宮古島ロランA送信所

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宮古島ロランA送信所
Miyako Jima LORAN-A Transmitting Station
沖縄県宮古島市
アメリカ沿岸警備隊「宮古島ロラン局」
種類沖縄返還協定了解覚書 C-23
歴史
使用期間1972年5月14日返還

宮古島ロランA送信所(みやこじまロランAそうしんじょ、英語: Miyako Jima LORAN-A Transmitting Station)は、沖縄県宮古島城辺町(現在の宮古島市城辺保良)にあったアメリカ沿岸警備隊LORAN通信施設[注釈 1]。1972年に日本の運輸省に移管され、海上保安庁がロラン局、その後GPS局として運営。現在は海上保安庁の屋内射撃訓練場として建て替えられた。

概要[編集]

太平洋戦争でのロラン基地局チェーンはアメリカ軍の日本軍攻略におおいに活躍し、また日本の占領後は軍事的理由から、沖縄および日本各地にロラン局を設置した[1]。沖縄においては伊計島ロラン(1945年開設)、慶佐次通信所(1963年開設)、宮古島ロラン(1953年開設)がある。

  • 名称:宮古ロランA送信所 (Miyako Jima LORAN-A Transmitting Station)
  • 管理:アメリカ沿岸警備隊
  • 面積:49,000㎡
  • 1972年、沖縄返還協定了解覚書C表により運輸省に移管される。宮古島におけるアメリカ軍基地3施設の返還面積の合計は42haとなる[2]
AC6286 宮古島ヴォルタック施設 1973年、運輸省に移管 通信施設
FAC6287 宮古島航空通信施設 1973年、航空自衛隊に移管 那覇基地宮古島分屯地
NDB施設は運輸省に移管
C-23 宮古島ロランA送信所 1972年、海上保安庁に移管

2018年、屋内射撃場となる

歴史[編集]

アメリカ沿岸警備隊宮古ロランA送信所[編集]

1952年8月9日 - 9月14日:調査 ELMO 7 プロジェクトが始まる[3]

1953年8月1日:運用開始し、11月23日、施設建設が完了する。

1959年9月15日:台風Sarahで電信電力棟を除き基地が壊滅した。

1969年:地元住民による隊員への傷害事件が発生。

1972年4月:日本の海上保安庁に移管される。

海上保安庁宮古島ロラン局[編集]

1972年4月:アメリカ沿岸警備隊の宮古島ロラン局が日本の海上保安局に移される。

ロラン局の閉局に伴い、ディファレンシャルGPS局が設置される。

2019年3月1日、海上保安庁はアメリカが運用し、日本も27か所の無線局を所有したディファレンシャルGPS局を閉局した[4]

宮古島南部のロラン局跡地が海上保安庁の屋内射撃場となり、保良集落からほとんど離れていない場所には陸上自衛隊の弾薬庫と射撃場も建設中である。

海上保安庁屋内射撃場[編集]

2018年、宮古島海上保安部は城辺保良の「旧ロラン局」跡地に屋内射撃訓練場の建設を開始。海上保安庁は、建設理由の一つとして、旧ロラン局(通信施設)の敷地を保有している事をあげている[5]

  • 建築面積:約689㎡
  • 事業費:約5億円[5]

2020年6月末までに完成した[6]。弾薬庫は作らず、武器や弾薬は訓練ごとに運び込むとしている。

陸上自衛隊保良弾薬庫[編集]

2021年3月31日、海上保安庁屋内射撃場の東側で、保良集落の南側には、陸上自衛隊の新規の保良弾薬庫の建設が完了した[7]宮古島分屯地を置く陸自は住民説明会で「弾薬庫は作らない」と説明していたが、実際にミサイルを弾薬庫に収容していることが発覚し[8]、島外に搬出した経緯がある。新設の弾薬庫も保良集落の住宅から200mしか離れていないにもかかわらず建設が強行され、地元住民の強い不安と抗議の声を招いている[9][10]

1944年2月、保良地区には旧日本軍の弾薬庫があり、爆発事故で少なくとも兵士2人と子ども2人が亡くなっている[11]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ロラン(LORAN)とは、Long Range Navigation(遠距離航法)の略語で、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国が開発した双曲線航法の一種である。

出典[編集]

  1. ^ 加島篤「北九州デッカチェーンをめぐる無線技術史―中距離航行用長波電波標識の建設と運用―」(2020年)
  2. ^ 沖縄県「沖縄の米軍基地」(平成15年12月)183頁
  3. ^ https://www.loran-history.info/stations/miyako_jima/miyako_jima.htm
  4. ^ 海上保安庁「ディファレンシャル GPSの廃止について」(平成29年6月30日) PDF
  5. ^ a b 射撃訓練場建設に着手/宮古島海保”. 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-. 2022年10月17日閲覧。
  6. ^ 宮古島に海保射撃場が完成 県内初、8月から運用 銃器弾薬は保管せず”. 琉球新報デジタル. 2022年10月17日閲覧。
  7. ^ 保良弾薬庫が供用開始”. 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-. 2022年10月17日閲覧。
  8. ^ 陸自宮古島基地 実はミサイル弾薬庫だった 住民に「保管庫」とウソ 赤嶺氏に防衛相認める – 赤嶺政賢(日本共産党 衆議院議員)”. akamine-seiken.jp. 2022年10月17日閲覧。
  9. ^ 宮古島に弾薬庫は必要なのか | "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]”. NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス] (2019年4月30日). 2022年10月17日閲覧。
  10. ^ 陸自、宮古島で空砲訓練 保良 夜間に射撃音、住民抗議”. 琉球新報デジタル. 2022年10月17日閲覧。
  11. ^ 命奪った弾薬庫、なぜ再び 宮古島駐屯地で着工 200メートル圏には住宅:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2022年10月17日閲覧。