USオープン (ビリヤード)

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USオープン(US Open Nine-ball Championship、ゆーえす―)は、1976年からアメリカ合衆国ヴァージニア州で開催されているポケットビリヤードの選手権である。 世界のトッププロが競う国際オープン大会であり、今日では世界選手権とならんで最も権威ある大会の一つである。2008年大会は10月19日〜25日。 2007年10月に開催された第35回USオープンの男子部門のチャンピオンはシェーン・ヴァン・ボーニングen:Shane Van Boening)である。この年から優勝賞金は5万ドルに上がった。ボーニングはダブルイリミネーションで行われたこの大会で無敗のまま優勝し233人の頂点に立った。決勝戦の相手は、前年の世界選手権者のロナート・アルカノ[1]。同年の女子チャンピオンはアリソン・フィッシャーen:Allison Fisher)であった[2]

歴史[編集]

1976年に初開催されたUSオープンは、2005年には世界中から256名のプレーヤーが参加するまでになった。 男子部門のプロモーターは1976年以来、en:Barry Behrmanが務めている。また、司会者としてスコット“ザ・ショット”スミスが有名である。女子部門はWPBAen:Women's Professional Billiard Association)により統括されている。初回の大会は、現在の会場のチェサピーク・カンファレンス・センターから程近いノーフォークのビリヤード場「Q-Masters pool room」で開催された。

フォーマット[編集]

11セット先取・勝者ブレイクダブルイリミネーションで行われ、勝者側(全勝)、敗者側(1敗、他の試合に全勝)の代表をファイナリストとし、決勝戦は13ラック先取で戦われる。多くのポケット競技の選手権同様「完全ダブルイリミネーション」ではない[3]

選手権[編集]

USオープンは、そのダブルイリミネーションの過酷さから、「優勝するのが世界選手権より難しい」といわれることがある。世界選手権のトーナメントでは始めは8ラック先取や9ラック先取から開始されるが、USオープンでは全試合が11ラック先取とセット数が多い。また、ダブルイリミネーションであるため試合数自体も多いためスタミナも要求される。試合会場のメインテーブルはいわゆるTVテーブルであり、ここでの試合はAccu-StatsからビデオおよびDVDが販売されている[4]。また、「ビリヤードクラブネットワーク」が動画をオンデマンド配信している(有料)[5]。著名なプロ選手や業界関係者による実況・解説が付加されている。 優勝者には副賞として緑のブレザーが授与される伝統がある。また、USオープンのエントリー費が終生免除される。トロフィーはアメリカ合衆国の地図を模した平たく巨大なものである。

記録[編集]

  • 最年長で栄冠に輝いたのは、アメリカのen:Mike Lebronで当時54歳。最年少の優勝者は21歳で当時プロデビューしたばかりの後の「20世紀最高のプレーヤー」マイク・シーゲルである。
  • 最多優勝を果たしたのはアール・ストリックランドとシェーン・バン・ボーニング(ともにアメリカ)で、それぞれ5回。ストリックランドは1984年、1987年、1993年、1997年および2000年、ボーニングは2007年、2012年、2013年、2014年、2016年。ボーニングは2012年ー2014年の3年連続優勝という記録も保持している。[6]

男子優勝者一覧[編集]

アジア勢の優勝は1994年のエフレン・レイズ(フィリピン)、2005年のアレックス・パグラヤン(フィリピン/カナダ)、2015年の鄭喩軒(台湾)のみ。 2008年まで、アメリカ人以外で優勝したプレーヤーは、エフレン・レイズラルフ・スーケーアレックス・パグラヤンミカ・イモネンの4人のみで、この4人はいずれも世界選手権の優勝者であった(Mike Lebronはアメリカ人と数える)。その後現在(2018年)に到るまでに、英国のダレン・アプルトン、台湾の鄭喩軒、スコットランドのジェイソン・ショウが加わった。

