「友人との自画像」の版間の差分
テンプ追加 |
m編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
{{Infobox artwork |
{{Infobox artwork |
||
|image_file=Portrait de l'artiste avec un ami, by Raffaello Sanzio, from C2RMF retouched.jpg |
|image_file = Portrait de l'artiste avec un ami, by Raffaello Sanzio, from C2RMF retouched.jpg |
||
|title=友人との自画像 |
|title = 友人との自画像(二人の肖像) |
||
| image_size = 350px |
|||
⚫ | |||
| other_language_1 = [[イタリア語]] |
|||
⚫ | |||
| other_title_1 = Autoritratto con un amico |
|||
⚫ | |||
| other_language_2 = [[英語]] |
|||
⚫ | |||
| other_title_2 = Self-Portrait with a Friend |
|||
|metric_unit=cm |
|||
⚫ | |||
|imperial_unit=in |
|||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
}} |
}} |
||
『'''友人との自画像'''』(ゆうじんとのじがぞう |
『'''友人との自画像'''』(ゆうじんとのじがぞう, {{lang-it-short|Autoritratto con un amico}}, {{lang-en-short|Self-Portrait with a Friend}})は、[[イタリア]]の[[盛期ルネサンス]]の画家[[ラファエロ・サンツィオ]]が1518年から1520年頃に制作した絵画である<ref name="Thones">Thoenes, Christof, Raphael (2005) Ed. [[Taschen]]. pp. 6</ref>。[[油彩]]。『'''二人の肖像'''』や『'''二重肖像'''』とも呼ばれる。発注主や制作経緯は全く謎に包まれているが、2人の人物像のうち画面左の後ろ側に立っている男性がラファエロの自画像であることは確実視されている。現在は[[フランス]]、[[パリ]]の[[ルーヴル美術館]]に所蔵されている<ref>{{cite web|title=Portrait de l'artiste avec un ami |accessdate=2021/05/21 |url=https://collections.louvre.fr/ark:/53355/cl010060770 |publisher=[[ルーヴル美術館]]公式サイト}}</ref><ref name="展">『Raffaello ラファエロ』p.42。</ref><ref name=CTV>{{cite web|title=Raphael |accessdate=2021/05/21 |url=http://cavallinitoveronese.co.uk/general/view_artist/18 |publisher=Cavallini to Veronese}}</ref>。 |
||
== |
== 作品 == |
||
ラファエロは灰色の背景を背にした2人の男性を描いている。彼らはともに髭をたくわえ、白いシャツの上に暗い色の上着をまといながら、前後に並んで立っている。前景の男性は左手に剣の柄を握り、背後の男性に語り掛けるように振り返りながら、空いた方の手で鑑賞者を指さしている。一方、背後の男性は前に立つの男性の肩に左手を置いて、相手が指さす鑑賞者の方を静かな面持ちで見つめている。ラファエロは彼らの仕草でたがいの親密な関係と同時に、前景の男性の快活さや背後の男性の物静かな内面を表現している。 |
|||
ラファエロの前方に描かれている男の身元は、特定化されていない。男は剣の柄を持っているので、伝統的にフェンシングの師匠として認識されていた。現代の美術史家は男をラファエロの親友<ref>Jones & Penny, 171</ref>、またはおそらく弟子の一人であるポリドーロ・ダ・カラヴァッジョか[[ジュリオ・ロマーノ]]と見なしている。候補の一人は、ジョヴァンニ・バッティスタ・ブランコニオである。ラファエロは、ブランコニオのために、[[ローマ]]のボルゴ地区にあり、現在は破壊されているブランコニオ宮殿を設計したのである。描かれている男の他の候補として、[[ピエトロ・アレティーノ]]、[[バルダッサーレ・ペルッツィ]]、[[アントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ジョヴァネ|アントニオ・]][[バルダッサーレ・ペルッツィ|ダ・サンガッロ・イル・ジョーヴァネ]]、イル・ポルデノーネや[[ヤコポ・ダ・ポントルモ|ポントルモ]]など他の画家が含まれるが、これらの仮説は他の肖像画によって否定されている。 |
