ものしり博士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ものしり博士』(-はかせ)は、1961年4月6日から1969年4月5日までNHK総合テレビで毎週1回放送された子供向け番組。科学や歴史その他、日常の様々な疑問を、子供にわかりやすく解説する、テレビ百科事典とも言うべき教養番組であった。当初は白黒放送で、1963年度からカラー放送を実施。

この項目では、1960年9月5日から1961年3月31日まで同局で放送された『ものしりカレンダー』についても記述する。

概要[編集]

オープニング[編集]

口笛の短い演奏に続き、複数の子供の声で「ケペル先生、こんにちはー! [1]」と呼ぶ声と共にケペル博士の姿が画面に出て、博士が「やあ、こんにちは。元気かね? なんでも考えかんでも知って、なんでもかんでもやってみよう」と定型のあいさつを行ない、「さて、きょうは――」と続けて、その日の放送で取り上げる題材・テーマが告げられる。

内容[編集]

毎回1つのテーマを、絵や模型や人形などを用いたり、寸劇やコント、或いはそれらに歌を入れた簡単なミュージカル仕立てにするなど、多様な手法を使って解説した。

漢字を取り上げた回では、漢字の成り立ちについての説明で、うかんむりの形をした屋根の絵が出て、子供が「屋根の下には何がいるんだろう?」と言うと豚の姿が現われ、「家」という字は屋根の下に豚(豕)がいる形からできたものであるとケペル先生の解説が入る[2]

また台風に関する話では、台風が低緯度では偏東風に流されて西に進み、日本付近に来ると偏西風に流されて東寄りに進路を取る事の説明のために、アジア・太平洋の地図を床に描き、そこを、腰に雲に擬した物(綿?)をバレエのクラシックチュチュのように付けた男性が台風役となって、同じく偏東風役の男性が大きなうちわで送る風に乗って西寄りに歩き、次いで偏西風役の男性が風神のような袋を持って風を送る振りをし、台風役は向きを変えて日本に上陸、というようなユーモラスな演出を行なった

サンタクロースの由来については、聖ニコラウス [3] が、貧しいために結婚持参金が無い3人の娘たちを救った伝説が寸劇で紹介された。結婚できずに困っている上の娘の所に、ある夜金貨の袋が投げ込まれ、彼女は無事結婚できた。中の娘が結婚の時期になって持参金が無く困っていると、また誰かが金貨の袋を投げ入れる。やがて結婚の時を迎えた下の娘は悲しそうに、「お姉さまたちは、きっと神様が助けて下さったに違いない。でも、いくら神様でも、私までも助ける事はできないでしょうね」と言う。そこへまた金貨の袋が。そして次のシーンで、背を向けて遠くへ去ってゆく聖ニコラウスの姿。それに向かって、すべてを悟った娘が「ニコラウス様!」と叫ぶ。このような重厚で凝った演出も見られた。

月の話では、月面に見られるクレーターができた原因について、「火山の爆発でできた」、「隕石の衝突でできた」、「表面が厚く溶岩で覆われていた時、巨大な泡が表面に生じてそれが破裂してできた」とする3説を紹介し、ケペル先生自身が「(どれが正しいか)これはケペル先生にもわからない」と正直に言っている[4]

その他[編集]

  • 番組の最後に、視聴者から寄せられるいろいろな疑問にケペル先生が回答するコーナーがあった。
  • 放送番組センターの配給番組として、独立UHF局などの民放テレビ局でも再放送された。再放送では番組冒頭で「この番組は19○○年に放送されたものです」の字幕テロップが表示されている。
  • 放送ライブラリーでは1969年3月8日放送分が公開[5]

出演者[編集]

司会進行[編集]

司会進行は「ケペル先生(ケペル博士)」と呼ばれる、眼鏡をかけて額の禿げた、いかにも学者然とした老人の人形で、後ろから人間が動かすマペット式であり、伊東万里子が操作、熊倉一雄が声を担当[5]

その他の出演者[編集]

協力 劇団ころすけ

放送時間[編集]

  • 木曜 17:45 - 18:00 (1961年4月 - 1962年3月)
  • 土曜 17:45 - 18:00 (1962年4月 - 1969年4月)

スタッフ[編集]

ものしりカレンダー[編集]

  • 放送期間:1960年9月5日 - 1961年3月31日
  • 放送時間:NHK総合テレビ 平日17:50-18:00

「ものしり博士」の前身番組。熊倉一雄が声を演じる人形のケベル博士が司会進行していた[6]

脚注[編集]

  1. ^ これは暖候期の昼の長い時期のもので、夜が長く、放送時間帯には日没となる時期には「ケペル先生、こんばんはー!」となった。ケペル先生のあいさつも同じ。
  2. ^ 豚小屋を意味しているのではなく、古代中国で神を祭るために屋内で家畜をいけにえにしていた事に由来する。
  3. ^ 番組中では「セント(聖)ニコラス」とされた。
  4. ^ 当時は、バリンジャー隕石孔の研究からアメリカを中心に唱えられていた隕石説と、火山国である日本などで唱えられていた火山説が対立して、クレーターの成因は不明であった(例えば、宮本正太郎 『宇宙とは何か』 講談社ブルーバックス 1967年 を参照)。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 放送ライブラリー program番号:143877
  6. ^ 日本放送協会 編『NHK年鑑1962日本放送出版協会、1961年12月1日、198頁。NDLJP:2474359/174https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2474359 

外部リンク[編集]

NHK総合テレビ 木曜17:45 - 18:00
前番組 番組名 次番組
ものしり博士
(1961年4月 - 1962年3月)
NHK総合テレビ 土曜17:45 - 18:00
ものしり博士
(1962年4月 - 1969年4月)