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'''ペンタゾシン''' (pentazocine)は、[[オピオイド受容体]]部分作動薬に分類される非麻薬性の中枢性[[鎮痛剤]]。中枢神経系の[[オピオイド受容体]]に結合し、鎮痛効果を発揮する<ref name="kanwa2014">[https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2014/pdf/pain2014.pdf がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版 日本緩和医療学会] 2017年1月18日閲覧</ref>。日本ではソセゴン、ペンタジンの商品名で販売される。主に術後の疼痛管理などに使用される<ref name="ochi2002"/>。高容量でモルヒネ製剤と拮抗作用を示すために[[癌性疼痛]]の緩和目的では使用されない。
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== 概要 ==
== 概要 ==
内服製剤と注射薬がある。内服製剤には乱用防止のために、オピオイド受容体拮抗剤の[[ナロキソン]]が添加されている<ref>ペンタジン錠 添付文書</ref>。日本では第2種向精神薬に分類され[[麻薬及び向精神薬取締法]]の適応となる。ペンタゾシンの作用は、モルヒネなどのオピオイドとほぼ同様であり、鎮痛、鎮静、呼吸抑制がある<ref name="kanwa2014"/>。
内服製剤と注射薬があり、日本では'''ソセゴン'''、'''ペンタジン'''の商品名で販売される。海外では'''Fortal'''、 '''Sosegon'''、'''Talwin NX'''、'''Talwin PX'''、'''Fortwin'''などの商品名で流通している。 '''Talacen'''と呼ばれるアセトアミノフェンとの合剤も開発されている。内服製剤には乱用防止のために、オピオイド受容体拮抗剤の[[ナロキソン]]が添加されている<ref>ペンタジン錠 添付文書</ref>。これは錠剤を粉砕して溶解しペンタゾシンの抽出するような、錠剤からの注射薬の密造を阻止している。日本では第2種向精神薬に分類され[[麻薬及び向精神薬取締法]]の適応となる。ペンタゾシンの作用は、モルヒネなどのオピオイドとほぼ同様であり、鎮痛、鎮静、呼吸抑制がある<ref name="kanwa2014"/>。


==オピオイド受容体への作用==
==オピオイド受容体への作用==
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皮下・筋注で15-20分、静注で 2-3分で鎮痛効果が表れ 薬効は3-4時間持続する<ref name="pent">ペンタジン注射液 添付文書</ref>。皮下・筋注での最高血中濃度は投与後10分前後とされるが、体重1kgあたり1mgの高容量での最高血中濃度は30分後となる<ref name="pent"/>。静注での最高血中濃度は投与直後であり、32時間以内に尿中に8.4-20%が未代謝物として排泄され、残りは肝臓でのグルクロン酸抱合を受ける<ref name="pent"/>。好ましい投与間隔は3-4時間とされる<ref name="kanwa2014"/>。
皮下・筋注で15-20分、静注で 2-3分で鎮痛効果が表れ 薬効は3-4時間持続する<ref name="pent">ペンタジン注射液 添付文書</ref>。皮下・筋注での最高血中濃度は投与後10分前後とされるが、体重1kgあたり1mgの高容量での最高血中濃度は30分後となる<ref name="pent"/>。静注での最高血中濃度は投与直後であり、32時間以内に尿中に8.4-20%が未代謝物として排泄され、残りは肝臓でのグルクロン酸抱合を受ける<ref name="pent"/>。好ましい投与間隔は3-4時間とされる<ref name="kanwa2014"/>。