Year Winner
2017 スコットランドの旗 ジェイソン・ショウ
2016 アメリカ合衆国の旗 シェーン・ヴァン・ボーニング(5)
2015 チャイニーズタイペイの旗 鄭喩軒(ゼン・ユィーシェン=Kevin Chang)
2014 アメリカ合衆国の旗 シェーン・ヴァン・ボーニング(4)
2013 アメリカ合衆国の旗 シェーン・ヴァン・ボーニング(3)
2012 アメリカ合衆国の旗 シェーン・ヴァン・ボーニング(2)
2011 イギリスの旗 ダレン・アプルトン(2)
2010 イギリスの旗 ダレン・アプルトン
2009 フィンランドの旗 ミカ・イモネン(2)
2008 フィンランドの旗 ミカ・イモネン
2007 アメリカ合衆国の旗 シェーン・ヴァン・ボーニング
2006 アメリカ合衆国の旗 John Schmidt
2005 カナダの旗 アレックス・パグラヤン
2004 アメリカ合衆国の旗 Gabe Owen
2003 アメリカ合衆国の旗 Jeremy Jones
2002 ドイツの旗 ラルフ・スーケー
2001 アメリカ合衆国の旗 コーリー・デュエル
2000 アメリカ合衆国の旗 アール・ストリックランド(5)
1998 アメリカ合衆国の旗 バディ・ホール(2)
1999 アメリカ合衆国の旗 ジョニー・アーチャー
1997 アメリカ合衆国の旗 アール・ストリックランド(4)
1996 アメリカ合衆国の旗 ロドニー・モリス
1995 アメリカ合衆国の旗 Reed Pierce
1994 フィリピンの旗 エフレン・レイズ
1993 アメリカ合衆国の旗 アール・ストリックランド(3)
1992 アメリカ合衆国の旗 Tommy Kennedy
1991 アメリカ合衆国の旗 バディ・ホール
1990 アメリカ合衆国の旗 ニック・バーナー(2)
1989 アメリカ合衆国の旗 ニック・バーナー
1988 プエルトリコの旗 Mike Lebron
1987 アメリカ合衆国の旗 アール・ストリックランド(2)
1986 アメリカ合衆国の旗 David Howard
1985 アメリカ合衆国の旗 Jimmy Reid
1984 アメリカ合衆国の旗 アール・ストリックランド
1983 アメリカ合衆国の旗 マイク・シーゲル(3)
1982 アメリカ合衆国の旗 David Howard
1981 アメリカ合衆国の旗 アレン・ホプキンス
1980 アメリカ合衆国の旗 マイク・シーゲル(2)
1979 アメリカ合衆国の旗 Louie Roberts
1979 アメリカ合衆国の旗 スティーブ・ミゼラク
1978 アメリカ合衆国の旗 アレン・ホプキンス
1976 アメリカ合衆国の旗 マイク・シーゲル

女子優勝者一覧[編集]

男子の選手権と異なり、女子部門では出場資格がWPBA所属のプロに限られ、さらに一定以上の試合に出場してポイントを得ている選手のみとなる。

2007年の優勝者はアリソン・フィッシャーで、自身3度目の優勝および15度目のWPBAクラシックツアータイトル獲得となった[7]

Year Winner
2007 イギリスの旗 アリソン・フィッシャー

脚注[編集]

  1. ^ "US Open Down to Final Four", BilliardsDigest.com, October 20, 2007. Retrieved October 21, 2007
  2. ^ “WPBA's Top 5”. Billiards Digest (Chicago, Illinois: Luby Publishing) 30 (3): p. 55. (February 2008). ISSN 0164-761X. 
  3. ^ 決勝戦を含めたすべての試合をダブルイリミネーションで行うフォーマットを「完全ダブルイリミネーション」と呼ぶ。この場合、敗者側の代表は優勝するためには決勝戦で勝利した後、もう1回決勝戦を行い(=プレーオフ)これに勝利することが必要である。完全ダブルイリミネーションを採用する大会としてはリノオープン等がある。
  4. ^ Accu-Stats.com Retrieved 21 October 2007
  5. ^ BilliardClub.net Retrieved 21 October 2007
  6. ^ USOpen9BallChampionships.com'. Retrieved 21 October 2007
  7. ^ Cuetec Cues US Open, WPBA.com. Retrieved 21 October 2007.

外部リンク[編集]