直接的模倣音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

直接的模倣音とは、様々な楽器の音や環境音などを言語音を使わずに模倣した音であり、ボイス・パーカッション(正しくは、ボーカル・パーカッション)やヒューマンビートボックス等で使用される。

定義[編集]

様々な楽器の音や環境音などを、人間の発話器官を使って再現した音のことである[1]オノマトペのような言語音を介さず、音響的特徴をそのまま模倣することから直接的模倣音と呼ばれている。

解説[編集]

用語の背景[編集]

この用語は、ボーカル・パーカッションヒューマンビートボックスなどで用いられる音を、言語音を使って表現されるオノマトペと区別するために用いられるようになった[注釈 1]音声学では、人間がコミュニケーションのために発音器官(口腔、鼻腔、舌、歯、胸腔など)を使って発する音を音声と定義している[2]。さらに音声は、言語に使用されている声や息を意味する「言語音」と、それ以外の音である「非言語音」とに二分することができる[注釈 2]。この定義にしたがえば、「直接的模倣音」は、非言語音に分類される。

ボーカル・パーカッションやヒューマンビートボックスの奏者は、発話器官を使って楽器や環境音をまるで実際の音であるかのように作り出す技術を持っている。例えば、マイケル・ウインスロー(Michael Winslow: 1959~)には、ターンテーブルのスクラッチ音やドラムセット、エレキギターなどのを模倣した音のレパートリーが、1,000種類以上あると言われており[注釈 3]、ウインスローが出演する映画『ポリスアカデミー』シリーズでは、このような音が映画の中で多用されている。また、ヒューマンビートボックスの最大級のコミュニティサイトHUMANBEATBOX.COMでは、ヒューマンビートボックスで用いられる音を最低でも17カテゴリー124種類あると分類している。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ この用語は、『音楽表現の新たな素材としての模倣音の探求~非言語音による直接的模倣音のための発音器官の使い方~』の中で初出する。
  2. ^ 重野純『聴覚・ことば』新曜社 2006 p.78 なお、音声を「言語音」と「非言語音」に二分する考え方は、川田順造も『聲』(筑摩書房 1998)の中で示している。
  3. ^ 公式サイトでは、ウインスローが出演したテレビ番組や映画の一部が公開されている、レパートリー数については、このサイトでの公称値を引用した。(検索日:2009年3月12日)

出典[編集]

  1. ^ 河本洋一『音楽表現のための新たな素材としての模倣音の探求~非言語音による直接的模倣音のための発音器官の使い方~』2009 音楽表現学Vol.7 p.19
  2. ^ 窪薗晴夫『音声学・音韻論』くろしお出版 2001 p.12