シーデー

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シーデー古希: Σίδη, Sīdē、「柘榴」の意)は、ギリシア神話に登場する多数の女性の名前である。冥界の女王ペルセポネーを象徴する柘榴の実と関連すると考えられる[1]。主に、

の5人が知られている。以下に説明する。

ベーロスの妻[編集]

このシーデーは、7世紀頃の年代記編集者アンティオキアのヨハネ英語版によると、ベーロスの妻でアイギュプトスダナオス双子の母。フェニキアの都市シードーンは彼女にちなんで名づけられた[2][3]。ただしベーロスの妻の名は普通はナイル川の娘アンキノエーとされる[4]

オーリオーンの妻[編集]

このシーデーは、英雄オーリーオーンの最初の妻。女神ヘーラーと容色の美しさを競ったために、タルタロスに落された[5]

ダナオスの娘[編集]

このシーデーは、アルゴスの王ダナオスの50人の娘ダナイデスの1人。パウサニアスによるとラコーニア地方のマレアー岬先端部の都市シーデー英語版は彼女の名にちなむ[6]

タウロスの娘[編集]

このシーデーは、タウロス(Tauros)の娘。キモーロス(Kimolos)と結婚した。小アジアパンピュリア地方の都市シーデー英語版は彼女の名にちなむという[7]

柘榴に変身した少女[編集]

このシーデーは、母親の死後、欲情した父親から逃げるため母親の墓に行き、その場所で自殺した。神々は彼女を柘榴に、父親をに変えた。というのは、鳶は柘榴の木には決して止まらないと言われていたからであった[8]

脚注[編集]

  1. ^ 呉茂一『ギリシア神話(上)』425頁。
  2. ^ アンティオキアのヨハネ断片6・15。
  3. ^ Pierre Grimal 1986, p.510.
  4. ^ アポロドーロス、2巻2・1。
  5. ^ アポロドーロス、1巻4・3。
  6. ^ パウサニアス、3巻22・11。
  7. ^ ビューザンティオンのステパノス英語版
  8. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』132頁。

参考文献[編集]