熱的死

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熱的死(ねってきし)とは、宇宙の最終状態として考えられうる状態で、宇宙のエントロピーが最大となる状態を指す。宇宙が熱的死に陥るとする考えは、「孤立系のエントロピーは増大する」という熱力学第二法則から導かれる。宇宙で無限の時間が経過すると、全てのエネルギーが均等に分布する状態に漸近的に到達すると考えられる。熱的死という考えを1854年に最初に提唱したのはヘルムホルツである。これはクラウジウスがエントロピーという物理量に基づいて熱力学第二法則を最終的に定式化する11年前(1865年)のことであった。

「熱的死」という言葉とは裏腹に、このシナリオでは宇宙全体は絶対零度に非常に近い温度になる。この結果は、宇宙膨張が永遠に続いて生命が維持できないほど低温な状態になるという「低温死 (cold death)」もしくは「ビッグフリーズ」と呼ばれる状態によく似ているが、これらと熱的死とは全く同じものではない。(詳細は [1] の説明を参照のこと。)

ただし、最近のインフレーション宇宙論の研究では熱的死の概念が逆転させられている。この宇宙論では、膨張前の初期宇宙は熱平衡の状態にあり、熱的死に似た状態だったことが示唆されている。逆に膨張宇宙では、宇宙がとりうる最大エントロピーは実際のエントロピーの量に比べて時間とともに非常に速く増加する(宇宙が膨張するかぎりにおいて、エントロピーの捨て場所には常に困らない)。そのため、宇宙のエントロピーは増大し続けるにも拘らず、宇宙は常に熱平衡状態から大きくずれた状態であり続けられる、と考える研究者もいる。さらに、宇宙の熱力学的モデルの概念自体にも疑問が投げかけられている。重力量子現象のような効果を単純な熱力学モデルと共存させるのは非常に難しいため、このような単純なモデルが宇宙の未来を予言するのに役立つかどうかは非常に疑わしいとする考え方もある。

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