クラマース=ワニア双対性

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クラマース=ワニア双対性(Kramers–Wannier duality)は、統計力学での対称性である。クラマース=ワニア双対性は、低温での2次元の正方格子イジングモデル英語版(square-lattice Ising model)の自由エネルギー(free energy)を、高温の別なイジングモデルの自由エネルギーとを関連付ける双対性である。この双対性はヘンリク・クラマース(Hendrik Kramers)とグレゴリー・ワニア英語版(Gregory Wannier)により1941年に発見された。この双対性を用いて、クラマースとワニアは、正方格子イジングモデルの臨界点の正確な位置を見つけた。

同様な双対性は、他の統計モデルの自由エネルギーの間の関係も確立している。例えば、3次元ではイジングモデルはあるゲージイジングモデルの双対である。

直感的な考え方[編集]

2次元イジングモデルは格子(チェスボード状の正方形の集まり)上で定義される。有限格子では、辺はトーラスを形成するように結合できる。この種類の理論では、対合を構成することができる。例えば、ラルス・オンサーガー(Lars Onsager)は、Y-Δ変換が三角格子に使えるのではないかと提唱した[1]。さて、離散的なトーラスの双対は自己自身である。さらに、非常に非秩序な(高温度)系の双対は、非常に秩序のある(低温度)系である。これは、フーリエ変換が大きな帯域幅をもつ(標準偏差が大きい)信号を帯域幅の小さな(標準偏差の小さい)信号にするためである。従って、逆温度を持つ本質的に同じ理論であることがわかる。

一方の理論の温度を上げると、もう一方の理論は温度が下る。相転移が一つしかない場合、相転移は交叉する点、すなわち双方の系の温度が等しくなる点で起こる。2次元イジングモデルは無秩序状態から秩序状態へ移るので、無秩序相と秩序相の間には 一対一写像に近い写像が存在する。

理論は一般化され、現在では、様々な考え方が融合している。例えば、四角形格子は円[2]、ランダム格子[3]、非等質トーラス[4]、三角格子[5]、 labyrinth[6]、ツイストした境界を持つ格子[7]、カイラルポッツモデル[8]など、様々なものに置き換えられる。

導出[編集]

これらの変数を定義する。

での低温展開は、

である。

により、

である。ここに、 であり、 である。このことから、高温展開との関係がわかる。関係はより対称性が明確となるように、

と記述することができる。サイトあたりの自由エネルギーの熱力学的極限(thermodynamic limit)

を用いると、クラマース=ワニアの双対性は、

を与える。

である等方的な場合は、 に臨界点があるとすれば、 にも別な臨界点がある。従って、唯一の臨界点がある場合は、 のみに臨界点があることとなり、これは を意味し、 を得る。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Somendra M. Bhattacharjee, and Avinash Khare, Fifty Years of the Exact Solution of the Two-Dimensional Ising Model by Onsager (1995), arxiv:cond-mat/9511003
  2. ^ arXiv:cond-mat/9805301, Self-dual property of the Potts model in one dimension, F. Y. Wu
  3. ^ arXiv:hep-lat/0110063, Dirac operator and Ising model on a compact 2D random lattice, L.Bogacz, Z.Burda, J.Jurkiewicz, A.Krzywicki, C.Petersen, B.Petersson
  4. ^ arXiv:hep-th/9703037, Duality of the 2D Nonhomogeneous Ising Model on the Torus, A.I. Bugrij, V.N. Shadura
  5. ^ arXiv:cond-mat/0402420, Selfduality for coupled Potts models on the triangular lattice, Jean-Francois Richard, Jesper Lykke Jacobsen, Marco Picco
  6. ^ arXiv:solv-int/9902009, A critical Ising model on the Labyrinth, M. Baake, U. Grimm, R. J. Baxter
  7. ^ arXiv:hep-th/0209048, Duality and conformal twisted boundaries in the Ising model, Uwe Grimm
  8. ^ arXiv:0905.1924, Duality and Symmetry in Chiral Potts Model, Shi-shyr Roan

外部リンク[編集]