産地偽装
産地偽装(さんちぎそう)とは、偽装表示の一種で、生産地をいつわって表示し、消費者、中間業者に対しあたかも、表示された生産地で生産された製品であるかのように見せる行為をいう。
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[編集] 背景
本来、消費財や食料品などの生産地表示は、消費者の製品の品質への信頼を裏づけるものである。ところが、この信頼を逆手に取り、市場において市場価格が安価な生産地の品物に対し、特定の生産地名を記することにより、本来の生産地における市場価格より高価な市場価格で販売することが可能でなる。このことを産地偽装ロンダリングともいう。
この行為は、現在、不正競争防止法違反(通称「原産地虚偽表示」)や、場合によっては詐欺罪として扱われているが、産地の偽装は後を絶たないのが実情である。
また、生産地ではなく流通機構の地名を商品名に関する場合がある。この場合、生産地を協議会などが市などの区分よりはみ出して設定するなど、予め定めた地域とし、認定された市場を通ることにより、生産地とは名前が異なる地名が商品名に冠されることが多い。また、地域名と商品を合わせた名がブランドとして商標登録されるなど、主たる地域に認定する機関が存在するため、産地偽装とは呼ばないという主張がされることがある。
しかし、生産地の表示を偽る行為は、不正競争防止法が制定される以前から違法とされていた不正競争の類型であり、さらに近年の同法の改正では、生産地の誤認表示も不正競争類型とされており、商品名に付せられた地名が、生産地ではなく流通機構の地名であることが消費者に対して徹底されなければ、誤認表示と受け止められるので、やはり産地偽装にあたると言わなくてはならない。
なお、2009年4月、食品表示に関連する法令の一つであるJAS法が、産地偽装防止のために直罰規定を設けるなどの改正がされたが、その改正は不正競争防止法に屋上屋を架す無意味な行為であることが指摘[1]されている。
[編集] 法規
第二十一条
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
四 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第一号に掲げる者を除く。)— 不正競争防止法
第十九条の十三 内閣総理大臣は、飲食料品の品質に関する表示の適正化を図り一般消費者の選択に資するため、農林物資のうち飲食料品(生産の方法又は流通の方法に特色があり、これにより価値が高まると認められるものを除く。)の品質に関する表示について、内閣府令で定める区分ごとに、次に掲げる事項のうち必要な事項につき、その製造業者等が守るべき基準を定めなければならない。
一 名称、原料又は材料、保存の方法、原産地その他表示すべき事項
二 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者等が遵守すべき事項
第十九条の十三の二 製造業者等は、前条第一項から第三項までの規定により定められた品質に関する表示の基準に従い、農林物資の品質に関する表示をしなければならない。
第二十三条の二 第十九条の十三第一項又は第二項の規定により定められた品質に関する表示の基準において表示すべきこととされている原産地(原料又は材料の原産地を含む。)について虚偽の表示をした飲食料品を販売した者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
[編集] 主な産地偽装事件
- 下関ふぐ偽装事件
- 2004年。魚沼産のコシヒカリの全出荷量に対し市場集荷数が余りにも多いことから発覚した事件。
- 讃岐うどん偽装表示事件
- 2004年。香川県産の小麦粉を使用せずKブランドとして偽った事件。
- アサリ不当表示事件
- 2005年。中国、北朝鮮で採取されたアサリを国内産と表示した事件。
- 産地品種銘柄米偽造事件
- 2006年。東大阪市の「日本ライス」が産地品種銘柄米と偽りくず米を販売した事件。
- ミートホープ卸し肉偽装事件
