BMW・M52エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Morio (会話 | 投稿記録) による 2022年8月19日 (金) 06:46個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

BMW M52エンジンの外観

BMW M52 エンジンはストレート6英語版と呼ばれる直列6気筒 DOHC エンジンで、1994年から-2000年にかけて製造された。同エンジンはE36 320iM50エンジンの置き換えとして搭載され、2000年頃からM54エンジンに置き換わっていった。

以前のM50 エンジンと比較すると、M52エンジンはアルミブロックを使用していることが挙げられる。(北アメリカで生産されたものは鋳鉄ブロック(BMW Z3を含む))基本的にはM50TUエンジンの改良型であり、M50TUエンジン同様インテークカムシャフトへの可変バルブタイミング機構 (single VANOS英語版とBMWは呼称している)を搭載している。

1998年にM52TU ("TU=テクニカルアップデート") がリリースされ、エキゾーストカムシャフトへの可変バルブタイミング機構dual VANOS英語版とBMWは呼称している)が機能として新たに追加された。他の変更としては電子制御スロットル (スロットルケーブルはバックアップとして使用)[1]、 2重長インテークマニホールド (DISAとBMWは呼称している) 、改良されたシリンダーライナーを使用している[2]

北米ではM52エンジンをベースとしたS52エンジンがE36 M3 やZ3に搭載して1996-1999年にかけて販売された。また、このエンジンのブロックをベースにアルピナは自社でチューニングを行った。

M52エンジンとS52エンジンはWard's 10 Best Engines英語版に1997年から2000年までリストインしていた[3]

モデル

エンジン

形式

内径 パワー トルク レッド

ゾーン

ボア ストローク 圧縮比 生産

開始年

M52B20 1,991 cc (121 cu in) 110 kW (150 bhp) @ 5900 190 N⋅m (140 lb⋅ft)
@ 4200
6500 80 mm (3.1 in) 66 mm (2.6 in) 11.0 1994
M52TUB20 110 kW (148 hp)
@ 5900
190 N⋅m (140 lb⋅ft)
@ 3500
6500 80 mm (3.1 in) 66 mm (2.6 in) 11.0 1998
M52B25 2,494 cc (152 cu in) 125 kW (168 hp)
@ 5500
245 N⋅m (181 lb⋅ft)
@ 3950
6500 84 mm (3.3 in) 75 mm (3.0 in) 10.5 1995
M52TUB25 125 kW (168 hp)
@ 5500
245 N⋅m (181 lb⋅ft)
@ 3500
6500 84 mm (3.3 in) 75 mm (3.0 in) 10.5 1998
M52B28 2,793 cc (170 cu in) 142 kW (190 hp)
@ 5300
280 N⋅m (210 lb⋅ft)
@ 3950
6500 84 mm (3.3 in) 84 mm (3.3 in) 10.2 1995
M52TUB28 142 kW (190 hp)
@ 5500
280 N⋅m (210 lb⋅ft)
@ 3500
6500 84 mm (3.3 in) 84 mm (3.3 in) 10.2 1998

M52B20

1,991 cc (121 cu in) で1994年にリリースされた。ボアは80 mm (3.1 in) 、ストロークは66 mm (2.6 in)[4]

搭載車両:

M52TUB20

1998年リリースのテクニカルアップテート(TU)版でdual VANOSにより低回転トルクが増した。

搭載車両:

M52B25

2,494 cc (152 cu in) で1994年にリリースされた[5]。125 kW (168 hp)を発生し、ボアは84 mm (3.3 in) 、ストロークは

75 mm (3.0 in)。

搭載車両:

M52TUB25

1998年にリリースされたテクニカルアップデート(TU)版。dual VANOSにより低回転トルクが増した。

搭載車両:

M52B28

2,793 cc (170 cu in) で1995年に登場した。ボアは84 mm (3.3 in)、ストロークは84 mm (3.3 in)で最高出力は142 kW (190 hp)[7]

搭載車両:

M52TUB28

1998年にリリースされたテクニカルアップデート(TU)版で、dual VANOSにより低回転トルクが増した。

搭載車両:

