ハーパー・リー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2007年、ホワイトハウスにて

ネル・ハーパー・リー(Nelle Harper Lee, 1926年4月28日 - 2016年2月19日)は、アメリカの女性小説家。『アラバマ物語』(原題:To Kill a Mockingbird)で知られる。また、この物語の続編である『Go Set a Watchman』(さあ、見張りを立てよ)が2015年に米国で出版された[1] [2]

経歴[編集]

ハーパー・リーはアラバマ州モンローヴィルで生まれた。彼女が4歳の夏にトルーマン・カポーティと交流するようになる[3]アラバマ大学で法律を学び、次にイギリスオックスフォード大学に一年間留学した。

その後ニューヨークで航空会社の予約係として働き自活したが、作家として身を立てようと決心して仕事を辞め、アメリカ南部の生活に関する一連の短編小説を書いた。編集者らの励ましを受けた彼女は、それら短編をもとに『アラバマ物語』を書き上げた。1960年に出版されたこの作品はベストセラーとなり、1961年にはフィクション部門でピューリッツァー賞を受賞した。1963年には映画化され、主演のグレゴリー・ペックが主演男優賞を獲得するなど三部門でアカデミー賞に輝いた。

60年代中頃に、リーはカポーティと共に彼の小説『冷血』の取材助手として旅行した。カポーティは同作品を彼女に献呈した。当時のカポーティを描いた2005年の映画『カポーティ』では、キャサリン・キーナー演じるリーが登場し、『アラバマ物語』が映画化されたくだりも描かれる[4]

『アラバマ物語』以後リーは、少数の短いエッセイを除き、作品を上梓しなかった。公の場にもほとんど姿を現さなかったため、新たな作品に取り組んでいるとの憶測も(他のアメリカ人作家でいえばJ・D・サリンジャーラルフ・エリソンと同様に)されていた。チャールズ・J・シールズによる「『アラバマ物語』を紡いだ作家 (MOCKINGBIRD A PORTRAIT OF HARPER LEE)」(柏書房)という評伝も2014年に翻訳された。

2007年11月、81歳のリーはその文化的貢献に対してジョージ・W・ブッシュ大統領から大統領自由勲章を授与され、ホワイトハウスでの式典に姿を見せた[5][6][7]

2016年2月19日、モンローヴィルで死去[8]。89歳没。

彼女の死後に、姉の許可を得て『To Kill a Mockingbird』(『アラバマ物語』)の続編にあたる『Go Set a Watchman英語版』(『さあ、見張りを立てよ』)が2015年に出版されたが、その評判は芳しくなかった[9][10]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ Alter, Alexandra (2015年2月3日). “Harper Lee, Author of ‘To Kill a Mockingbird,’ Is to Publish a Second Novel”. The New York Times (New York). http://www.nytimes.com/2015/02/04/books/harper-lee-author-of-to-kill-a-mockingbird-is-to-publish-a-new-novel.html?_r=0 2015年2月3日閲覧。 
  2. ^ 同記事が日本のThe Japan Times紙 2015.02.10.に付帯したInternational New York Timesにも掲載。
  3. ^ シールズ 2014、p 57。
  4. ^ 金原瑞人「ハーパー・リーとカポーティ」『サリンジャーに、マティーニを教わった』潮出版社によれば、『冷血』が出版された時に、リーはあれだけ協力したのに、感謝の言葉がひと言もないのに愕然としたという。また、後年はカポーティが代筆したのではないかという噂に対して否定することはなくなり、葬儀まで長い間、連絡を取り合うこともなかったという。
  5. ^ President Bush Honors Medal of Freedom Recipients The White House Press Release from November 5, 2007
  6. ^ Harper Lee given Presidential Medal of Freedom; The Birmingham News, November 5, 2007
  7. ^ Author Lee receives top US honour; BBC News Online, November 6, 2007
  8. ^ 「アラバマ物語」米作家 ハーパー・リーさん死去 NHKニュース 2016年2月20日閲覧
  9. ^ 名作『アラバマ物語』のファンをがっかりさせる55年ぶりの新作(Newsweek)
  10. ^ 「アラバマ物語」続編に米が衝撃(東亜日報)

参考文献[編集]

  • チャールズ・J・シールズ 著、野沢佳織 訳『『アラバマ物語』を紡いだ作家』柏書房、2014年2月10日。ISBN 978-4-7601-4337-5NCID BB1466699X