アイヴァン・ボウスキー

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アイヴァン・ボウスキー(Ivan Boesky、1937年3月6日 - )は、デトロイト出身の投資家。1980年代中盤にウォール街の鞘取りとして活躍した。ドレクセル・バーナム・ランベールをめぐる内部者取引を密告し、ハーヴェイ・ピットに弁護された。

人物[編集]

ユダヤ系の家庭に生まれる。デトロイトのマンフォールド高校を卒業し、ミシガン州立大学で法律学を修める。

L.F.ロスチャイルドで一年間の下積みを経験したボウスキーは企業の買収を繰り返し、当時の金額にして2億ドルの資産を有するアービトラージャー(裁定取引専門の投資家)として、後の財務長官であるロバート・ルービンと共にウォール街で名を馳せていた。

しかしボウスキーは同業者とインサイダー取引に手を染めていた。ボウスキーがKidder, Peabody & Co.ファースト・ボストンの関係したM&A 銘柄を追いかけていることは当時の証券業界で公然の秘密であった。[1]

やがて証券取引委員会の調査によって発覚し、1986年に逮捕された。ジャンクボンドの帝王とも呼ばれるマイケル・ミルケンや時には証券取引委員会の人間とも共謀した。彼の株式取得方法は、買収を発表の数日前に株を最大限に買い占める手法により、時に物議を醸すなどしたが、1986年12月には、彼自身が『タイム』の表紙を飾る[2]

証券取引法違反により逮捕されたものの、ボウスキー以前はインサイダー取引によって逮捕されるケースは違法とは言え滅多に無かった[3]司法取引により、3年半の服役と1億ドルの罰金刑を受けたが、2年で出所し、現在も有価証券投資事業を手がけている[4]。尚、ボウスキー自身は、最も大きな株取引詐欺を行った男としてギネスブックに登録されている。

また彼のインサイダー取引について書かれた著作『ウォール街 悪の巣窟』はピューリッツァー賞を獲得している。

エピソード[編集]

1987年に公開された映画『ウォール街』では、主人公ゴードン・ゲッコーは、ボウスキーを下敷きとして作り上げられたキャラクターであることが、監督オリバー・ストーンへのインタビューによって、明らかになっている。1986年にカリフォルニア大学バークレー校で講演した際の発言“I think greed is healthy. You can be greedy and still feel good about yourself.(強欲は健全だと思っています。皆さんも強欲になるべきだし快く感じられるはず)”は、欲を積極的に肯定するゲッコーの演説シーンに使用されている[5]

脚注[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • James Stewart 著、小木曽昭元 訳『ウォール街 悪の巣窟』ダイヤモンド社、1992年。ISBN 4-478-26024-9