S52

S52B30エンジンは、M52のハイパワーバージョンで、S50B30エンジンの代わりに1996-1999年にわたって北米のE36M3に使用された。S50B30ほど高出力ではなかった。鋳鉄のシリンダーブロックとアルミ製シリンダーヘッドを採用し、シングルVANOS仕様であった。排気量は3152ccでボア・ストロークは、86.4mm×89.6mm。出力は6,000 rpmで240 hp(179 kW)、トルクは3,800 rpmで236 lb・ft(320 N・m)であった。M52からは、軽量カムシャフト、ピストンリング、バルブスプリング、排気システムが変更されている。また、当エンジンのブロックを基にアルピナは自社でチューニングを行っていた。

  • 1996-1999 E36 M3(カナダおよび米国のみ)
  • 1998-2000 E36 / 7/8 Z3M(カナダおよび米国のみ)

ニカシル問題(硫黄を含むガソリンによる摩耗異常)

ニカシル(Nikasil)とは、エンジン部品、主にピストン、エシリンダーライナー用の親油性の電着表面コーティングの商標で、ニッケル合金炭化ケイ素コーティングのことである。

アルミニウムブロックを採用したM52エンジンは、1990年代後半に、ガソリンに高レベルの硫黄が含まれている環境でクレームを受けた。硫黄はニカシル処理をしたシリンダーライナー等を腐食してしまい、ボアライナーの早期摩耗等で多くの初期のM52およびM60エンジンのダメージに繋がった[8][9][10]

BMW Z3で使用しているアメリカ合衆国で製造されたM52エンジンは鋳鉄ブロックを採用しているため(M52B28を使用しているZ3を除く:同エンジンはアルミニウムブロックを採用)、ニカシル問題の影響は出ない。

高硫黄ガソリン市場向け(主に発展途上国)エンジンの最終的なニカシル問題対策は、アルミニウムブロック内のシリンダーライナーの改良で対応した[11]。 シリンダーライナーを除いて、M52エンジンの基本的なアルミニウムブロックはすべてのマーケットで同一だったものの、シリンダーライナーとボアライナーは改良をしていないものでは影響が大きかった[12][13]

M52TUエンジン(全マーケットでアルミニウムブロックを使用) ではシリンダーライナーを改良しニカシル問題の影響は受けない。

出典

  1. ^ Engine Management Systems – SIEMENS MS 42.0 Engine Control System”. pp. 51. 2015年9月27日閲覧。
  2. ^ http://www.unixnerd.demon.co.uk/m50.html
  3. ^ Wards 10 best engine”. Wardsauto.com. 2012年11月23日閲覧。
  4. ^ BMW Heaven Specification Database | Engine specifications for M52 engines”. Bmwheaven.com. 2012年11月18日閲覧。
  5. ^ BMW Heaven Specification Database | Engine specifications for M52 engines”. Bmwheaven.com. 2012年11月18日閲覧。
  6. ^ Real-OEM
  7. ^ BMW 328i, 1999 E46 technical specifications 96228”. Carfolio.com. 2012年11月18日閲覧。
  8. ^ BMW World - Nikasil, Usautoparts.net, オリジナルの2013-11-02時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20131102183446/http://www.usautoparts.net/bmw/engines/nikasil.htm 2012年11月18日閲覧。 
  9. ^ BMW Classics - http://www.bmwclassics.co.uk/about/index.html.+“BMW Classics Ezine - News, Reviews & Cars for Sale”. Bmwclassics.co.uk. 2012年11月18日閲覧。
  10. ^ Engine components / basic engine - Crankcase”. bimmernut.com. 2007年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月1日閲覧。
  11. ^ Simon Worby, Lestac Ltd (2002年). “The BMW Nikasil issue”. lestac.co.uk. 2005年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月1日閲覧。
  12. ^ BMW World - Nikasil”. Usautoparts.net. 2013年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月18日閲覧。
  13. ^ BMW World - M52 Engine”. Usautoparts.net. 2012年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月22日閲覧。

関連項目