パンアメリカン航空006便不時着水事故

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パンアメリカン航空 006便
不時着水すべく高度を下げる006便
出来事の概要
日付 1956年10月16日
概要 エンジン停止にともなう緊急不時着水
現場 北太平洋
乗客数 24
乗員数 7
負傷者数
(死者除く)
数人
死者数 0
生存者数 31(全員)
機種 ボーイング377ストラトクルーザー
運用者 パンアメリカン航空(PAN AM)
機体記号 N90943

パンアメリカン航空006便不時着水事故(Pan Am Flight 006)とは、パンアメリカン航空のボーイング 377 ストラトクルーザー旅客機太平洋に不時着水した航空事故である。不時着水から救助までの一部始終が映像に納められたため、後にトラブルの対処や救助などが航空業界の手本とされたという。

事故の概要[編集]

エンジントラブル発生[編集]

着水する006便
着水後に翼上に避難する乗客乗員
救命ボートで脱出する乗客乗員

1956年10月16日パンアメリカン航空006便は世界一周便として運航されており、日本東京からハワイホノルルに到着後、最後のサンフランシスコへの区間を飛行するべく、現地時間の午後8時15分に客室のドアが閉められ、午後8時26分に離陸した。当日は機体記号N90943、シップネーム "Clipper sovereign of the Skies" で運航されており、運航乗務員4名と客室乗務員3名のほか、乗客24名が搭乗しており、予定では10時間後にサンフランシスコに到着するはずであった。

006便は最初13,000フィートに上昇した後、しばらくはこの高度で巡航していた。離陸から4時間半が経ち、006便の機体重量が燃料消費と共に軽くなり始めたため、より経済的に飛行できる21,000フィートへの上昇を管制塔から許可され、上昇した。しかし航空機関士がストラトクルーザーのスロットルを絞り、エンジンの回転数を下げようとしたところ、突如1番エンジンがトラブルを起こし、暴走して過回転しはじめた。

エンジンが過回転となるとプロペラが壁のように立ちはだかって大きな空気抵抗を生じ、速度が低下し(高度が下がり)、燃料消費が増える悪循環に陥る。また最悪の場合にはプロペラが強度の限界を超えて破断し、異常振動によるエンジンの崩壊から空中分解に至り、墜落する可能性がある。

そのため、操縦乗員は最初はエンジンの制御を試みたが失敗し、プロペラのピッチをかえてフェザリング(風車のようにすること)するため、エンジンを停止させることにした。制御の効かないエンジンをいち早く停止させるため、第一エンジンへの潤滑油の供給を絶ち、停止させる方法をとった。ストラトクルーザーが装備するプラット・アンド・ホイットニー R-4360-B6 型「ワスプ・メジャー」エンジンは、一基あたり71,450ccの排気量から3,500馬力を搾り出す、空冷四重星型28気筒の、最大級のレシプロエンジンであったが、この手荒な方法以外にそれを停止させる手段が無かった。

不時着水[編集]

潤滑油の供給を絶たれたピストン焼きつき、エンジンを停止させることには成功したが、この措置によって巡航速度の維持が困難となり、飛行高度も下がり始める事となった。この時006便はハワイとアメリカ本土のほぼ中間点にあり、残されたエンジン3発では、サンフランシスコに向かうこともホノルルに引き返すことも不可能であった。

ちょうど006便が飛行していたすぐ近くに、アメリカ沿岸警備隊の定点観測船「ノーベンバー」があった。当時この観測船は、航空機に無線標識信号や気象情報を発信したり、緊急時には救助も行う任務のため、交代で配備されていた。そこで機長は、万全の体制を整えた上で、観測船のそばに不時着水することを決断した。006便は誘導電波に導かれて観測船上空まで飛行した。

トラブル発生時は深夜であったため、無理に燃料を投棄して暗闇の海に着水する危険を冒さず、可能な限り旋回飛行を行い燃料を消費し、機体重量を軽くした上で夜明け後に不時着水を行うことにした。当日の天候が比較的穏やかであったことも幸いであった。4時間近く旋回飛行をしたが、その間も006便の飛行高度は徐々に下がり続け、途中で第4エンジンも停止するトラブルもあったが、飛行は問題なく継続できた。

不時着水成功[編集]

夜が明けた午前5時40分、006便の機長は警備隊に不時着水の決行を伝えた。脱出用の救命が用意され、乗客はライフジャケットを装着し、機体前部の座席に身を寄せ、そのときに備えていた。この措置はストラトクルーザーが以前の不時着水の際、衝撃で機体後部が分断する事故が発生していたためである。実際に着水時の衝撃で機体は分断され、3分後に水没しているが、それまでに搭乗者全員が救命筏で脱出しており、無事、救助された。

数人が軽い怪我をしたが、それ以外に問題はなかった。救助された乗客、乗員は、2日後に沿岸警備隊の船でサンフランシスコに到着した。

なお、エンジントラブルの原因であるが、機体が水没したため判明していないが、ストラトクルーザーのエンジンが過回転に陥る事態はしばしば発生しており、大型レシプロエンジンは油圧系統(あるいは燃料供給)に問題があったといえる。そのため当局は改修を指示した。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]