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「アロキサン」の版間の差分

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== 合成 ==
== 合成 ==
アロキサンは[[硝酸]]による[[尿酸]]の酸化で合成され、一水和物は[[酸化クロム(VI)|三酸化クロム]]による[[バルビツール酸]]の酸化により得られる<ref>''Alloxan monohydrate'' Submitted by A. V. Holmgren and Wilhelm Wenner1. Checked by T. L. Cairns and R. W. Upson. [[Organic Syntheses]], Coll. Vol. 4, p.23 (1963); Vol. 32, p.6 (1952).[http://www.orgsyn.org/orgsyn/orgsyn/prepContent.asp?prep=CV4P0023 Link]</ref>。
アロキサンは[[硝酸]]による[[尿酸]]の酸化で合成され、一水和物は[[酸化クロム(VI)|三酸化クロム]]による[[バルビツール酸]]の酸化により得られる<ref>''Alloxan monohydrate'' Submitted by A. V. Holmgren and Wilhelm Wenner1. Checked by T. L. Cairns and R. W. Upson. [[Organic Syntheses]], Coll. Vol. 4, p.23 (1963); Vol. 32, p.6 (1952).[http://www.orgsyn.org/orgsyn/orgsyn/prepContent.asp?prep=CV4P0023 Link]{{リンク切れ|date=2020年8月}}</ref>。


== 生物学的効果 ==
== 生物学的効果 ==
アロキサンは毒性をもつ[[グルコース]]類縁体である。[[ネズミ目|齧歯動物]]や他の動物に投与すると[[膵臓]]の[[インスリン]]合成細胞([[β細胞]])を選択的に破壊する。これは[[ヒト]]の[[1型糖尿病]]に特徴が似ており、これらの動物でインスリン依存型糖尿病(いわゆるアロキサン糖尿病)が引き起こされている。アロキサンがGLUT2グルコース輸送体によってβ細胞に選択的に蓄積されるのが原因である。アロキサンは細胞内の[[チオール]]の存在により、その還元体である[[ジアルル酸]]との間でサイクル反応を起こし、[[活性酸素種]](ROS)を生成する。アロキサンのβ細胞毒性作用は酸化還元反応によって生成した[[フリーラジカル]]によって始められる<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi1947/106/11/106_11_1034/_pdf 活性酸素による生体障害に関する研究(第1報) :アロキサン糖尿病発症に対する種々ハイドロキシル・ラジカル消去剤の防御作用(生物学及び生化学)]、桜井光一ほか、藥學雜誌Vol. 106 (1986) No. 11</ref>。
アロキサンは毒性をもつ[[グルコース]]類縁体である。[[ネズミ目|齧歯動物]]や他の動物に投与すると[[膵臓]]の[[インスリン]]合成細胞([[β細胞]])を選択的に破壊する。これは[[ヒト]]の[[1型糖尿病]]に特徴が似ており、これらの動物でインスリン依存型糖尿病(いわゆるアロキサン糖尿病)が引き起こされている。アロキサンがGLUT2グルコース輸送体によってβ細胞に選択的に蓄積されるのが原因である。アロキサンは細胞内の[[チオール]]の存在により、その還元体である[[ジアルル酸]]との間でサイクル反応を起こし、[[活性酸素種]](ROS)を生成する。アロキサンのβ細胞毒性作用は酸化還元反応によって生成した[[フリーラジカル]]によって始められる<ref>{{Cite journal|和書|author=桜井光一, 三浦俊明, 小木曾健人 |title=活性酸素による生体障害に関する研究(第1報) : アロキサン糖尿病発症に対する種々ハイドロキシル・ラジカル消去剤の防御作用(生物学及び生化学) |url=https://doi.org/10.1248/yakushi1947.106.11_1034 |journal=藥學雜誌 |publisher=日本薬学会 |year=1986 |volume=106 |issue=11 |pages=1034-1039 |naid=110003648566 |doi=10.1248/yakushi1947.106.11_1034 |issn=0031-6903}}</ref>。


== 出典 ==
== 出典 ==
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2020年8月15日 (土) 05:27時点における版

アロキサン[1]
識別情報
CAS登録番号 50-71-5 チェック2244-11-3 (Monohydrate)
PubChem 5781
ChemSpider 5577 チェック
UNII 6SW5YHA5NG チェック
MeSH Alloxan
ChEMBL CHEMBL1096009 ×
特性
化学式 C4H2N2O4
モル質量 142.07 g/mol
融点

256 °C(分解)

への溶解度 易溶
危険性
安全データシート(外部リンク) MSDS
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アロキサン(alloxan)は、ピリミジンの酸化誘導体である。水溶液中では水和物として存在する。2,4,5,6-テトラオキシピリミジン(2,4,5,6-tetraoxypyrimidine)、2,4,5,6-ピリミジンテトロン(2,4,5,6-pyrimidinetetrone)とも。

歴史

アロキサンはBrugnatelliによって1818年に初めて単離され、WöhlerLiebigにより1838年に命名された。Allantoin(アラントイン)とOxalsäure(シュウ酸)が名称の由来である。

合成

アロキサンは硝酸による尿酸の酸化で合成され、一水和物は三酸化クロムによるバルビツール酸の酸化により得られる[2]

生物学的効果

アロキサンは毒性をもつグルコース類縁体である。齧歯動物や他の動物に投与すると膵臓インスリン合成細胞(β細胞)を選択的に破壊する。これはヒト1型糖尿病に特徴が似ており、これらの動物でインスリン依存型糖尿病(いわゆるアロキサン糖尿病)が引き起こされている。アロキサンがGLUT2グルコース輸送体によってβ細胞に選択的に蓄積されるのが原因である。アロキサンは細胞内のチオールの存在により、その還元体であるジアルル酸との間でサイクル反応を起こし、活性酸素種(ROS)を生成する。アロキサンのβ細胞毒性作用は酸化還元反応によって生成したフリーラジカルによって始められる[3]

出典

  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 281.
  2. ^ Alloxan monohydrate Submitted by A. V. Holmgren and Wilhelm Wenner1. Checked by T. L. Cairns and R. W. Upson. Organic Syntheses, Coll. Vol. 4, p.23 (1963); Vol. 32, p.6 (1952).Link[リンク切れ]
  3. ^ 桜井光一, 三浦俊明, 小木曾健人「活性酸素による生体障害に関する研究(第1報) : アロキサン糖尿病発症に対する種々ハイドロキシル・ラジカル消去剤の防御作用(生物学及び生化学)」『藥學雜誌』第106巻第11号、日本薬学会、1986年、1034-1039頁、doi:10.1248/yakushi1947.106.11_1034ISSN 0031-6903NAID 110003648566