アリババと40人の盗賊
アリババと40人の盗賊(アラビア語: علي بابا、ペルシア語: علیبابا)は、『千夜一夜物語』(アラビアンナイト)の中の話の一つである。
主人公のアリババの「ババ」という語はアラビア語・ペルシャ語で「お父さん」の意である。
概要
『千夜一夜物語』は、18世紀のフランスの東洋学者ガランがフランス語に翻訳しヨーロッパに広く紹介されたが、『アリババと40人の盗賊』の話はその元となったアラビア語・ペルシャ語の原本が見当たらなかったことから、ガランの創作もしくは、アレッポのマロン派教徒から口伝えで聞いた物語を挿入したものという説がある。
あらすじ
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
昔、ペルシャの国に、貧乏だが真面目で働き者のアリババという男がいた。ある日、アリババは山で薪を集めている最中に、40人の盗賊たちが奪った財宝を洞穴の中に隠しているのを偶然目撃した。洞穴の入口をふさぐ岩の扉が「開けゴマ」の言葉と共に開き、「閉じよゴマ」の言葉と共に閉じる。その一部始終を見ていたアリババは、盗賊たちが立ち去るのを待って洞穴の中に入り、財宝の一部を袋に詰めて家に持ち帰った。
かくしてアリババは大金持ちになったが、金持ちで強欲なアリババの兄がそのことを不審に思い、財宝を手に入れた経緯をアリババから無理やり聞き出し、兄も財宝を狙って洞穴に忍び込んだ。ところが、財宝に夢中になって再び扉を開ける合言葉を忘れてしまい、洞穴から出られなくなったところを、戻って来た盗賊たちに見付かり、兄はバラバラに切り刻まれて惨殺されてしまった。
兄がいつまでも帰って来ないのを心配したアリババは、翌日になって洞穴へ向かい、盗賊たちの手によってバラバラにされた兄の死体を発見した。アリババは兄の死体を袋に入れて密かに持ち帰り、兄の家に仕えていた若くて聡明な女奴隷のモルジアナ[1]と相談の末、遠くの町から仕立屋の老人を呼んで死体を縫い合わせてもらい、表向きは兄が病死したことにして、内密に葬儀をすませた。その後は兄の家と財産もアリババの物になり、アリババは兄の息子を自分の養子にした。
一方、財宝の一部と死体が持ち去られたことに気付いた盗賊たちは、死んだ男の他にも仲間がいると考えて、すぐに捜査を始め、死体を縫い合わせた老人を見付けて、情報を聞き出すことに成功した。そしてアリババの家にたどり着いた盗賊たちはアリババを殺そうとしたが、逆に聡明なモルジアナの機転で全員返り討ちにされた。この功績によって、モルジアナはアリババの兄の息子の妻になり、洞穴の中に残っていた莫大な財宝は国中の貧しい人たちに分け与えられて、アリババの家は末永く栄えた。
日本語訳
脚注
- ^ モルジアナ(マルジャーナ)という名前は、“小さな真珠”の意味がある。かつてアラビアでは、奴隷を宝石・珊瑚・真珠・花などの名で呼ぶ風習があった。