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== 概要 ==
== 概要 ==
製品群は[[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]の違いによって以下のように大きく3種類に分けられる。
製品群は[[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]の違いによって以下のように大きく4種類に分けられる。
* '''PSoC1''' CY8C2xxxx CPUにM8Cを使用
* '''PSoC1''' CY8C2xxxx CPUにM8Cを使用
* '''PSoC3''' CY8C3xxxx CPUに[[Intel 8051]]を使用
* '''PSoC3''' CY8C3xxxx CPUに[[Intel 8051]]を使用
* '''PSoC5''' CY8C5xxxx CPUに[[ARMアーキテクチャ|ARM Cortex M3]]を使用
* '''PSoC4''' CY8C4xxxx CPUに[[ARMアーキテクチャ|ARM Cortex M0]]を使用
* '''PSoC5''' CY8C5xxxx CPUにARM Cortex M3を使用
他にも、PSoC5の低消費電力版にあたる'''PSoC5LP'''(CY8C5xLPxxx)もある。


マイクロコントローラに加え、「[[#ユーザーモジュール|ユーザーモジュール]]」と呼ばれるブロック構成機能があり、周辺機能を集積できるのが特徴である。
マイクロコントローラに加え、「[[#ユーザーモジュール|ユーザーモジュール]]」と呼ばれるブロック構成機能があり、周辺機能を集積できるのが特徴である。
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製品としての出荷は[[2002年]]に始まった<ref>[[ロイター]]:"Cypress Hits Half-Billion Mark in Shipments of PSoC Programmable System-on-Chip Devices"</ref>。サイプレスはPSoCを促進するため2002年と2004年に雑誌・Circuit Cellarにて「PSoC Design Challenge」を掲載した<ref>Circuit Cellar:PSoC Design Challenge 2002</ref>。
製品としての出荷は[[2002年]]に始まった<ref>[[ロイター]]:"Cypress Hits Half-Billion Mark in Shipments of PSoC Programmable System-on-Chip Devices"</ref>。サイプレスはPSoCを促進するため2002年と2004年に雑誌・Circuit Cellarにて「PSoC Design Challenge」を掲載した<ref>Circuit Cellar:PSoC Design Challenge 2002</ref>。


[[2009年]][[9月]]にPSoCに'''PSoC3'''と'''PSoC5'''の2ファミリを追加する事を発表した。最大の特徴はCPUコア(コアアーキテクチャ)の一新で、PSoC3は8ビットのIntel 8051を、PSoC5には32ビットのARM Cortex M3を採用し、[[MIPS]](100万命令毎秒)を改良・改善している。[[2010年]][[9月]]現在、両者ともサンプル出荷が開始されている。なお、当初から存在する初代PSoCは今後も'''PSoC1'''として展開される。
[[2009年]][[9月]]にPSoCに'''PSoC3'''と'''PSoC5'''の2ファミリを追加する事を発表した<ref>[http://jp.cypress.com/?rID=38421 Cypress Revolutionizes Embedded Design with High Performance, Low Power PSoCR 3 and PSoC 5 Programmable System-on-Chip Architectures]</ref>。最大の特徴はCPUコア(コアアーキテクチャ)の一新で、PSoC3は8ビットのIntel 8051を、PSoC5には32ビットのARM Cortex M3を採用し、[[MIPS]](100万命令毎秒)を改良・改善している。[[2010年]][[9月]]現在、両者ともサンプル出荷が開始されている。なお、当初から存在する初代PSoCは今後も'''PSoC1'''として展開される。[[2012年]][[12月]]にPSoC5の消費電力を抑えた'''PSoC5LP'''が発表され<ref>[http://jp.cypress.com/?rID=73152 New Cypress PSoCR 5LP Family with ARMR Cortex?-M3 Processor Powers High-Precision Programmable Analog with a Single-Cell Battery, Advancing Embedded Design]</ref>、[[2013年]][[3月]]には'''PSoC4'''のファミリが発表された<ref>[http://jp.cypress.com/?rID=76975 Cypress’s PSoCR 4 Architecture Delivers the Industry’s Most-Flexible, Lowest-Power ARMR Cortex?-M0-Based Devices for Embedded Designs]</ref>


