コンベンション (TRPG)
テーブルトークRPG(TRPG)における「コンベンション」とは、TRPGを遊ぶための場を設けたゲームイベントのことである。
概要
コンベンションは主催者が集会場を用意し、TRPGを遊ぶための環境を整えた上で開催する。基本的には、TRPGの基礎的な知識とルールブック、サイコロなどの用品を持参すれば誰でも参加可能である。主催者は有志であったり、企業であったり、その気があれば個人でも主催可能である。日本国内においては主に大都市の近辺で多く開催される傾向にある。
歴史
有名なコンベンションであるGen Con(ジェンコン)は1967年、アメリカ、ゲイリー・ガイギャックスの自宅で個人主催として行われたことから始まった。この時点ではボードゲームとミニチュアゲームの会であった。世界最初のTRPGであるダンジョンズ&ドラゴンズが74年に発売され、イベントへの企業TSRの参入は76年に行われた。以降は企業によるコンベンションと個人主催のコンベンションの二つのスタイルができる。
TRPGのコンベンションはボードゲーム、ミニチュアゲームのための集会・大会が、TRPGも取り入れたりTRPG専用に変形する形で生まれたため、おおよその形は引き継いでいる。そのやり方は、ほとんど安定した人数、参加層が集まってくることを想定している。新しいコンベンションも従来のコンベンションのやり方を参考にしているため、あまり現在と昔で大きな変化はない。
現在、世界の代表的なコンベンションとして、アマチュア開催のコンベンションとして知られているものにはロペコン、企業開催のコンベンションとして知られているものにはジェンコンがある。日本ではそれぞれ文華祭、JGCなど。
スタイル
コンベンションの開催スタイルには大きく3つある。
いずれも予約制か当日参加制か、開催規模はどのくらいか、といったことには関係しないことが多い。予約制か当日参加制かはスタッフの手間によって、開催規模は会場によって決定されると云われている。基本的に開催規模が大きいほど、スタッフの予約や確認の手間が増えるために当日参加へ移行しやすい。
- フリープレイ
- 主催者は会場を用意し、参加者同士で自由にゲームを楽しんでもらうもの。事前にゲームマスターを募集したり、主催者側で用意することもある。
参加には予約を必要とするものもある。
- テーマイベント
- ある特定の目的に限定した内容のコンベンション。特定のゲームシステムのみに限定したものや、参加者を女性に限定したものなど。
- 企業主催
- TRPGに関連した企業やゲームショップなど、非アマチュアが主催するコンベンション。基本的に参加は事前申し込み制が多い。販売スペースやトークショーなどのイベントが行われることもある。ゲーム・フィールド主催の「ゲーマーズ・フィールドコンベンション」や、ゲーム出版懇話会が毎年初秋に開催する「ジャパンゲームコンベンション」などがこれにあたる。
日程
コンベンションの多くは当日参加し、その日に終わる。会場を借りている都合上、朝から昼(11〜13時)の間に開始、17〜18時に閉会することが多い。ただしコンベンションの中には少数ながら宿泊型も存在し、前述の「ジャパンゲームコンベンション」や「TRPG文華祭」などはホテル等を借り、3日ほど開催される。ホテルに泊まる必要があるため、特定の日を除いては必ず予約制であり、参加費も通常のコンベンションより高額になる。
進行
一般的なコンベンションは以下のように進行する。
- 開場
- 事前に主催者側が会場にプレイテーブルの配置や準備を済ませ、参加者の入場が始まる。主催者は参加者から参加費を受け取ったり、パンフレットなどの配布物を渡す。参加者はこの時点では開いている席に自由に座ることができる。
- 開会式
- コンベンションの開会が宣言される。会場の諸注意やゲームマスターの紹介などの伝達事項がある。
- 卓分け
- 参加者が遊びたいテーブルを選択し、主催者が調整してプレイテーブルを決定する。
- ゲーム開始
- ゲームが開始される。各テーブルごとに、適宜休憩や昼食などが入る。
- ゲーム終了
- 各テーブルがゲームを終了させる。終了時間までに終わらせるのが望ましい。
- 閉会
- コンベンションが終了する。閉会式がある場合もある。
会場
コンベンションに使用される会場は、アマチュア主催の場合、ほとんどが公民館の会議場やホールといった、施設使用料が安い(おおよそ1万円〜3万円)公共施設である。使用される会場は、主に主催者の予算や予想される参加者の来場数などにより決定される。また、会場が交通の便が良いか、周辺に飲食店が豊富か、その会場で以前に別のコンベンションが開催されたことがあるかなど、複数の条件が絡んでくる。結果として、コンベンションが開催される会場が特定の地域に偏っているという現状がある。企業主催の場合は、アマチュアでは借りられない高額な会場を使用することも珍しくない。先にあげたジャパンゲームコンベンションの場合は、新横浜プリンスホテルの会議室などを借り上げて開催されている。
準備
コンベンションの参加者と主催者は、それぞれ開催のために必要なものを準備しておくことが望ましいとされる。参加者向けのものは主催者が少量用意していることもある。開催されるコンベンションの情報は、雑誌やネットなどの参加募集の告知によって行われることが多い。準備に推奨とされるものは、募集要項には書かれないことが多く、暗黙の了解とされている。
参加者の準備
以下の三つは記載されないことが多い。
- さいころ類 - ルールに適したもの。6面、10面、20面をそれぞれ二個以上持つのが一般的とされるが、4面、8面、12面を必要とするゲームもある。ゲームマスターや主催者が貸し出してくれることもある。
