ホスファアルケン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホスファアルケンの1つであるメシチルジフェニルメチレンホスフィンの球棒モデル

ホスファアルケン(Phosphaalkene)は、炭素リンの間に二重結合があり、R2C=PRという化学式を持つ有機リン化合物である。IUPAC名は、アルキリデンホスファン(Alkylidenephosphane)である。ホスホリンの分子内では、ベンゼンの1つの炭素原子がリンで置き換わっている。ホスファアルケンの反応性は、HOMOがリンの孤立電子対ではなく二重結合であるため、しばしばイミンよりもアルケンに近い。そのため、アルケンと同様に、ホスファアルケンは、ウィッティヒ反応ピーターソン反応コープ転位ディールス・アルダー反応等に関与する。

1969年、 メルクルが最初のホスファアルケンであるホスファベンゼンを発見した。最初に集められたホスファアルケンは、1974年にゲルト・ベッカーブルック転位と同種のケト-エノール互変異性として報告した[1]

Becker reaction to phosphaalkenes (R = メチル基かフェニル基)

同年、ハロルド・クロトーは、Me2PHが熱分解してCH2=PMeとなることを分光学的に証明した。ホスファアルケン合成の一般的な方法は、熱またはジアザビシクロウンデセンDABCOトリエチルアミン等の塩基によって開始する適切な前駆体からの1,2-脱離反応である[2]

Phosphaalkene general method

ベッカーの方法は、ポリ(p-フェニレンビニレン)の重合に用いられている[3]

Poly(p-phenylenephosphaalkene)

出典[編集]

  1. ^ Bildung und Eigenschaften von Acylphosphinen. I. Monosubstitutionsreaktionen an substituierten Disilylphosphinen mit Pivaloylchlorid Gerd Becker, Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie 1976, 423, pp 242 - 254
  2. ^ Synthesis of mesityldiphenylmethylenephosphine: a stable compound with a localized phosphorus:carbon bond T. C. Klebach, R. Lourens, F. Bickelhaupt J. Am. Chem. Soc., 1978, 100 (15), pp 4886-4888 doi:10.1021/ja00483a041
  3. ^ Phosphorus Copies of PPV: π-Conjugated Polymers and Molecules Composed of Alternating Phenylene and Phosphaalkene Moieties Vincent A. Wright, Brian O. Patrick, Celine Schneider, and Derek P. Gates J. Am. Chem. Soc.; 2006; 128(27) pp 8836 - 8844; (Article) doi:10.1021/ja060816l