[[ティーボ|TiVo]]や、[[アップル インコーポレイテッド|アップル]][[iPod]]のホイール部分の[[タッチパネル|静電容量センサー]]の制御などに利用されている。
[[ティーボ|TiVo]]や、[[アップル インコーポレイテッド|アップル]][[iPod]]のホイール部分の[[タッチパネル|静電容量センサー]]の制御などに利用されている。
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PSoCの特徴の1つとして、他のマイクロコントローラ(マイコン)と異なり「ユーザーモジュール」と呼ばれる機能があげられる。様々なアナログおよびデジタルブロックを使用して、マイコンの周辺に必要な一連の機能を集積・内蔵することができる。初期化処理や[[割り込み (コンピュータ)|割り込み]]処理などの[[アプリケーションプログラミングインタフェース|API]]や[[サブルーチン]]は開発環境が自動的に作成してくれる。デバイスによって異なるが、最大で16個のデジタルブロックと12個のアナログブロックが利用できる物もある。
PSoCの特徴の1つとして、他のマイクロコントローラ(マイコン)と異なり「ユーザーモジュール」と呼ばれる機能があげられる。様々なアナログおよびデジタルブロックを使用して、マイコンの周辺に必要な一連の機能を集積・内蔵することができる。初期化処理や[[割り込み (コンピュータ)|割り込み]]処理などの[[アプリケーションプログラミングインタフェース|API]]や[[サブルーチン]]は開発環境が自動的に作成してくれる。デバイスによって異なるが、最大で16個のデジタルブロックと12個のアナログブロックが利用できる物もある。


デジタルブロックには、デジタルビルディングブロック(DBBxx)とデジタル通信ブロック(DCBxx)の2種類があり、デジタル通信ブロックには[[入出力|I/O]]ユーザーモジュール([[シリアル・ペリフェラル・インタフェース|SPI]]、[[I²C]]、[[UART]]など)を構成できる。各デジタルブロックは8ビット処理であるが、複数のブロックを組み合わせる事で16・24・32ビットで処理する事ができる。例えば、16ビットの[[パルス幅変調|PWM]]やタイマーはデジタルブロックを2つ接続して処理される。
デジタルブロックには、デジタルビルディングブロック(DBBxx)とデジタル通信ブロック(DCBxx)の2種類があり、デジタル通信ブロックには[[入出力|I/O]]ユーザーモジュール([[シリアル・ペリフェラル・インタフェース|SPI]]、[[I2C]]、[[UART]]など)を構成できる。各デジタルブロックは8ビット処理であるが、複数のブロックを組み合わせる事で16・24・32ビットで処理する事ができる。例えば、16ビットの[[パルス幅変調|PWM]]やタイマーはデジタルブロックを2つ接続して処理される。


電源投入時に(ユーザーモジュールを)構成する必要がある点においては[[FPGA]]に似ているが、構成データは内蔵フラッシュメモリーに記憶されており自動的に読み込まれる。PSoC1ではデジタルブロックは既存の物しか使用できず、[[ハードウェア記述言語|HDL]]などで独自に作成することはできない。ユーザーモジュールの構成は動作中にユーザーモジュールを再構築し、動作・機能を変更することも可能である。
電源投入時に(ユーザーモジュールを)構成する必要がある点においては[[FPGA]]に似ているが、構成データは内蔵フラッシュメモリーに記憶されており自動的に読み込まれる。PSoC1ではデジタルブロックは既存の物しか使用できず、[[ハードウェア記述言語|HDL]]などで独自に作成することはできない。ユーザーモジュールの構成は動作中にユーザーモジュールを再構築し、動作・機能を変更することも可能である。

2013年3月26日 (火) 12:07時点における版

PSoC
「PSoC CapSense」センサーの開発キット

PSoC(ピーソック、Programmable System-on-Chip)とはサイプレス・セミコンダクター社(Cypress Semiconductor Corporation.)が製造しているICチップの製品群である。広義にはマイクロコントローラに分類される。

概要

製品群はアーキテクチャの違いによって以下のように大きく4種類に分けられる。

  • PSoC1 CY8C2xxxx CPUにM8Cを使用
  • PSoC3 CY8C3xxxx CPUにIntel 8051を使用
  • PSoC4 CY8C4xxxx CPUにARM Cortex M0を使用
  • PSoC5 CY8C5xxxx CPUにARM Cortex M3を使用

他にも、PSoC5の低消費電力版にあたるPSoC5LP(CY8C5xLPxxx)もある。

マイクロコントローラに加え、「ユーザーモジュール」と呼ばれるブロック構成機能があり、周辺機能を集積できるのが特徴である。

歴史と採用実績

製品としての出荷は2002年に始まった[1]。サイプレスはPSoCを促進するため2002年と2004年に雑誌・Circuit Cellarにて「PSoC Design Challenge」を掲載した[2]

