タイ国鉄HI型ディーゼル機関車

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タイ国鉄HI型ディーゼル機関車
2次車の669号機(2010年撮影)
2次車の669号機(2010年撮影)
基本情報
運用者 タイ国有鉄道
製造所 日立製作所
製造年 1958年 (611 - 615)
1961 - 1962年 (616 - 630, 661 - 670)
製造数 30両
主要諸元
軸配置 Co-Co
軌間 1,000 mm
全長 15,010 mm(ABC連結器使用時)
全幅 2,815 mm
全高 3,784 mm
機関車重量 72.0 t
動力伝達方式 電気式
機関 MAN W8V 22/30A m.A.u.L
制動装置 真空併用空気ブレーキおよびネジ式手ブレーキ
最高運転速度 70 km/h
定格出力 855 PS / 900 rpm
最大引張力 21,600 kg
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タイ国鉄HI型ディーゼル機関車(タイこくてつHIがたディーゼルきかんしゃ)は、1958年から1962年にかけて製造されたタイ国有鉄道電気式ディーゼル機関車である。その車番から611形及び661形と呼ばれる場合もある[1][注釈 1]

導入の経緯[編集]

タイ国鉄[注釈 2]第二次世界大戦前からスイスSLM製SLM型、同SULZER製SUL型などのディーゼル機関車を導入しており、世界的に見てもディーゼル化の先進鉄道であった。そのためタイ国鉄では50年代に入ると早くも蒸気機関車の導入を停止、ディーゼル機関車の本格導入を進め、1958年時点で78両のディーゼル機関車を保有していた。本形式は蒸気機関車の置き換え及びディーゼル機関車の増強用として、1次車の5両が1958年に、2次車の25両が1961年から1962年にかけて導入された[注釈 3][1]。なお本形式は、日本初の海外向け電気式ディーゼル機関車である。

車両[編集]

構造[編集]

本形式は、製造元である日立製作所が先立って1956年に製造した日本国鉄DF90形を基本としている。エンジン西ドイツMAN製のものを搭載し、動力伝達方式は電気式である。また、重連統括制御が可能となっている。 台車は全軸駆動の3軸ボギー台車で、軸重制限が厳しいため鋼板全溶接台枠の採用などにより重量軽減を図っている。

車体[編集]

車体もDF90形に近い非貫通の箱型だが、日本に比べ車両限界が狭小であるタイ国鉄に合わせて全高を低く抑えている。また、鋼板プレス材を使用することで、車体についても軽量化に努めている。

登場時の前照灯白熱灯1灯だったが、後年シールドビーム2灯に改造されている。

塗装[編集]

導入当初は、上半分が白に近いクリーム色、下半分が青色の金太郎塗りで、境に銀色の飾り帯が入るものであった[注釈 4]。その後80年代までに、前面が飾り帯を残して黄色1色に変更されている[2][3]。また、前面の飾り帯より下部分のみが黄色になった車両も存在する[4]

運用[編集]

製造元の日立製作所は、長距離列車が多い南本線東北本線の急勾配区間を通る列車を含む客貨両用の広範な運用を想定して製造している。蒸気機関車の置き換えとして30両というまとまった数が導入されたこともあり、幅広い運用がされていたと考えられる。

1990年代中頃時点で数両が入換機として[5]、2000年時点で2両が工場入換機として残存していた[6]が、現在では全車廃車されている。

なお、南本線のトゥンソン駅に放置されていた629号機が登場時塗装に修復され、2021年から同駅機関区に展示されている[7]ほか、666号機が人工漁礁として二軸貨車とともにアンダマン海に沈められている[8]

注釈[編集]

  1. ^ 出典文献では611形は「610形」とされているが、車番が3桁台である他の形式が「511形」「571形」「661形」となっていること、車番は610号機からではなく他の形式と同じく611号機から始まることから、誤植と思われる。
  2. ^ 1951年まではシャム国鉄(RSR)。
  3. ^ 616 - 630号機(「611形」2次車)が1961年製、661 – 670号機(「661形」)が1962年製。
  4. ^ イメージとしては日本国鉄70系電車のいわゆるスカ色に近い。ただし、上部の青色部分が存在しない点や、飾り帯が設置されている点などが異なる。

脚注[編集]

  1. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』2000年4月号 (No.683) p.102 電気車研究会
  2. ^ Rotfaithai Gallery DEL 00263” (英語). rotfaithai.com. 2022年1月18日閲覧。
  3. ^ DA.500型機関車/HI型機関車”. タイ国鉄友の会. 2022年1月18日閲覧。
  4. ^ Rotfaithai Gallery DEL 02319” (英語). rotfaithai.com. 2022年1月18日閲覧。
  5. ^ 『鉄道ジャーナル』第361号、鉄道ジャーナル社、1996年11月、127頁。 
  6. ^ 『鉄道ピクトリアル』第683号、電気車研究会、2000年4月、100頁。 
  7. ^ ภารกิจฟื้นฟู รถจักร HITACHI หมายเลข 629 EP4” (タイ語). YouTube. 2022年1月18日閲覧。
  8. ^ Diving Train Wreck” (英語). Lanta Diver. 2022年4月14日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]