- 筆記用具、メモ用紙 - ゲームだけでなく、名簿の確認などでの名前の記入にも用いられる。これも貸し出してくれることもある。
- 日用品 - ハンカチ、タオル、薬など。着替えや膝掛けがあると良い場合もある。
以下は記載されることもある。参加費については必ず記載されている。
- お金 - 会場までの往復交通費、参加費、飲食物のお金など。
- TRPGのルールブック - 事前にどんなシステムで遊ぶかが分かっている場合は、そのシステムのルールブックの所持が推奨される。
- 服装 - 清潔な衣服を用意すること。参加者の服装に規定を定めているコンベンションも存在する。
- ゲームマスターの場合は、上記に加えてキャラクターシートなどのフォーム類、マスター用ルール、シナリオ、フロアタイル、ミニチュアなども必要となる。
主催者の準備
- 会場 - コンベンションを開催するための会場。事前に確保する。
- 告知 - インターネット上での開催情報告知や、ゲームショップ店頭への開催チラシ配布、雑誌への情報掲載依頼(TRPG雑誌に限らず、アニメ雑誌に掲載されたこともある)など。
- 机と椅子 - ゲームを遊ぶための机と椅子。大抵は会場の備品を使用するが、まれに別料金が必要な場合がある。
- パンフレット - 会場の諸注意、ゲームマスター紹介、会場近辺の飲食店紹介などが記載されたもの。最低限諸注意を書いた紙1枚のこともある。
- アンケート用紙 - 参加者からコンベンションの感想や改善点を記入してもらうための紙。ない場合もあるが、主催者へのメールなどで代替可能でもある。
- ゲームマスター - 完全にフリープレイの場合以外は、ある程度を事前に募集するか主催者側で確保しておくことが望ましい。
また、通常コンベンションごとに以下の決まりを決定していて、参加者は守ることが必須とされる。
- ゴミ処理手段 - 主催者で処理するのか、参加者で処理してもらうのか。
コンベンションの楽しみ方
コンベンションでも基本は「TRPGを遊ぶこと」だが、人によって様々な楽しみ方がみられる。
- 交流
- コンベンションにきた他の参加者との交流を楽しむ。その結果、新しいゲーム仲間を作ることができたりする。
- チャレンジ
- 今まで遊んだことのないゲームシステムやシナリオに挑戦してみる機会である。また、今まで顔を合わせたことがない人と遊んでみて、自分の腕を試す機会でもある。
- 気分転換
- 普段TRPGをキャンペーンやサークルで遊んでいる人が、息抜きや気分転換、目先を変える意味などでコンベンションに来ることがある。
- お目当て
- 特定システム限定のコンベンションだと、そのシステムを遊びたいためだけに遠方からやってくる参加者がいる。他にも、企業主催コンベンションでのプロのゲームマスター目当てや、女性限定コンベンションでの同性プレイヤー見たさなど。
主催者・参加者が気をつけること
個人主催のコンベンションは開催数が多く、それに対する注意事項も広く流布している。代表的なものは以下の通り。
- 少しでも体調に不安がある場合、また集団の密集に慣れていない場合は、無理をせず参加を控えた方が良い。
- 慣れていない参加者は、慣れている友人と一緒に行くと安心感が持てて良い。
- 自分の常識を初心者に押し付けたりする行為は慎むこと。
- プレイスタイルの相違があったとしても、双方を尊重すること。議論になる場合は、セッション後に行うよう努める。
- コンベンションの会場から公の場に休憩時間などで移動した場合には、発言に気をつけること。(PCを殺した、モンスターを殺す、等の発言は特に注意)一般の人への配慮を忘れずに。
- プレイ中は携帯電話の電源を切る、もしくはマナーモードに設定することが推奨される。
- 会場の備品は大切に扱うこと。また盗撮対策の為、会場内が撮影禁止の施設も存在する。
- ゴミの処理は会場やコンベンションスタッフの指示に従って適切に処理をすること。
- 異性、同性に限らず、むやみに個人情報を教えないこと。またむやみに他人の体に触れるのも好ましくない。
- 犯罪行為はしないこと。(他人のルールブックやサイコロの窃盗、ストーカー等)
- 一般社会の常識を持って臨むこと。不明な点があったらスタッフに聞くこと。
- 主催者側は、個人情報の管理を徹底すること。
- 主催者側は、コンベンション及び参加者への管理体制をしっかりと取ること。
会場に対するコンベンションの理解
一部の公共施設では、コンベンションやTRPGのサークル活動に対しては会場使用を拒否する事態も生じている。この背景として、施設利用者のマナーの低下によるものや、施設管理者にTRPGの知識がないこと(サイコロを使うことからさいころ賭博を行っていると勘違いされるケースもある)、不特定多数の参加者が来ることを受け入れないことなどがあげられる。また、特定の施設においてコンベンションの開催が過度に集中し、地域の住民が施設を使用できないことによる苦情も挙げられる。さらに、非営利とはいえ参加者から参加費を徴収することを「営利行為」として認めなかったり、参加費を取る場合は会場利用料が上がる施設もある。
参考文献
- 近藤功司 『やっぱりRPGが好き!』 富士見書房〈富士見ドラゴンブック〉、1992年。ISBN 4-8291-4264-2
- サークルMAGICAL DICE会報13号1994年
- サークルFORTUNE「TRPG120%vol.1」1999年
- TRPGサプリ増刊「TRPGがやりたい!!」2001年 ISBN 4-88735-028-0
- TRPGサプリ増刊「TRPGがもっとやりたい!!」2003年 ISBN 4-88735-046-9
- サークルSTCP発行「TRPGガイドブック」(プレイヤー編/コンベンション運営編)2008年