2009年9月にPSoCにPSoC3PSoC5の2ファミリを追加する事を発表した[3]。最大の特徴はCPUコア(コアアーキテクチャ)の一新で、PSoC3は8ビットのIntel 8051を、PSoC5には32ビットのARM Cortex M3を採用し、MIPS(100万命令毎秒)を改良・改善している。2010年9月現在、両者ともサンプル出荷が開始されている。なお、当初から存在する初代PSoCは今後もPSoC1として展開される。2012年12月にPSoC5の消費電力を抑えたPSoC5LPが発表され[4]2013年3月にはPSoC4のファミリが発表された[5]

TiVoや、アップルiPodのホイール部分の静電容量センサーの制御などに利用されている。

テクノロジー

コア(中心部分)とアナログおよびデジタルブロックで構成されており、プログラムと相互に利用できる。

コア

PSoC1のコアには以下の物が含まれている。

ユーザーモジュール

PSoCの特徴の1つとして、他のマイクロコントローラ(マイコン)と異なり「ユーザーモジュール」と呼ばれる機能があげられる。様々なアナログおよびデジタルブロックを使用して、マイコンの周辺に必要な一連の機能を集積・内蔵することができる。初期化処理や割り込み処理などのAPIサブルーチンは開発環境が自動的に作成してくれる。デバイスによって異なるが、最大で16個のデジタルブロックと12個のアナログブロックが利用できる物もある。

デジタルブロックには、デジタルビルディングブロック(DBBxx)とデジタル通信ブロック(DCBxx)の2種類があり、デジタル通信ブロックにはI/Oユーザーモジュール(SPII2CUARTなど)を構成できる。各デジタルブロックは8ビット処理であるが、複数のブロックを組み合わせる事で16・24・32ビットで処理する事ができる。例えば、16ビットのPWMやタイマーはデジタルブロックを2つ接続して処理される。

電源投入時に(ユーザーモジュールを)構成する必要がある点においてはFPGAに似ているが、構成データは内蔵フラッシュメモリーに記憶されており自動的に読み込まれる。PSoC1ではデジタルブロックは既存の物しか使用できず、HDLなどで独自に作成することはできない。ユーザーモジュールの構成は動作中にユーザーモジュールを再構築し、動作・機能を変更することも可能である。

I/Oポート

I/Oポートの機能が固定されている他のマイクロコントローラと異なり、特にデジタル入出力においてはI/Oポートの制約が少ない。PSoCを搭載する基板に合わせて使用するI/Oポートを選択でき、周辺の配線パターンを最適化しやすい。

開発環境

GUIによる数々の開発環境が無償で提供されている。

PSoC Designerの開発画面。 ユーザーモジュールエディタ(上)と、プログラミングエディタ(下)
PSoC Designerの開発画面。
ユーザーモジュールエディタ(上)と、プログラミングエディタ(下)
PSoC Designer、PSoC Creator
統合設計環境であり、Visual Studioのような高度なGUIで開発を行える。アセンブラまたはC言語にて開発が行え、コンパイラ(ライセンス込み)も付属している。
PSoC DesignerはPSoC1を、PSoC CreatorがPSoC3・PSoC5をそれぞれサポートしている。
PSoC Express
コードフリーの組込み設計ツール。PSoCの殆どの機能をドラッグ&ドロップのアイコンと論理式でアクセスして利用する事が出来る。
PSoC Programmer
ライター(書き込み装置)を利用してデバイスに書き込む際に利用する。

出典

  1. ^ ロイター:"Cypress Hits Half-Billion Mark in Shipments of PSoC Programmable System-on-Chip Devices"
  2. ^ Circuit Cellar:PSoC Design Challenge 2002
  3. ^ Cypress Revolutionizes Embedded Design with High Performance, Low Power PSoCR 3 and PSoC 5 Programmable System-on-Chip Architectures
  4. ^ New Cypress PSoCR 5LP Family with ARMR Cortex?-M3 Processor Powers High-Precision Programmable Analog with a Single-Cell Battery, Advancing Embedded Design
  5. ^ Cypress’s PSoCR 4 Architecture Delivers the Industry’s Most-Flexible, Lowest-Power ARMR Cortex?-M0-Based Devices for Embedded Designs

外部リンク