有機ゲルマニウム化合物

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有機ゲルマニウム化合物(ゆうきゲルマニウムかごうぶつ)は炭素ゲルマニウム (Ge) の化学結合を含む有機金属化合物である。[1]ゲルマニウムは周期表上でケイ素 (Si)、スズ (Sn)、 (Pb) と同じく14族であり、有機ケイ素化合物有機スズ化合物と有機ゲルマニウム化合物には性質が類似する点もある。

ゲルマニウムの化合物は高価なこともあり、有機ゲルマニウム化合物は有機合成化学ではあまり大きく取り上げられない。しかしながら有毒な有機スズ化合物の代替品になりえるともされており、テトラメチルゲルマニウムやテトラエチルゲルマニウムは酸化ゲルマニウム(IV) による化学気相成長 (CVD) 法を用いたマイクロエレクトロニクス工業において、前駆体として用いられる。

有機ゲルマン[編集]

一般式 R4Ge (Rはアルキル基などを示す)で表される有機ゲルマン類は、最も安価な前駆体である四塩化ゲルマニウムとアルキル求核剤から得られる。R4Xで表される炭素族(第14族)化合物を比較した場合、Rの求核性は Si<Ge<Sn の順に増加する。これはβ-ケイ素効果としても知られる超共役による影響の順 Si<Ge<<Sn と等しい。Si−C結合は主にイオン的に、Sn−C結合は主にラジカル的に開裂するが、Ge−C結合はそれらの中間的な性質を示す。

ケイ素類縁体と同様、結合が極性を帯びているため(電気陰性度の差は 2.55 − 2.01 = 0.54)、またアリル基とゲルマニウム原子によってα-炭素イオンが安定化されるため、アリルゲルマン類の求核性は高い。細見・櫻井反応のゲルマニウム版が1986年に見出されている。

Nucleophilic addition with organogermanium.svg

この反応ではカルボニル基三フッ化ホウ素によって活性化されている。

ゲルマニウムヒドリド[編集]

有機ゲルマニウムヒドリドの一種、イソブチルゲルマン (IBGe) (Me2CHCH2)GeH3 (Meはメチル基を示す)は、有機金属気相成長法 (MOVPE) における蒸気圧の高い液体状のゲルマニウム源である。水素化ゲルマニウムよりも安全な代替物としてマイクロエレクトロニクスの分野で研究が進められている。

トリス(トリメチルシリル)ゲルマニウムヒドリド (Me3Si)3GeH は水素化トリブチルスズなどのスズヒドリド類に代わる無毒な化合物として研究されている。

その他[編集]

反応中間体として、多くのゲルマニウム誘導体が知られている。例としてゲルミレン(カルベン類縁体)、ゲルミルラジカル、ゲルミン(カルビン類縁体)が挙げられる[2]

ケイ素の場合と同様、Ge=CやGe=Ge二重結合を持つ化合物は不安定であるが、ベンゼン類縁体のゲルマベンゼンなどが知られている。


いわゆる健康食品として「有機ゲルマニウム」が販売されているが、具体的な化合物名を表示せず、副作用すら明記していない事がほとんどである。リウマチやガンに効くと謳う通販サイトが多々見受けられるが、ただの食品扱いであり、そのような効果は厚生労働省に認められていないため薬事法違反である。医薬品として唯一認められているプロパゲルマニウム(B型慢性肝炎の治療に使用)以外は効果が全く保証されない。また、動物実験により多数の有機ゲルマニウムで副作用が確認されており、大量摂取および長期間の摂取は非常に危険である。

参考文献[編集]

  1. ^ In Main Group Metals in Organic Synthesis; Yamamoto H., Oshima, K. Eds.; John Wiley & Sons: New York, 2004. ISBN 3-527-30508-4.
  2. ^ Satge, J. "Reactive intermediates in organogermanium chemistry". Pure Appl. Chem. 1984, 56, 137–150.

関連項目[編集]