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野の花 (ヴォーン・ウィリアムズ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

野の花』(ののはな、Flos Campi)は、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ1925年ヴィオラ、小規模な合唱と管弦楽のために作曲した組曲。原題の Flos Campi (フロス・カンピ)はラテン語である。

概要

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この曲の初演は1925年10月10日に、ヘンリー・ウッド指揮、ヴィオラ独奏はライオネル・ターティス王立音楽大学の合唱団、クイーンズ・ホール英語版管弦楽団の演奏で行われた。曲に対する当初の反応は賛否両論だった。ヴォーン・ウィリアムズの仲間の作曲家で、近しい友人であったグスターヴ・ホルストは「(私には)理解できなかった」と述べ、曲に対する以上に自分自身に対して失望した。しかしながらこの曲は時を経るに従い、さほど頻繁には演奏されないものの、音楽上の基準のひとつとして受け入れられてきた。独奏を受け持ったターティスは、曲の献呈を受けている[1]

1927年の演奏会のプログラムで、ヴォーン・ウィリアムズはこう認めている。「『野の花』というタイトルを、キンポウゲデイジーの咲く雰囲気を暗示するものとしてとらえる人もいた。」実際の楽曲は、赤裸々な官能性と豪華な管弦楽法に彩られており、題材の意味するものを考えるにあたって適切な表現を取っている。また、宗教的な要素を見出す聴衆もいたが、作曲者は曲の宗教性を否定している[2]

ヴィオラのソロとオーボエの二重奏により開始される冒頭部は、多調を用いた楽曲の例としてよく知られている。

演奏時間

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約20分-21分[1][2]

楽器編成

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ヴィオラ独奏フルートピッコロ持ち替え)、オーボエ、クラリネットファゴットホルントランペット打楽器大太鼓テーバー英語版シンバルトライアングル)、ハープチェレスタ弦楽合奏(第1ヴァイオリン6、第2ヴァイオリン5、ヴィオラ4、チェロ3、コントラバス2を超えない編成)、20人から26人(ソプラノアルトにそれぞれ6人から8人、テノールバスにそれぞれ4人から5人)の8部の合唱

楽曲構成

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この曲は協奏曲でも合唱曲でもないが、ヴィオラと歌詞を持たない(ヴォカリーズ)合唱に特に焦点があてられている。曲は続けて演奏される6つの楽章に分かれており、それぞれが雅歌の韻文に導かれる。

  1. Sicut Lilium in spinasレント
  2. Jam enim hiems transiitアンダンテコン・モート
  3. Quaesivi quem diligit anima mea (レント - アレグロモデラート
  4. Et lectulum Salomonis (モデラート・アラ・マルチア
  5. Revertere, revertere Sulamitis! (アンダンテ・クワジ・レント)
  6. Pone me ut signaculum (モデラート・トランクィロ

同じヴォーン・ウィリアムズの『南極交響曲』同様、聴衆は引用文を読むことを求められているが、これは演奏の一部として扱われることはない。引用文は下記の通りである。

脚注

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出典

  1. ^ a b IMSLP Flos Campi”. 2013年7月6日閲覧。
  2. ^ a b Hyperion Records Vaughan Williams: Flos Campi & Suite; McEwen: Viola Concerto”. 2013年7月6日閲覧。

外部リンク

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