== 副作用 ==
== 副作用と有害事象 ==
モルヒネのような消化管への作用は少な嘔吐は表れにくとされるが、それでも副作用として最も多いは悪心嘔吐であり、注射剤で6.1%の症例に観察される。悪心嘔吐の次に多い副作用は、中枢神経抑制による傾眠(注射剤で5.1%)である。呼吸抑制は頻度不明であるがしばしば問題となる。拮抗剤として[[ドキサプラム]]、[[ナロキソン]]、[[ナロルフィン]]等が使用されるが、麻薬拮抗剤である[[レバロルファン]]は無効である<ref name="pent"/>。モルヒネに対して、幻覚などの精神症状が出やすいとされるが<ref name="kanwa2014"/>、これはペンタゾシンのκオピオイド受容体作動薬の作用である(不安、悪夢、離人感)と言われる。
[[モルヒネ]]のような消化管への作用は悪心嘔吐は少ないが、それでも副作用として最も多いは悪心嘔吐であり、注射剤で6.1%の症例に観察される。悪心嘔吐の次に多いは、中枢神経抑制作用による傾眠(注射剤で5.1%)である。呼吸抑制は頻度不明であるがしばしば問題となる。拮抗剤として[[ドキサプラム]]、[[ナロキソン]]、[[ナロルフィン]]等が使用されるが、麻薬拮抗剤である[[レバロルファン]]は無効である<ref name="pent"/>。モルヒネに対して、幻覚などの精神症状が出やすいとされるが<ref name="kanwa2014"/>、これはペンタゾシンのκオピオイド受容体作動薬の作用である(不安、悪夢、離人感)と言われる<ref name = BNF/>。高容量では高血圧や頻脈を起こす可能性がある<ref name = mart>{{cite web|title=Pentazocine|work=Martindale: The Complete Drug Reference|publisher=Pharmaceutical Press|place=London, UK|date=13 December 2013|accessdate=17 March 2014|url=http://www.medicinescomplete.com/mc/martindale/current/ms-6251-l.htm|editor=Sweetman, S}}</ref>。[[心筋梗塞]]後の急性期の患者には、再梗塞を起こすリスクを高めるために投与は避けた方が良いとされる<ref name = mart/>。ごくまれに[[無顆粒球症]]や[[多形性紅斑]]、[[中毒性表皮壊死症]]があることが報告されている<ref name = mart/>。乳酸ペンタゾシン(TALWIN:日本では未発売)を複数回皮下注射していると、敗血症や注射部位の壊死が起こることがあり、手足の切断が必要になるケースもある。


== 相互作用 ==
== 相互作用 ==
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* 中枢神経の[[セロトニン]]作動性神経の賦活化を介して、[[抗うつ薬]]の作用を増強する<ref name="pent"/>。これによって不安感や悪心、発汗、といった抗うつ薬の副作用が増強されることがある<ref name="pent"/>。
* 中枢神経の[[セロトニン]]作動性神経の賦活化を介して、[[抗うつ薬]]の作用を増強する<ref name="pent"/>。これによって不安感や悪心、発汗、といった抗うつ薬の副作用が増強されることがある<ref name="pent"/>。