|||
===モデル=== |
|||
絵画のかなりの部分は、ラファエロの弟子の一人によって制作されたようである<ref>{{Cite book|last=Salmi|first6=Giovanni|location=New York|publisher=Reynal and Co., [[William Morrow and Company]]|date=1969|title=The Complete Work of Raphael|first8=Vincenzo|last8=Golzio|author7-link=Ferdinando Castagnoli|first7=Ferdinando|last7=Castagnoli|author6-link=Giovanni Becatti|first=Mario|last6=Becatti|first5=Giuseppe|last5=Marchini|first4=Anna Forlani|last4=Tempesti|first3=Alessandro|last3=Marabottini|first2=Luisa|last2=Becherucci|author-link=Mario Salmi|page=197}}</ref>。 |
|||
背後に立っている男性はラファエロ自身と考えられている。この点は[[ウフィツィ美術館]]の青年時代の『[[自画像 (ラファエロ)|自画像]]』や、死後に制作されたヴィラ・ランテ(Villa Lante)のメダイヨン肖像、{{仮リンク|ジュリオ・ボナソーネ|en|Giulio Bonasone}}および{{仮リンク|マルカントニオ・ライモンディ|en|Marcantonio Raimondi}}の[[版画]]、その他の後世の素描や版画などとの比較から確かであるとされている<ref name="展" />。 |
|||
これに対し、前景に描かれている男性についてはよく分かっていない。おそらくラファエロの友人であり<ref>Jones & Penny, 171</ref>、男性が剣の柄を握っていることから、伝統的に[[フェンシング]]の師匠と考えられていた。現代の[[美術史家]]はラファエロの広範な人間関係から様々な説を提出されているが未だに特定されていない。具体的には[[ヤコポ・ダ・ポントルモ]]、{{仮リンク|ジョヴァンニ・アントニオ・ポルデノーネ|en|Il Pordenone}}、[[ピントゥリッキオ]]、文化人として名高い[[バルダッサーレ・カスティリオーネ]]、ラファエロの弟子である[[ジュリオ・ロマーノ]]や、[[ジャンフランチェスコ・ペンニ]]、{{仮リンク|ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ|en|Giovanni da Udine}}、{{仮リンク|ポリドーロ・ダ・カラヴァッジョ|en|Polidoro da Caravaggio}}、あるいは版画家マルカントニオ・ライモンディ、[[バルダッサーレ・ペルッツィ]]、建築家[[アントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ジョヴァネ]]などの名前が挙がっている<ref name="展" />。 |
|||
絵画は[[フランス]]の[[フランソワ1世 (フランス王)|フランソワ1世]]が所有し、過去には[[セバスティアーノ・デル・ピオンボ]]を含む他の芸術家に帰属されていた。 |
|||
有力な説としては1517年以降ローマの銀行家{{仮リンク|アゴスティーノ・キージ|en|Agostino Chigi}}のもとに滞在していた作家[[ピエトロ・アレティーノ]]とするものがある。これはライモンディの肖像画との類似性から主張された<ref name="展" />。またジュリオ・ロマーノ説も有力視されている。ラファエロの死後、遺言によって工房や未完成の作品を遺贈された彼は弟子の中で最も師に近い存在であり、2人の身振りは活発な弟子を冷静に抑える師の姿であり、師から弟子への継承を暗示していると解釈できる<ref name="展" />。{{仮リンク|教皇侍従|en|Papal gentleman}}でありラファエロの友人であった{{仮リンク|ジョバンニ・バティスタ・ブランコニオ|en|Giovanbattista Branconio dell'Aquila}}も候補者の1人である。ラファエロはブランコニオのために、[[ローマ]]のボルゴ地区にブランコニオ宮殿を設計している<ref name=CTV /><ref>{{cite web|title=Doppio ritratto |accessdate=2021/05/21 |url=https://web.archive.org/web/20070816151809/http://www.artonline.it/opera.asp?IDOpera=123 |publisher=artonline}}</ref>。 |
