「Toll様受容体」の版間の差分
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TLRまたはTLR類似の[[遺伝子]]は、[[哺乳類]]やその他の[[脊椎動物]]([[インターロイキン]]1受容体も含む)、また[[昆虫]]などにもあり、最近では[[植物]]にも類似のものが見つかっていて、[[進化]]的起源は[[ディフェンシン]](細胞の出す抗菌性ペプチド)などと並び非常に古いと思われる。さらにTLRの一部分にだけ相同性を示すタンパク質(RP105など)もある。 |
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TLRやその他の自然免疫に関わる受容体は、病原体に常に存在し(進化上保存されたもの)、しかも病原体に特異的な(宿主にはない)パターンを認識するものでなければならない。そのためにTLRは、[[細菌]]表面の[[リポ多糖]](LPS)、[[リポタンパク質]]、[[べん毛]]の[[フラジェリン]]、[[ウイルス]]の二本鎖[[RNA]]、細菌やウイルスの[[DNA]]に含まれる非メチル化CpGアイランド(宿主のCpG配列はメチル化されているので区別できる)などを認識するようにできている。 |
TLRやその他の自然免疫に関わる受容体は、病原体に常に存在し(進化上保存されたもの)、しかも病原体に特異的な(宿主にはない)パターンを認識するものでなければならない。そのためにTLRは、[[細菌]]表面の[[リポ多糖]](LPS)、[[リポタンパク質]]、[[べん毛]]の[[フラジェリン]]、[[ウイルス]]の二本鎖[[リボ核酸|RNA]]、細菌やウイルスの[[DNA]]に含まれる非メチル化CpGアイランド(宿主のCpG配列はメチル化されているので区別できる)などを認識するようにできている。 |
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TLRは特定の[[分子]]を認識するのでなく、上記のようなある一群の分子を認識するので、'''パターン認識受容体'''という言い方もされる。 |
TLRは特定の[[分子]]を認識するのでなく、上記のようなある一群の分子を認識するので、'''パターン認識受容体'''という言い方もされる。 |
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| TLR 2 || [[リポタンパク質]]; [[グラム陽性菌]]の[[ペプチドグリカン]]; [[リポテイコ酸]]; [[真菌]]の[[多糖]]; [[ウイルス]]の[[糖タンパク質]] || MyD88依存性TIRAP |
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2006年10月14日 (土) 13:08時点における版
Toll様受容体(トルようじゅようたい、Toll-like receptor:TLRと略す)は動物の細胞表面にある受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して自然免疫(獲得免疫と異なり、一般の病原体を排除する非特異的な免疫作用)を作動させる機能がある。脊椎動物では、獲得免疫が働くためにもToll様受容体などを介した自然免疫の作動が必要である。
TLRまたはTLR類似の遺伝子は、哺乳類やその他の脊椎動物(インターロイキン1受容体も含む)、また昆虫などにもあり、最近では植物にも類似のものが見つかっていて、進化的起源はディフェンシン(細胞の出す抗菌性ペプチド)などと並び非常に古いと思われる。さらにTLRの一部分にだけ相同性を示すタンパク質(RP105など)もある。
TLRやその他の自然免疫に関わる受容体は、病原体に常に存在し(進化上保存されたもの)、しかも病原体に特異的な(宿主にはない)パターンを認識するものでなければならない。そのためにTLRは、細菌表面のリポ多糖(LPS)、リポタンパク質、べん毛のフラジェリン、ウイルスの二本鎖RNA、細菌やウイルスのDNAに含まれる非メチル化CpGアイランド(宿主のCpG配列はメチル化されているので区別できる)などを認識するようにできている。
TLRは特定の分子を認識するのでなく、上記のようなある一群の分子を認識するので、パターン認識受容体という言い方もされる。
研究史
Tollは1980年代にショウジョウバエで正常な発生(背腹軸の決定)に必要な遺伝子として発見された("Toll"はドイツ語で"すごい"の意味)が、1996年には、真菌に対する免疫にも働いていることが明らかになった。
さらに1997年、哺乳類にも相同性の高い遺伝子が見つかり、これがToll-like receptorと命名された。
ほとんどの哺乳動物で10から15種類のTLRが確認されている。ヒトでは10種類(TLR1からTLR10と呼ばれる)があり、他の種でもそれらの多くに対応するものがあるが、一部はない(例えばTLR10に対応する遺伝子はマウスにもあるが、レトロウイルスにより破壊されている)。またヒトにはないが他種にあるものもある。
機能
TLRは特に哺乳動物で詳しく研究されており、この項ではそれについて詳述する。TLRの機能は知られているすべての生物で似ており、基本的には同一モデルで説明できると思われる(ただし少なくとも昆虫では活性化の様式が異なる:昆虫のTLRの項参照)。各TLRは、病原体のもつ特異的分子(または分子の特異的な組合せ)により活性化されて二量体を形成することで機能する。
多くのTLRはホモ二量体(同種分子からなる)として働くが、TLR2はTLR1やTLR6との間でヘテロ二量体をつくり、これらは互いに特異性が異なる。
またTLRは完全な機能を得るのに他の補助因子が必要なこともあり、この例としてはTLR4がある。LPSの認識にはMD-2が必要であり、CD14とLPS結合タンパク質(LBP)はLPSのMD-2への提示を促進することが知られている。
このようにして活性化されたTLRは、細胞内シグナル伝達経路を介して、転写因子であるNF-κBを活性化し、IL-1、IL-6、IL-8などサイトカインを誘導し、獲得免疫、あるいは炎症を発動させる。
細菌は、ファゴサイトーシスで取り込まれて消化され、その抗原はヘルパーT細胞(CD4+ T細胞)に呈示される。
ウイルス因子に対しては、インターフェロン(抗ウイルス因子)を産生する。感染細胞はタンパク質産生を中止し、アポトーシスに至る。
現在知られているTLRの活性を下の表にまとめた。
受容体 | リガンド | 下流のシグナル伝達経路 |
---|---|---|
TLR 1 | トリアシルリポタンパク質 | 不明 |
TLR 2 | リポタンパク質; グラム陽性菌のペプチドグリカン; リポテイコ酸; 真菌の多糖; ウイルスの糖タンパク質 | MyD88依存性TIRAP |
TLR 3 | 二本鎖RNA(一部のウイルスにある)、ポリI:C(合成核酸) |
MyD88非依存性TRIF/TICAM |
TLR 4 | リポ多糖; ウイルスの糖タンパク質 | MyD88依存性TIRAP; MyD88非依存
性TRIF/TICAM/TRAM |
TLR 5 | フラジェリン | MyD88依存性IRAK |
TLR 6 | ジアシルリポタンパク質 | 不明 |
TLR 7 | 合成低分子化合物(抗ウイルス剤イミダゾキノリンなど); 一本鎖RNA | MyD88依存性IRAK |
TLR 8 | 合成低分子化合物; 一本鎖RNA | MyD88依存性IRAK |
TLR 9 | 非メチル化CpG DNA | MyD88依存性IRAK |
TLR 10 | 不明 | 不明 |
TLR 11 | 尿道感染細菌にある分子(詳細不明) | MyD88依存性IRAK |
昆虫のTLR
ショウジョウバエではTLRが元来のTollを含め9種見つかっている。しかしいずれも脊椎動物とは異なり、病原体分子を直接結合するものではない。現在知られているところでは、体液中にあるパターン認識タンパク質(PGRP、GNBPなど)に標的が結合するとプロテアーゼカスケードが活性化され、最終的にSpätzleというタンパク質が活性化され、これがToll受容体に結合して機能する。