3つのロシアの主題による序曲第1番

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3つのロシアの主題による序曲第1番』(ロシア語: Увертюра на темы трех русских песен No.1)は、ミリイ・バラキレフが作曲した演奏会用序曲。演奏時間は約8分。

概要[編集]

1858年に完成したバラキレフの初期作品の一つ。グリンカの作曲した『カマリンスカヤ』を手本としつつ、独自の手法でロシア民謡を交響的に処理しようと試みている。1881年に改訂された。

続編に当たる『3つのロシアの主題による序曲第2番』は1864年に完成、初演されたが、こちらは後に交響詩ルーシ』として改訂されている。なお、リムスキー=コルサコフも同名の曲を残している。

初演[編集]

1859年1月2日モスクワにて初演。

編成[編集]

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ弦五部

構成[編集]

いずれもよく知られた3つのロシア民謡を主題としている。

曲の冒頭、弦楽器が奏するメロディは第2主題を変形したもの。すぐに緩やかな第1主題がフルートに表れるが、これは民謡「白樺はなぜ頭を垂れなかったか(То не белая берёза)」から採られたもの。このメロディは弦楽器に移りしばらく展開される。

続いて第2主題が登場するが、これはチャイコフスキー交響曲第4番終楽章でも使われたメロディで、婚礼の歌「白樺は野に立てり(Во поле берёза стояла)」による。

第3主題は陽気な「ピーテル街道に沿って(Вдоль по питерской)」で、この民謡も後にストラヴィンスキーが『ペトルーシュカ』の終幕で使い有名となった。

第2、3主題が絡み合いながら展開し盛り上がりを見せるが、最後は第1主題が戻り静かに終わる。

参考文献[編集]

  • KALMUS社 スコアA5380
  • フランシス・マース(森田稔・梅津紀雄・中田朱美 訳)『ロシア音楽史』(2006年 春秋社)ISBN 4-393-93019-3