|||
===帰属=== |
|||
かつては絵画の大部分がラファエロの弟子の1人によって制作されたと考えられ<ref>The Complete Work of Raphael. p.197.</ref>、帰属に関してラファエロの作品とする説のほかに、ジュリオ・ロマーノ、ポリドーロ・ダ・カラヴァッジョ、[[セバスティアーノ・デル・ピオンボ]]などの説があった。しかし1983年のルーヴル美術館展の目録で再評価されて以降は、ラファエロの真筆であるとして認められている<ref name="展" />。 |
|||
== 来歴 == |
|||
本作品に関する最初の確実な記録は17世紀にさかのぼり、学者の{{仮リンク|カッシアーノ・ダル・ポッツォ|en|Cassiano del Pozzo}}は[[フォンテーヌブロー宮殿]]を訪れた際に本作品を見たと証言している<ref name="展" />。その後、1683年に[[ヴェルサイユ宮殿]]の[[ルイ14世]]のコレクションとして記録され<ref name="展" /><ref name=CTV />、[[フランス革命]]下の1792年にルーヴル美術館に入り、翌年から展示されている<ref name="展" />。 |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
<references /> |
<references /> |
||
== |
== 参考文献 == |
||
* 『Raffaello ラファエロ』渡辺晋輔責任編集ほか、[[読売新聞東京本社]](2013年) |
|||
* {{Cite book|first=Pierluigi|last=De Vecchi|title=Raffaello|publisher=Rizzoli|location=Milan|year=1975}} |
* {{Cite book|first=Pierluigi|last=De Vecchi|title=Raffaello|publisher=Rizzoli|location=Milan|year=1975}} |
||
* Salmi, Mario; Becherucci, Luisa; Marabottini, Alessandro; Tempesti, Anna Forlani; Marchini, Giuseppe; Becatti, Giovanni; Castagnoli, Ferdinando; Golzio, Vincenzo (1969). The Complete Work of Raphael. New York: Reynal and Co., William Morrow and Company. |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
{{Commonscat|Self-portrait with a friend by Raffaello Sanzio}} |
|||
* [https://collections.louvre.fr/ark:/53355/cl010060770 ルーヴル美術館公式サイト, ラファエロ・サンツィオ『友人のいる自画像』] |
|||
* [https://web.archive.org/web/20070816151809/http://www.artonline.it/opera.asp?IDOpera=123 artonline.itのページ]{{In lang|it}} |
|||
{{ラファエロ・サンティ}} |
{{ラファエロ・サンティ}} |
||
{{DEFAULTSORT:ゆうしんとのしかそう}} |
{{DEFAULTSORT:ゆうしんとのしかそう}} |
||
[[Category:自画像]] |
[[Category:自画像]] |
2021年5月21日 (金) 11:40時点における版
イタリア語: Autoritratto con un amico 英語: Self-Portrait with a Friend | |
作者 | ラファエロ・サンティ |
---|---|
製作年 | 1518–1520年 |
寸法 | 99 cm × 83 cm (39 in × 33 in) |
所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『友人との自画像』(ゆうじんとのじがぞう, 伊: Autoritratto con un amico, 英: Self-Portrait with a Friend)は、イタリアの盛期ルネサンスの画家ラファエロ・サンツィオが1518年から1520年頃に制作した絵画である[1]。油彩。『二人の肖像』や『二重肖像』とも呼ばれる。発注主や制作経緯は全く謎に包まれているが、2人の人物像のうち画面左の後ろ側に立っている男性がラファエロの自画像であることは確実視されている。現在はフランス、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[2][3][4]。
作品
