6。
関連項目
- 王貞治 「ドドンパはお好きですか?」