「単位ベクトル」の版間の差分

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'''単位ベクトル'''(たんい-ベクトル、{{lang-en-short|unit vector}})とは、[[長さ]]([[ノルム]])が 1 の[[ベクトル空間|ベクトル]]の事である。
'''単位ベクトル'''(たんい-ベクトル、{{lang-en-short|unit vector}})とは、[[長さ]]([[ノルム]])が 1 の[[ベクトル空間|ベクトル]]の事である。
==数学的な記述==
==数学的な記述==
二つのベクトル {{math|'''a'''}}, {{math|'''e'''}} があって、{{math|'''e'''}} が単位ベクトル( <math>|\mathbf{e}|=1</math> )であるならば、二つのベクトルのなす角を {{mvar|&theta;}} とおけば、<math>\mathbf{a}\cdot\mathbf{e}=|\mathbf{a}|\cos\theta</math> となって、{{math|'''a'''}} の {{math|'''e'''}} 方向の成分を取り出すことができる。ベクトルを分解してある特定方向の成分だけを調べるのに、単位ベクトルを用いれば[[内積]]の代数的計算に結びつけることができるのである。単位ベクトルは、{{math|'''e'''}} などで表されることが多い。
二つのベクトル {{math|'''''a'''''}}, {{math|'''''e'''''}} があって、{{math|'''''e'''''}} が単位ベクトル( <math>|\boldsymbol{e}|=1</math> )であるならば、二つのベクトルのなす角を {{mvar|&theta;}} とおけば、<math>\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{e}=|\boldsymbol{a}|\cos\theta</math> となって、{{math|'''''a'''''}} の {{math|'''''e'''''}} 方向の成分を取り出すことができる。ベクトルを分解してある特定方向の成分だけを調べるのに、単位ベクトルを用いれば[[内積]]の代数的計算に結びつけることができるのである。単位ベクトルは、{{math|'''''e'''''}} などで表されることが多い。


[[力学]]や電磁気などの理工学的な分野などではベクトル {{math|'''r'''}} に対して、{{math|'''r'''}} と同方向の単位ベクトルを
[[力学]]や電磁気などの理工学的な分野などではベクトル {{math|'''''r'''''}} に対して、{{math|'''''r'''''}} と同方向の単位ベクトルを
:<math>\mathbf{\hat{r}}=\frac{\mathbf{r}}{|\mathbf{r}|}=\frac{\mathbf{r}}{r}</math>
:<math>\boldsymbol{\hat{r}}=\frac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|}=\frac{\boldsymbol{r}}{r}</math>
などと表す。ここで、<math>r=|\mathbf{r}|</math> は {{math|'''r'''}} の長さ。
などと表す。ここで、<math>r=|\boldsymbol{r}|</math> は {{math|'''''r'''''}} の長さ。


また、曲線や曲面に沿って動く質点などの動きをベクトルで捉えたとき、主な方向へ向かう単位ベクトルとして[[接線]]単位ベクトル(単位接ベクトル)、[[法線ベクトル|法線単位ベクトル]](単位法ベクトル)、従法線単位ベクトル(単位従法ベクトル)などが挙げられる。そのベクトルの[[絶対値]]が '''1''' であることを表すために「単位ベクトル」という語が付されている。
また、曲線や曲面に沿って動く質点などの動きをベクトルで捉えたとき、主な方向へ向かう単位ベクトルとして[[接線]]単位ベクトル(単位接ベクトル)、[[法線ベクトル|法線単位ベクトル]](単位法ベクトル)、従法線単位ベクトル(単位従法ベクトル)などが挙げられる。そのベクトルの[[絶対値]]が 1 であることを表すために「単位ベクトル」という語が付されている。


{{mvar|n}} 次元ベクトル空間に基底をとれば座標として数ベクトル空間が現れるから、{{mvar|n}} 個の一次独立な単位ベクトル
{{mvar|n}} 次元ベクトル空間に基底をとれば座標として数ベクトル空間が現れるから、{{mvar|n}} 個の一次独立な単位ベクトル
:<math>\mathbf{e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\\ \vdots\\ 0\end{pmatrix},
:<math>\boldsymbol{e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\\ \vdots\\ 0\end{pmatrix},
\mathbf{e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\\ \vdots\\ 0\end{pmatrix},\ldots,
\boldsymbol{e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\\ \vdots\\ 0\end{pmatrix},\ldots,
\mathbf{e}_n=\begin{pmatrix}0\\0\\ \vdots\\ 1\end{pmatrix}</math>
\boldsymbol{e}_n=\begin{pmatrix}0\\0\\ \vdots\\ 1\end{pmatrix}</math>
が取れる。
が取れる。
<!-- ||e|| = &radic; 1+1+&hellip;+1 がどうしたって? -->
<!-- ||e|| = &radic; 1+1+&hellip;+1 がどうしたって? -->
<!--
<!--
物理では一般的な座標は空間の[[3次元]]と時間を1次元として考慮するため(単純に、3+1)4次元となる。理工学ではよく位置を表すのにアルファベットのrを用い、時間はtを用いる。x、y、zはそれぞれの空間の座標を表している。そのため
物理では一般的な座標は空間の[[3次元]]と時間を1次元として考慮するため(単純に、3+1)4次元となる。理工学ではよく位置を表すのにアルファベットのrを用い、時間はtを用いる。x、y、zはそれぞれの空間の座標を表している。そのため
:<math>\mathbf{A}(\mathbf{r}(x,y,z),t)=\mathbf{A}(\mathbf{r},t)</math>
:<math>\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}(x,y,z),t)=\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r},t)</math>


