TEC-DC9
イントラテック TEC-DC9とは、9mmパラベラム弾を使用するシンプル・ブローバック方式・オープン・ボルト撃発のセミオート火器であり、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)から拳銃として分類されている。射出成形された安価なポリマー製のフレームとプレス加工されたスチールパーツからなっている。一般に初期のセールス名であるTEC-9と呼ばれることが多い。
弾倉は10、20、32そして50発入りのものが使える。3種類のタイプがあり、TEC-DC9以外は別の名前で市場に出ていたが、これら三機種全てが一般にTEC-9と呼ばれている。
歴史
TEC-9はもともとスウェーデンのストックホルムにあるインターダイナミックAB社でMP-9という安価な軍用短機関銃として設計された。
インターダイナミックではこの製品をどこの軍ともセールスを取り付けることができずMP-9は作られることが無かった。あきらめきれないインターダイナミックはアメリカで民間向けのセミオート拳銃としてこの銃の代替市場を見出そうとした。そして George Kelgrenの手によって、KG-9として再設計が施された。
元がサブマシンガンであることから、TEC-9のオリジナル、KG-9はセミオートにもかかわらずオープンボルトで発射するという特徴があり、それのために違法にフルオートに改造することが比較的簡単であった。そのため、TEC-9は一般からは犯罪とギャングの暴行(走行中の車から人を無差別に発砲するドライブバイシューティング)の代名詞という汚名を着せられることとなった。
事態を重く見たATFが1982年にインターダイナミック(その後イントラテックと改称)にフルオートマチックへの改造が困難なクローズドボルトタイプの銃にTEC-9を作り変えるように命令した。
クローズドボルトタイプの銃はKG-99と呼ばれ、最初はTEC-9としてセールスされ後にTEC-DC9という名称になった。この銃は非常にフルオートに改造することが困難であるとされているが、それでもギャングの間では高い人気を誇っている。米国の銃規制支持者はTEC-DC9が”通常の拳銃より少し大きく、精度信頼性ともに乏しい拳銃”であるにもかかわらず、この銃を規制するべきであると強く主張している。
1994年の連邦攻撃武器規制法(The Assault Weapon Ban)はイントラテック社にTEC-DC9という名前を使うことを禁じた。その上で規制のためAB-10と呼ばれるTEC-9に特徴的な銃身の覆い(バレルシュラウド)を取り外し、銃口のネジを落とした新しいモデルを作らざるをえなくなった。数年後、イントラテックは廃業に追い込まれAB-10の生産もストップした。
その後
近年市場に出回らなくなり、数が限られているため、KG-9のシリーズ機種がガンコレクターの注目を集めている。一方で90年後半以降ギャングによる暴行が減り続けていることに関連し、ギャングはTEC-9より携行性に優れた小さな武器を求めるようになり、ギャングからの需要は減ってきている。かつてアメリカではTEC-9がわずか200米ドルという金額で売られていた。この武器はコロンバイン高校銃乱射事件でエリック・デヴィッド・ハリスとディラン・ベネット・クレボルド・ブラッドレイによって使われたうちの一つであり、多数の死傷者を出すこととなった。
特徴
短機関銃の遺産なのかTEC-9の非常に粗末なサイトシステムがたたって、TEC-9の精度は良くなかったといわれている。フルメタルジャケット弾が使われない限り、信頼性も低い。銃口にはネジが切られており、サプレッサー、発射炎サプレッサーもしくは延長バレルの装着が可能であった。
TEC-9の遊戯銃
日本でTEC-9のオリジナルであるKG-9は、黎明期からのサバイバルゲーム愛好家にとって非常に印象深い銃である。マルゼンがモデルアップしたKG-9のエアコッキングガンは、ポンプアクション化が容易なために速射性が高く、小型で小回りが効くため、当時のサバイバルゲームでの主力ボルトアクションライフルであったタカトクトイスSS-9000に対抗しうる近距離用装備として、絶大な人気を博していた。マルゼン自体もKG-9に思い入れがあったのか、その後も、時代の風潮から一歩遅れる形ではあったものの、セミオートガスガン、BV式ガスガン、ブローバックガスガンと、何度も内部の発射機構を変えてリリースされている。
登場するフィクション
- 日本のTV
- 『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』 - 城田優演じる地居 聖(津田助広)が、最終話『起の回』の早稲田奉仕園内で使用。フルオートに改造済みで、バレルシュラウドを含む鋼板プレス部品がステンレスポリッシュ加工品にカスタムされている。ダットサイト、レディマグ仕様
- 映画
- 『フォーリング・ダウン』 - マイケル・ダグラス演じる主人公の中年男がバーガーショップで本銃を乱射する。
- 小説
- 『血と暴力の国』(ISBN 9784-594054618) - 殺し屋・シュガーに追い込まれたベトナム帰還兵ルウェリン・モスが入手。
- ゲーム
- 『グランド・セフト・オートシリーズ』 - VC、SA、LCSに登場。フルオート改造仕様であり、サブマシンガンとして扱われている。装弾数は50発。サブマシンガンの中では最も性能が低く、SA以外は武器屋でも販売していない。
- 『セインツロウ』および『セインツロウ2』 - T3K Urbanの名称で登場。サブマシンガンカテゴリーの中では最も安価に購入でき、両作品とも全ギャング組織(主人公属するサードストリートセインツと、初代の三つのギャング団、および2の三つのギャング団)の構成員たちが多く愛用する。ただし、連射性能も命中性能もほかと比べると乏しい。装弾数は50発。
- 『エンド オブ エタニティ』 - オープニングムービーで悪魔憑きの少年(ゼファー)が乱射する。プレイヤー使用不可。