トーストマスターズ・インターナショナル

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トーストマスターズ・インターナショナル(Toastmasters International)とは、話し方、パブリック・スピーキング(大勢の人前で話すこと)、リーダーシップ・スキルの上達を目的とする、アメリカ発祥の国際的な非営利教育団体。世界中にトーストマスターズ・インターナショナルに所属する自主運営のグループ「トーストマスターズクラブ(Toastmasters Club)」があり、各自が活動を行っている。

発祥は1924年10月22日、アメリカのカリフォルニア州サンタアナにあったYMCAで、そこに勤めていたラルフ・C・スメドリー博士によって最初のトーストマスターズクラブが作られ、やがて世界中に広がったのがきっかけである。YMCAで始まったが、宗教政治団体との関連は一切ない。

なお、「トーストマスター(toastmaster)」とは、「乾杯の音頭を取る人」の意。

概要[編集]

2012年現在、日本を含む115カ国以上で27万人以上のトーストマスターズ会員が、13,000以上のクラブに所属している[1]。日本には120以上のクラブが存在する。一人が複数のクラブに所属することもできる。1クラブの平均人数は20~30人くらいで、運営は会員から選出されたクラブ役員ボランティアで行う。

入会には試験はなく、18歳以上であれば、通常誰でも入会できる[2]。国籍、人種、性別などによる差別は、トーストマスターズ国際本部によって禁じられている。[3] 1924年の最初のトーストマスターズクラブ設立当初は男性のみがトーストマスターズクラブへの入会を認められたが、1973年8月、女性も入会が認められるようになった。[4]

トーストマスターズクラブは地域の公民館などで開催されるほか、会社内のクラブ、大学のクラブなど、さまざまな形態が存在する。また、通常のトーストマスターズよりも高いレベルの活動を行うことを目的とした「上級クラブ」もある。上級クラブはその主旨上、他のトーストマスターズクラブである程度経験を積んだ会員のみ、あるいはその他特定の要件を満たした会員のみが入会できることが多い。

日本のトーストマスターズクラブ[編集]

2012年7月現在、日本には127のクラブが存在している。半分以上が英語クラブだが、日本語で例会を行う日本語クラブ、日本語と英語の両方で例会を行うバイリンガルクラブも存在し、日本語・バイリンガルクラブの割合はここ数年特に増加傾向にある。[5]また、半数以上のクラブが関東地方である。ほとんどが地域の公民館などで行われるクラブ(コミュニティクラブ)だが、会社内のクラブもいくつか存在する。

日本最初のトーストマスターズクラブは東京トーストマスターズクラブ(1954年)。

2005年、日本全体が世界における一つの地区(ディストリクト76)として正式に国際本部より認められた。

例会[編集]

会員はクラブに所属し、月に1回~数回行われる定期的な会合(例会)に参加する。例会ではマニュアルに基づいて準備されたスピーチ(準備スピーチ)、即興スピーチ(テーブルトピックス)、スピーチへのフィードバック (論評)などが行われ、会員は毎回持ち回りで、スピーカーや論評者などの役割を行う。会では多くの場合、参加者全員による投票が行われ、最優秀スピーカー、即興スピーカー、論評者などの賞が授与される。

講師は存在せず、会員同士のフィードバックを教育の柱としている。

例会は時間厳守が求められる。また、論評はスピーチの良かったことに対する「褒め」と、建設的な「改善点」の両方を述べることが望ましいとされている。[6]

教育プログラム[編集]

トーストマスターズの教育プログラムは、「コミュニケーション」「リーダーシップ」の2つのトラックに大別できる。

コミュニケーション・トラック[編集]

コミュニケーション・トラックでは、スピーチのマニュアルが用いられる。最初のマニュアル(コンピテント・コミュニケーション・マニュアル)は、スピーチの構成、言葉遣い、ジェスチャーの抑揚など、人前での話し方の基本について書かれており、会員はそれに基づいて、自分で考えた題材でスピーチを行う。10個あるスピーチ・プロジェクト全てを終了すると、コンピテント・コミュニケーター(Competent Communicator, CC)と呼ばれる称号がトーストマスターズ国際本部より授与される。昇格試験はない。

その後は、テクニカル・プレゼンテーション、ユーモラス・スピーチなど、より専門的なマニュアル(上級マニュアル)を進めていく。全てのスピーチは、論評を口頭および書面で他の会員より必ず受けるものとされる。上級マニュアルを用いてスピーチを10本進めるごとに、アドヴァンスト・コミュニケーター(Advanced Communicator, AC)という称号が3段階授与される。[7]

上記のマニュアルのほか、数々のプレゼンテーションワークショップのマニュアルも存在する。

リーダーシップ・トラック[編集]