のようになる。時間と言うのは特殊な空間に当たるので、
のようになる。時間と言うのは特殊な空間に当たるので、
単位ベクトルは、空間座標のみで考慮する。--><!-- なるという A はいったい何が何になったの? 考えないならなんで時間 t を持ち出したの? -->
単位ベクトルは、空間座標のみで考慮する。--><!-- なるという A はいったい何が何になったの? 考えないならなんで時間 t を持ち出したの? -->


{{mvar|xyz}}-空間を扱うときには、{{mvar|x}}, {{mvar|y}}, {{mvar|z}} の各軸方向の単位ベクトルをそれぞれ {{math|'''i'''}}, {{math|'''j'''}}, {{math|'''k'''}} と記すことが慣習である。これらを用いて空間ベクトル {{math|'''r'''}} は
{{mvar|xyz}}-空間を扱うときには、{{mvar|x}}, {{mvar|y}}, {{mvar|z}} の各軸方向の単位ベクトルをそれぞれ {{math|'''''i'''''}}, {{math|'''''j'''''}}, {{math|'''''k'''''}} と記すことが慣習である。これらを用いて空間ベクトル {{math|'''''r'''''}} は
:<math>\mathbf{r}=x\mathbf{i}+y\mathbf{j}+z\mathbf{k}</math>
:<math>\boldsymbol{r}=x\boldsymbol{i}+y\boldsymbol{j}+z\boldsymbol{k}</math>
と表せる。
と表せる。


大きさや {{math|'''r'''}} 方向の単位ベクトルはそれぞれ
大きさや {{math|'''r'''}} 方向の単位ベクトルはそれぞれ
:<math>|\mathbf{r}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}</math>
:<math>|\boldsymbol{r}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}</math>
:<math>\begin{align}\mathbf{\hat{r}}&=\frac{1}{|\mathbf{r}|}(x\mathbf{i}+y\mathbf{j}+z\mathbf{k})\\
:<math>\begin{align}\boldsymbol{\hat{r}}&=\frac{1}{|\boldsymbol{r}|}(x\boldsymbol{i}+y\boldsymbol{j}+z\boldsymbol{k})\\
&=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{i}+\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{j}+\frac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{k}\end{align}</math>
&=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\boldsymbol{i}+\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\boldsymbol{j}+\frac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\boldsymbol{k}\end{align}</math>


==関連項目==
==関連項目==

2021年9月15日 (水) 13:09時点における版

単位ベクトル(たんい-ベクトル、: unit vector)とは、長さノルム)が 1 のベクトルの事である。

数学的な記述

二つのベクトル a, e があって、e が単位ベクトル( )であるならば、二つのベクトルのなす角を θ とおけば、 となって、ae 方向の成分を取り出すことができる。ベクトルを分解してある特定方向の成分だけを調べるのに、単位ベクトルを用いれば内積の代数的計算に結びつけることができるのである。単位ベクトルは、e などで表されることが多い。

力学や電磁気などの理工学的な分野などではベクトル r に対して、r と同方向の単位ベクトルを

などと表す。ここで、r の長さ。

また、曲線や曲面に沿って動く質点などの動きをベクトルで捉えたとき、主な方向へ向かう単位ベクトルとして接線単位ベクトル(単位接ベクトル)、法線単位ベクトル(単位法ベクトル)、従法線単位ベクトル(単位従法ベクトル)などが挙げられる。そのベクトルの絶対値が 1 であることを表すために「単位ベクトル」という語が付されている。

n 次元ベクトル空間に基底をとれば座標として数ベクトル空間が現れるから、n 個の一次独立な単位ベクトル

が取れる。

xyz-空間を扱うときには、x, y, z の各軸方向の単位ベクトルをそれぞれ i, j, k と記すことが慣習である。これらを用いて空間ベクトル r

と表せる。

大きさや r 方向の単位ベクトルはそれぞれ

関連項目