- 2007年。牛挽肉に異物を混入させたにも関わらず牛挽肉と偽って販売していた事件で、同社は他にも輸入した鶏肉を国産鶏肉として給食業者などに販売していた。
- 琉球ガラス不当表示事件
- 2007年。琉球ガラス工芸協業組合(琉球ガラス村グループ)が子会社のベトナム工場で生産した品をベトナム製であるにもかかわらず、沖縄県で製造した「琉球ガラス」のように販売したとして原産国表示の排除命令を受けた。
- 2007年。船場吉兆本店料亭で出されたすき焼きを実際は佐賀牛にも関わらず但馬牛・三田牛と偽っていた事件。同社は消費期限改ざんなども行っており、大阪府警による家宅捜索を受けた。船場吉兆は企業として一度再生したものの、今度は前の客が箸をつけなかった刺身を新しく造ったものと偽って使い回ししていた事件が発覚し、ついに廃業へ追い込まれた。
- ウナギ偽装事件
- 中国産ウナギ、台湾産ウナギの偽装事件が多数存在するため、年代順に記述する。
- 2007年。宮崎県下の二つの養鰻業者が台湾産のウナギを、加工業者を経由する段階で宮崎産に偽装し、蒲焼きなどで販売していた。同年6月にテレビ朝日の追跡取材が功を奏し発覚、農林水産省が九州4県と合同で立ち入り調査してわかった。
- 2008年。愛知県一色町(現在の西尾市)の一色うなぎ漁業協同組合が台湾から輸入したウナギの蒲焼きに、2007年11月に特許庁から認められた地域ブランド(地域団体商標登録)「一色産うなぎ」という認証シールを貼って出荷していた問題で、「一色産うなぎブランド普及協議会」が同組合に対し認証シールを無期限使用禁止処分にした。同組合の大岡宗弘組合長 は「処分はやむを得ない。認証シールを張らずに、一色産として売ったケースもあるので影響まではわからない」とコメントした[2]。
- 2008年。徳島県徳島市に拠点があるウナギ輸入販売会社「魚秀」と、神戸市の水産物卸売会社「神港魚類」が、架空会社「一色フード」名義で、マラカイトグリーンが使用された中国産ウナギを「愛知県三河一色産」と偽装し出荷したとされる事件。これまでの単純な偽装表示と異なり、流通経路に架空会社を経由させ、多額の口止め料を払って組織的に行なわれていた偽装事件として全容解明が待たれている。2008年8月13日現在、立件中。
- サンライズフーズ
- 2008年。下関市の水産物加工卸売会社エツヒロの森敏一社長は、中国産フグを熊本県産と偽装表示して販売していた問題について「自分の指示でおこなった」と認め廃業。発覚直後は「私は指示していない。知らなかった」としていたが、「現在の風潮では中国産の表示で販売するのは難しい。熊本産で売りたかった」と釈明した[3]。
- フィリピン産海ぶどう偽装事件
- 2008年。沖縄産とフィリピン産の海ぶどうを混ぜて「沖縄産」と表示して販売したとして、那覇市の海産物販売業「ミネ・オーキッド」に対し、沖縄県水産課はJAS法の品質表示基準違反にあたるとして厳重注意処分とした。また、フィリピン産の混在を知りながら販売していた県産品販売業「にらい物産」に対しても同法に基づく表示是正などの指示をした[4]。
- 2008年。規格外の牛肉や馬肉などを飛騨牛と偽って販売していた岐阜県養老町の食肉卸売会社「丸明(まるあき)」の吉田明一社長が、岐阜県から行政指導を受けたあとも取引先へ食肉を提供していたことが発覚。社長は登記上、辞任後も社員として会社に残る。
- 事故米不正転売事件
- 2008年9月に発覚した事故米不正転売事件では、中国産の事故米が複数の業者によって国内産やアメリカ産、熊本産などに産地偽装されていたことが明るみに出た。米の流通に関する信頼を大きく損ねる結果となり、米のトレーサビリティ制度を議論するきっかけとなった。[5][6]
- 但馬牛産地偽装事件
- 2009年3月焼き肉店「焼肉酒家傳々」「焼肉茶房傳々」「傳々分家」を経営する「フーディーズ」が「ワイの店でお出ししているのは但馬牛一本」と自社サイトで唄いながら実際には20%程度しか使っていなかったとして公正取引委員会から排除命令を受けた。
- 鳴門産ワカメ産地偽装事件
- 2008年1月、13社もの加工業者が関与した産地偽装が発覚。加工業者団体が法令遵守を約束する協定を結ぶ。