リーダーシップ・トラックでは、会員はコンピテント・リーダーシップ・マニュアルというマニュアルに基づき、例会やイベントで各種の役割をこなすことで、コンピテント・リーダー(Competent Leader, CL)という称号がトーストマスターズ国際本部から授与される。役割には、スピーチの論評や例会全体の司会などのほか、イベントなどで委員長としてチームをまとめる経験も含まれる。

また、クラブや地区などの役員をしたり、新規にクラブを設立するなどの活動によって、さらに上級の称号をもらうことができる。これらの役員・役割は、すべてボランティアで行うものとされる。

コンテスト[編集]

トーストマスターズでは春と秋に、会員によるコンテストが行われる。主な目的は、出場者に話術を鍛錬する機会を提供することや、会員間の切磋琢磨を促すことである。[8]日本では、春はスピーチコンテストが行われ、秋には論評、即興スピーチ、ユーモアスピーチ、ほらふき話の中からどれか一つのコンテストが毎年行われている。コンテストは、英語と日本語の両方で行われる。

コンテストは勝ち残り方式で、クラブ内のコンテスト優勝者が代表として地域の予選に進み、最後は全国大会で優勝者を決める。英語のスピーチコンテストはこのあと、世界でのコンテストもあり、日本も2005年より全国大会の優勝者を毎年代表として送り出している。世界大会での優勝者は、”World Champion of Public Speaking”と呼ばれる。

コンテストは審査員によって、構成、スピーチの効果、ボディーランゲージ、声、言葉遣いなどの審査基準に基づいて採点され、順位が決まる。また、所定の時間を超過した場合はどんなに点が高くても失格となる。

全国大会・世界大会[編集]

トーストマスターズでは春と秋に、日本地区(ディストリクト76)の大会(全国大会、District Conference)が開かれる。大会ではコンテストが行われるほか、各クラブの会長・副会長およびディストリクト76役員が集まる運営会議、次年度の役員選出(春のみ)などが行われる。

トーストマスターズ世界大会は例年8月にアメリカかカナダで行われる。2008年8月のカルガリー大会は77回目であった。なお、北アメリカ以外で初の世界大会が、2014年にマレーシアクアラルンプールで行われる予定である。

トーストマスターズの活動が紹介された書籍・メディア[9][編集]

書籍[編集]

新聞記事[編集]

雑誌記事[編集]

  • 日経ビジネスAssocié (2010年3月16日 「やり直し『英語』勉強術 - ビジネスパーソンにお薦めの勉強会」)
  • AERA (2004年4月1日 「トーストマスターズクラブって何だ?」)
  • 日経ビジネスAssocié (2003年5月8日 「クラブに所属し、英語のスピーチ術習得」)

トーストマスターズに所属している(していた)著名人[10][編集]

  • トム・ピーターズ(『エクセレント・カンパニー』著者)
  • ナポレオン・ヒル(『思考は現実化する』著者)
  • ポール・R・シーリィ(『あなたもいままでの10倍速く本が読める』著者、「フォトリーディング・ホールマインド・システム」開発者)
  • トニー・ラズロ(ジャーナリスト。日本のトーストマスターズクラブに所属していた)
  • リンダ・リングル(アメリカ・ハワイ州知事)
  • ピート・クアーズ(クアーズ・ビール社創立者)
  • デビー・フィールズ(ミセスフィールズ・クッキーズ社創立者)

脚注[編集]

  1. ^ Toastmasters International - About Us
  2. ^ 出席会員の過半数の賛同を得る必要がある。また、クラブによっては所定の回数、ビジター(ゲスト)としての見学が入会条件となっている
  3. ^ Club Constitution and Bylaws.Toastmasters International.
  4. ^ The Story of Toastmasters Vol.II 1960-1998.(参考文献参照)
  5. ^ 2008年7月1日から2009年6月30日までの間に、英語クラブ2つ、日本語・バイリンガルクラブ7つが誕生した。
  6. ^ Effective Evaluation, Toastmasters International
  7. ^ スピーチ10本のほか、段階によってはワークショップをしたり、新会員のメンターとなることが必要となる場合もある。
  8. ^ Speech Contest Rulebook 2008" (PDF). Toastmasters International.
  9. ^ トーストマスターズ District76(日本本部)ホームページ
  10. ^ Famous Toastmasters.Toastmasters International.

参考文献[編集]

  • Ralph C. Smedley (1959). The story of Toastmasters. Toastmasters International
  • The Story of Toastmasters Vol.II 1960-1998. Toastmasters International
  • Competent Communication. Toastmasters International
  • Competent Leadership – A Practical Guide to Becoming a Better Leader. Toastmasters International

外部リンク[編集]