== 依存症 ==
== 薬物乱用 ==
μオピオイド受容体に対して拮抗的に作用すること、天井効果があることより、モルヒネ製剤と比較して[[薬物依存症]]は発生しがたいとされるが<ref name="ochi2002"/>、それでも連用により多少なりとも依存性が発生することが知られる<ref name="ochi2002"/>。本邦でも昭和46年-53年の8年間にペンタゾシンによる依存症の症例が276例報告されている(疑いも含む)<ref name="pent"/>。
ペンタゾシンはμオピオイド受容体に対して拮抗的に作用すること、天井効果があることより、モルヒネ製剤と比較して[[薬物依存症]]は発生しがたいとされるが<ref name="ochi2002"/>、それでも連用により多少なりとも依存性が発生することが知られる<ref name="ochi2002"/>。1970年代、第一世代の[[抗ヒスタミン薬]]であるTripelennamine(日本ではベネンとして薬価収載)と一緒にペンタゾシンを摂取すると、愉快な気分になることが知られ流行となった。Tripelennamineは青い錠剤として販売されることが多く、ペンタゾシンはTalwinという商品が良く流通したので、両者の組み合わせを指す隠語として「Ts and blues」という[[スラング]]が用いられた。こういった行為が明るみになったことでアメリカ当局はナロキソンの混合を行うようになり<ref name=monotabsnalox>{{ cite web | url = http://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/lookup.cfm?setid=a28450a0-ac93-4235-b9a6-58cdf24773cb | title = Pentazocine and Naloxone tablets | work = DailyMed | publisher = National Institute of Health | accessdate = 2011-12-10 }}</ref>、ペンタゾシンの乱用は急速に減少した。本邦でも1971-1978年の8年間にペンタゾシンによる依存症の症例が276例報告されている(疑いも含む)<ref name="pent"/>。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
ペンタゾシンはニューヨーク州レンセリアーのスターリング・ウィンスロップ研究所(Sterling-Winthrop Research Institute)のスターリング・ドラッグ・カンパニー( [[:en:Sterling Drug|Sterling Drug Company]])で合成された<ref>スターリング・ドラッグ・カンパニーは1988年にコダックに買収され、1993年に処方箋薬品部門は[[サノフィ]]に、1994年に店頭販売薬部門は現在の[[グラクソ・スミスクライン]]に分けられ売却された</ref>。最初に合成されたのは1958年で、その後1961-1967年にかけて12000人の治験が行われた。1967年6月にFDAはペンタゾシンを認可した(ペンタゾシンの発売を1966年とする資料もある<ref name="ochi2002">越智元郎、長櫓巧「ペンタゾシン依存症が疑われる患者への対応」治療 84(3月増刊号): 1058-1061, 2002</ref>)。1967年半ばまでに、イギリス、メキシコ、アルゼンチンでペンタゾシンは認可された。日本での販売開始は1970年<ref>ソセゴン注射液15mg/30mg 1970年 添付文書参照</ref>である。
ペンタゾシンは1966年アメリカで合成された<ref name="ochi2002">越智元郎、長櫓巧「ペンタゾシン依存症が疑われる患者への対応」治療 84(3月増刊号): 1058-1061, 2002</ref>。

== 研究 ==
小規模の臨床研究にて、ペンタゾシンの屯用投与が[[躁うつ病]]の躁状態を迅速に改善することが示されている<ref name="ChartoffMavrikaki2015">{{cite journal|last1=Chartoff|first1=Elena H.|last2=Mavrikaki|first2=Maria|title=Sex Differences in Kappa Opioid Receptor Function and Their Potential Impact on Addiction|journal=Frontiers in Neuroscience|volume=9|year=2015|issn=1662-453X|doi=10.3389/fnins.2015.00466|pmid=26733781|pmc=4679873}}</ref>。この効果は、 κ-オピオイド受容体を介した[[:en:Mesolimbic_pathway|脳内ドーパミン作動性神経]]の興奮状態の改善によるとされる<ref name="ChartoffMavrikaki2015" />。これに必要なペンタゾシンの容量は、僅かな鎮静作用をみる程度の量であり、精神分裂病の悪化や精神的な副作用なども全く見られないものだった<ref name="ChartoffMavrikaki2015" />。


== 外部リンク ==
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2017年1月23日 (月) 08:24時点における版

ペンタゾシン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: C or D (if used near to term)
法的規制
投与経路 内服、筋注、静注
薬物動態データ
生物学的利用能-20% 経口摂取の場合
代謝肝代謝
作用発現15分[1]
半減期2-3時間
排泄腎排泄
識別
CAS番号
359-83-1 チェック
ATCコード N02AD01 (WHO)
PubChem CID: 441278
IUPHAR/BPS 1606
DrugBank DB00652 チェック
ChemSpider 390041 チェック
UNII RP4A60D26L チェック
KEGG D00498  チェック
ChEMBL CHEMBL560 チェック
化学的データ
化学式C19H27NO
分子量285.424 g/mol
テンプレートを表示
ソセゴン注15mg
ペンタゾシン注射液

ペンタゾシン (pentazocine)は、オピオイド受容体部分作動薬に分類される非麻薬性の中枢性鎮痛剤[2]。中枢神経系のオピオイド受容体に結合し、鎮痛効果を発揮する[3]。主に術後の疼痛管理などに使用される[4]。高容量でモルヒネ製剤と拮抗作用を示すために癌性疼痛の緩和目的では使用されない。