ラファエロは灰色の背景を背にした2人の男性を描いている。彼らはともに髭をたくわえ、白いシャツの上に暗い色の上着をまといながら、前後に並んで立っている。前景の男性は左手に剣の柄を握り、背後の男性に語り掛けるように振り返りながら、空いた方の手で鑑賞者を指さしている。一方、背後の男性は前に立つの男性の肩に左手を置いて、相手が指さす鑑賞者の方を静かな面持ちで見つめている。ラファエロは彼らの仕草でたがいの親密な関係と同時に、前景の男性の快活さや背後の男性の物静かな内面を表現している。
モデル
背後に立っている男性はラファエロ自身と考えられている。この点はウフィツィ美術館の青年時代の『自画像』や、死後に制作されたヴィラ・ランテ(Villa Lante)のメダイヨン肖像、ジュリオ・ボナソーネおよびマルカントニオ・ライモンディの版画、その他の後世の素描や版画などとの比較から確かであるとされている[3]。
これに対し、前景に描かれている男性についてはよく分かっていない。おそらくラファエロの友人であり[5]、男性が剣の柄を握っていることから、伝統的にフェンシングの師匠と考えられていた。現代の美術史家はラファエロの広範な人間関係から様々な説を提出されているが未だに特定されていない。具体的にはヤコポ・ダ・ポントルモ、ジョヴァンニ・アントニオ・ポルデノーネ、ピントゥリッキオ、文化人として名高いバルダッサーレ・カスティリオーネ、ラファエロの弟子であるジュリオ・ロマーノや、ジャンフランチェスコ・ペンニ、ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ、ポリドーロ・ダ・カラヴァッジョ、あるいは版画家マルカントニオ・ライモンディ、バルダッサーレ・ペルッツィ、建築家アントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ジョヴァネなどの名前が挙がっている[3]。
有力な説としては1517年以降ローマの銀行家アゴスティーノ・キージのもとに滞在していた作家ピエトロ・アレティーノとするものがある。これはライモンディの肖像画との類似性から主張された[3]。またジュリオ・ロマーノ説も有力視されている。ラファエロの死後、遺言によって工房や未完成の作品を遺贈された彼は弟子の中で最も師に近い存在であり、2人の身振りは活発な弟子を冷静に抑える師の姿であり、師から弟子への継承を暗示していると解釈できる[3]。教皇侍従でありラファエロの友人であったジョバンニ・バティスタ・ブランコニオも候補者の1人である。ラファエロはブランコニオのために、ローマのボルゴ地区にブランコニオ宮殿を設計している[4][6]。
帰属
かつては絵画の大部分がラファエロの弟子の1人によって制作されたと考えられ[7]、帰属に関してラファエロの作品とする説のほかに、ジュリオ・ロマーノ、ポリドーロ・ダ・カラヴァッジョ、セバスティアーノ・デル・ピオンボなどの説があった。しかし1983年のルーヴル美術館展の目録で再評価されて以降は、ラファエロの真筆であるとして認められている[3]。
来歴
本作品に関する最初の確実な記録は17世紀にさかのぼり、学者のカッシアーノ・ダル・ポッツォはフォンテーヌブロー宮殿を訪れた際に本作品を見たと証言している[3]。その後、1683年にヴェルサイユ宮殿のルイ14世のコレクションとして記録され[3][4]、フランス革命下の1792年にルーヴル美術館に入り、翌年から展示されている[3]。
脚注
- ^ Thoenes, Christof, Raphael (2005) Ed. Taschen. pp. 6
- ^ “Portrait de l'artiste avec un ami”. ルーヴル美術館公式サイト. 2021年5月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 『Raffaello ラファエロ』p.42。
- ^ a b c “Raphael”. Cavallini to Veronese. 2021年5月21日閲覧。
- ^ Jones & Penny, 171
- ^ “Doppio ritratto”. artonline. 2021年5月21日閲覧。
- ^ The Complete Work of Raphael. p.197.
参考文献
- 『Raffaello ラファエロ』渡辺晋輔責任編集ほか、読売新聞東京本社(2013年)
- De Vecchi, Pierluigi (1975). Raffaello. Milan: Rizzoli
- Salmi, Mario; Becherucci, Luisa; Marabottini, Alessandro; Tempesti, Anna Forlani; Marchini, Giuseppe; Becatti, Giovanni; Castagnoli, Ferdinando; Golzio, Vincenzo (1969). The Complete Work of Raphael. New York: Reynal and Co., William Morrow and Company.