自己

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

自己(じこ、Self)とは心理学において自分によって経験または意識される自分自身を言う。

主体としての自己はあらゆる行動や思考の原点であるが、客体的な自己は物質的自己、精神的自己、社会的自己の三つから構成される。ホーナイは自己を現実にいる人間の心理的かつ身体的な総体としての現実的自己、さらに潜在的な可能性を持つ実在的自己、さらに理想化された自己の三つに分けており、神経症が理想化された自己によって実在的自己を見失った状態であると考える。

人間にとって自己は成長とともに獲得するものである。社会心理学の自己過程論によれば、幼児期においては自己意識は持たないが、鏡に映し出された自身の姿などを知覚することによる自覚事態、自分という存在の概念化による自己概念の獲得、自己概念の評価的側面である自尊心の獲得、そして自己の存在を他者に示す自己開示自己呈示の実施などを経て自己を段階的に発展させる。

自己の内容は複雑であり、内省を行ったとしても行動や感情の理由がわからない場合もある。これは内省の合理性や論理性、また内省によって動員される経験的知識や文化的背景が思考に強く影響するために因果関係が正確とは限らないためである。ベムの自己知覚理論は自分のことは自分がもっともよく知っているとする常識を否定し、自己の知覚と他者の知覚は基本的に変わらないことを示した理論である。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 外林大作、辻正三、島津一夫、能見義博編『誠信 心理学辞典』(誠信書房、1981年)
  • 上里一郎監『心理学基礎辞典』(至文堂、平成14年)