概要

内服製剤と注射薬があり、日本ではソセゴンペンタジンの商品名で販売される。海外ではFortalSosegonTalwin NXTalwin PXFortwinなどの商品名で流通している。 Talacenと呼ばれるアセトアミノフェンとの合剤も開発されている。内服製剤には乱用防止のために、オピオイド受容体拮抗剤のナロキソンが添加されている[5]。これは錠剤を粉砕して溶解しペンタゾシンの抽出するような、錠剤からの注射薬の密造を阻止している。日本では第2種向精神薬に分類され麻薬及び向精神薬取締法の適応となる。ペンタゾシンの作用は、モルヒネなどのオピオイドとほぼ同様であり、鎮痛、鎮静、呼吸抑制がある[3]

オピオイド受容体への作用

オピオイド受容体のδ受容体、κ受容体、μ受容体に親和性を持つ[3]。κオピオイド受容体に対して作動薬として作用し、μオピオイド受容体に対しては拮抗薬もしくは部分作動薬として作用する。ペンタジン30mgはモルヒネ10mg、ペチジン75-100mgに匹敵する鎮痛効果を持つが[6]、ペンタゾシンのオピオイド受容体への作用には天井効果があり、一定量を超えるとそれ以上の鎮痛効果が発揮されなくなり効果が頭打ちになる[3]

薬物動態

内服

経口投与されたペンタゾシンは、約2時間で最高濃度に到達する[3]。大部分は肝臓でグルクロン酸抱合を受けて非活性化され、胆汁を経て糞便中に排泄される[3]。腎臓からの尿排泄は5-8%[3]。継続的に使用する場合、好ましい投与間隔は3-5時間とされる[3]

注射

皮下・筋注で15-20分、静注で 2-3分で鎮痛効果が表れ 薬効は3-4時間持続する[6]。皮下・筋注での最高血中濃度は投与後10分前後とされるが、体重1kgあたり1mgの高容量での最高血中濃度は30分後となる[6]。静注での最高血中濃度は投与直後であり、32時間以内に尿中に8.4-20%が未代謝物として排泄され、残りは肝臓でのグルクロン酸抱合を受ける[6]。好ましい投与間隔は3-4時間とされる[3]

副作用と有害事象

モルヒネのような消化管への作用は弱く悪心嘔吐は少ないが、それでも副作用として最も多いは悪心嘔吐であり、注射剤で6.1%の症例に観察される。悪心嘔吐の次に多いのは、中枢神経の抑制作用による傾眠(注射剤で5.1%)である。呼吸抑制は頻度不明であるがしばしば問題となる。拮抗剤としてドキサプラムナロキソンナロルフィン等が使用されるが、麻薬拮抗剤であるレバロルファンは無効である[6]。モルヒネに対して、幻覚などの精神症状が出やすいとされるが[3]、これはペンタゾシンのκオピオイド受容体作動薬の作用である(不安、悪夢、離人感)と言われる[2]。高容量では高血圧や頻脈を起こす可能性がある[7]心筋梗塞後の急性期の患者には、再梗塞を起こすリスクを高めるために投与は避けた方が良いとされる[7]。ごくまれに無顆粒球症多形性紅斑中毒性表皮壊死症があることが報告されている[7]。乳酸ペンタゾシン(TALWIN:日本では未発売)を複数回皮下注射していると、敗血症や注射部位の壊死が起こることがあり、手足の切断が必要になるケースもある。

相互作用

  • モルヒネ製剤との併用において、低用量では作用増強作用がみられるが、高容量ではモルヒネの作用を拮抗し減弱することがあることが知られる[6]。このため本剤は癌性疼痛の疼痛コントロールにおいて主流としては使用されない。
  • 睡眠薬、抗不安薬、安定剤の作用を増強する[6]。中枢神経抑制の相乗効果による[6]
  • 中枢神経のセロトニン作動性神経の賦活化を介して、抗うつ薬の作用を増強する[6]。これによって不安感や悪心、発汗、といった抗うつ薬の副作用が増強されることがある[6]

