共沸

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共沸(きょうふつ)とは液体の混合物が沸騰する際に液相と気相が同じ組成になる現象である。このような混合物を共沸混合物(きょうふつこんごうぶつ)という。通常の液体混合物は沸騰するにしたがって組成が変化し、沸騰する温度が徐々に上昇していくが、共沸混合物の場合は組成が変わらず沸点も一定のままである。このことから定沸点混合物(ていふってんこんごうぶつ、constant boiling mixture, CBM)ともいう。

例えば沸点100°C)とエタノール(沸点78.3°C)の混合物が沸騰する際、エタノールの濃度が低ければ気相におけるエタノール濃度は液相のそれより高い。ところが、エタノールの濃度が96%(重量%、以下同じ)に達すると共沸混合物となり、気相のエタノール濃度も同じく96%となる。よって蒸留によって水-エタノール混合物のエタノール濃度を96%以上に濃縮することはできない(なお、この組成の酒は、スピリタスとして市販されている)。

水-エタノール共沸混合物の沸点は78.2°Cで、水およびエタノール単体の沸点より低い。このような共沸混合物の沸点を極小共沸点という。一方、水と塩化水素(沸点 −80°C)の混合物は塩化水素20%の濃度で共沸混合物となり、その沸点は109°Cであるので、これを極大共沸点という。

水-エタノールや水-塩化水素の共沸混合物は液相が溶け合っており均一共沸混合物という。水と有機溶媒のように完全には溶け合わない組み合わせでも共沸混合物となることがあり、これを不均一共沸混合物という。

共沸混合物の分離[編集]

水-エタノール混合物の例で述べたように、共沸が生ずると蒸留による混合物分離はできなくなる。しかし条件を変えることによって共沸を回避できることもある。水-エタノール混合物であればベンゼンを加えて蒸留することによってほぼ純粋なエタノールを得ることができる。このように第三成分を加えて蒸留分離する方法を共沸蒸留という。また、操作圧力を変えることによって共沸を回避して蒸留分離が可能となることもある。

気液の相平衡に依存しない分離手法であれば、当然ながら共沸による制約は生じない。共沸混合物の分離に使用される手法として液-液抽出吸着膜分離などがある。