- 2010年5月、徳島県鳴門市の水産加工会社・『マルナガ水産』が、中国産ワカメを使用したワカメ製品を『鳴門産』と偽装して販売したとして、徳島県警が同社の前社長を不正競争防止法違反の容疑で逮捕した[7]。
- 島根県産サザエ産地偽装事件
- 2010年4月から5月にかけ、イオングループのスーパーマーケット・光洋が、滋賀・大阪・兵庫・奈良の4府県の40店舗に於いて、サザエの特売を実施したが、その際、新聞の折り込みチラシに、「島根県産他国内産」と記載していたものの、実際は韓国産だったことが発覚。消費者庁は同年11月30日に、同社に対し再発防止を求める措置命令[8]。
- 氷見産ブリ産地偽装問題
- 富山県氷見市の水産物販売業者が、2010年12月13日から15日にかけて「氷見産」として出荷したブリについて、東京都水産物卸売業者協会が、実際の氷見産のものと比べて身が細いなどの相違点が見つかり、産地偽装の疑いがあるとして、氷見漁業協同組合に対し、調査と改善を求める要望書を提出[9]。
- 蜂蜜産地偽装事件
- 相模原市内の養蜂業者が、2009年2月から翌2010年12月にかけて、カナダ産やニュージーランド産の蜂蜜を、原産地を「北海道」と表示し、日本産であると偽装して「国産クローバー蜂蜜」との名称で販売していたとして、会長と社長が神奈川県警に不正競争防止法違反容疑で逮捕された[10]。
- ノニジュース産地偽装事件
- 大阪市浪速区の健康食品販売会社が、2008年7月から2010年12月にかけて、トンガ産やインドネシア産のノニを使用したジュースを、「タヒチ産」と偽装して販売したとして、大阪府警が2011年5月26日にこの会社の社長を不正競争防止法違反容疑で逮捕した[11]。
[編集] 偽装防止への取り組み
農産物、畜産物に対し、国は市場での立ち入り調査を行うと共に、農林水産省所管の独立行政法人農林水産消費安全技術センターがDNA検査などを行っている。 これと同時に、ブランド維持のため各都道府県に於いて産地表示の校正化が計られている。
[編集] DNA検査
農産物、畜産物にはDNAが存在する。産地や品種などにより若干の差違があるため、市場に於けるサンプル調査を行うことにより偽装されているか否か判別できる。
[編集] 表示方法の適正化指導
内容物に、一部の産地のものが少量しか無いにもかかわらず、その産地で生産された物で有るように見せかける行為を上記のDNA検査を含め指導、適正化を行う。関係する機関は多方面にわたり、真珠に至っては税務署などが関与する。
[編集] 地域ブランド化による産地の固定化
生産から出荷までの工程にルールを設け、県などの地方自治体、漁協、農協などの各種団体の監視を行う。これにより生産された物に対し、証明書を発行する。
[編集] 認証マークの表示
上記と関連するが農協や漁協などが、その地域で生産されかつ一定の品質を確保したものに認証マークを表示する。国の認定する伝統工芸品である伝統的工芸品には、「伝統証紙」がある。
[編集] 産地偽装を取り上げた作品
- スーパーの女 : 輸入牛肉を「和牛」と偽って販売するシーンがある。
[編集] 脚注
- ^ 朝日新聞「私の視点」 2009年4月8日付
- ^ 読売新聞 2008年7月3日付
- ^ 中国新聞 2008年8月1日付
- ^ 毎日新聞 2008年8月13日付
- ^ 非食用の事故米穀の不正規流通米について農林水産省 2008年9月~
- ^ 「米流通システム検討会」開催要領(PDF:44KB)農林水産省 2008年10月3日
- ^ ワカメの産地偽装で水産会社前社長を逮捕 中国産を鳴門産 徳島県警 産経新聞 2010年5月9日
- ^ 韓国産サザエを国産と表示 消費者庁、大阪の食品スーパーに措置命令 産経新聞 2010年11月30日
- ^ 産地偽装:「氷見産ブリ」に疑い 築地卸売業者が調査要望 毎日新聞 2010年12月31日
- ^ 養蜂業者会長ら2人逮捕 輸入品を国産と偽装容疑 2011年5月24日 共同通信
- ^ 産地偽装:ノニジュースをタヒチ産と偽り出荷 容疑者逮捕 毎日新聞 2011年5月26日