薬物乱用

ペンタゾシンはμオピオイド受容体に対して拮抗的に作用することや、天井効果があることより、モルヒネ製剤と比較して薬物依存症は発生しがたいとされるが[4]、それでも連用により多少なりとも依存性が発生することが知られる[4]。1970年代、第一世代の抗ヒスタミン薬であるTripelennamine(日本ではベネンとして薬価収載)と一緒にペンタゾシンを摂取すると、愉快な気分になることが知られ流行となった。Tripelennamineは青い錠剤として販売されることが多く、ペンタゾシンはTalwinという商品が良く流通したので、両者の組み合わせを指す隠語として「Ts and blues」というスラングが用いられた。こういった行為が明るみになったことでアメリカ当局はナロキソンの混合を行うようになり[8]、ペンタゾシンの乱用は急速に減少した。本邦でも1971-1978年の8年間にペンタゾシンによる依存症の症例が276例報告されている(疑いも含む)[6]

歴史

ペンタゾシンはニューヨーク州レンセリアーのスターリング・ウィンスロップ研究所(Sterling-Winthrop Research Institute)のスターリング・ドラッグ・カンパニー( Sterling Drug Company)で合成された[9]。最初に合成されたのは1958年で、その後1961-1967年にかけて12000人の治験が行われた。1967年6月にFDAはペンタゾシンを認可した(ペンタゾシンの発売を1966年とする資料もある[4])。1967年半ばまでに、イギリス、メキシコ、アルゼンチンでペンタゾシンは認可された。日本での販売開始は1970年[10]である。

研究

小規模の臨床研究にて、ペンタゾシンの屯用投与が躁うつ病の躁状態を迅速に改善することが示されている[11]。この効果は、 κ-オピオイド受容体を介した脳内ドーパミン作動性神経の興奮状態の改善によるとされる[11]。これに必要なペンタゾシンの容量は、僅かな鎮静作用をみる程度の量であり、精神分裂病の悪化や精神的な副作用なども全く見られないものだった[11]

外部リンク

出典

  1. ^ Stitzel, Robert E. (2004). Modern pharmacology with clinical applications (6 ed.). Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. p. 325. ISBN 9780781737623. https://books.google.ca/books?id=KqA29hQ-m3AC&pg=PA325 
  2. ^ a b Joint Formulary Committee (2013). British National Formulary (BNF) (65 ed.). London, UK: Pharmaceutical Press. ISBN 978-0-85711-084-8 
  3. ^ a b c d e f g h i j がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版 日本緩和医療学会 2017年1月18日閲覧
  4. ^ a b c d 越智元郎、長櫓巧「ペンタゾシン依存症が疑われる患者への対応」治療 84(3月増刊号): 1058-1061, 2002
  5. ^ ペンタジン錠 添付文書
  6. ^ a b c d e f g h i j k ペンタジン注射液 添付文書
  7. ^ a b c Sweetman, S: “Pentazocine”. Martindale: The Complete Drug Reference. Pharmaceutical Press (2013年12月13日). 2014年3月17日閲覧。
  8. ^ Pentazocine and Naloxone tablets”. DailyMed. National Institute of Health. 2011年12月10日閲覧。
  9. ^ スターリング・ドラッグ・カンパニーは1988年にコダックに買収され、1993年に処方箋薬品部門はサノフィに、1994年に店頭販売薬部門は現在のグラクソ・スミスクラインに分けられ売却された
  10. ^ ソセゴン注射液15mg/30mg 1970年 添付文書参照
  11. ^ a b c Chartoff, Elena H.; Mavrikaki, Maria (2015). “Sex Differences in Kappa Opioid Receptor Function and Their Potential Impact on Addiction”. Frontiers in Neuroscience 9. doi:10.3389/fnins.2015.00466. ISSN 1662-453X. PMC 4679873. PMID 26733781. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4679873/. 

関連項目