「牛痘」の版間の差分
出典の追加 |
m lk add |
||
3行目: | 3行目: | ||
'''牛痘'''(ぎゅうとう、{{lang-en-short|cowpox}})は、[[牛痘ウイルス]]感染を原因とする[[感染症]]。牛痘ウイルスは[[ポックスウイルス科]]オルソポックスウイルス属に属する[[DNAウイルス]]であり、ネコ科動物、ヒト、牛など種々の動物を宿主とする。ネコ科動物では感受性が高い。症状として[[丘疹]]、[[結節]]、[[水疱]]、[[膿疱]]を形成する。 |
'''牛痘'''(ぎゅうとう、{{lang-en-short|cowpox}})は、[[牛痘ウイルス]]感染を原因とする[[感染症]]。牛痘ウイルスは[[ポックスウイルス科]]オルソポックスウイルス属に属する[[DNAウイルス]]であり、ネコ科動物、ヒト、牛など種々の動物を宿主とする。ネコ科動物では感受性が高い。症状として[[丘疹]]、[[結節]]、[[水疱]]、[[膿疱]]を形成する。 |
||
ヒトでは症状が軽く、瘢痕も残らず、しかも近縁である[[天然痘]]ウイルスに対する免疫を獲得できるので、18世紀末に[[エドワード・ジェンナー|エドワード=ジェンナー]]により[[種痘]]に用いられていたと思われていた。しかし1930年代以降の研究で種痘に用いられているウイルスはワクチニアウイルスというウイルスであり天然痘ウイルスとも牛痘ウイルスとも違うことが判明しワクチニアウイルスの由来は一体何か様々な研究がなされてきた。この中で牛痘ウイルスが継代されていく間に変異しワクチニアウイルスとなったと考えられていた時期もあったが、2013年モンゴルで採取された馬痘ウイルスのゲノム解析をした結果、種痘に用いられているワクチニアウイルスと馬痘ウイルスが99.7%同一のゲノムであることが判明しワクチニアウイルスとは馬痘ウイルスもしくはその近縁のウイルスである事がわかった。つまりジェンナーの種痘は牛痘ウイルスではなく馬痘ウイルスがたまたま牛に感染したものを種痘として利用したものであり種痘には一度も牛痘ウイルスは使用されていなかったことになる。(ただしジェンナー自身牛痘は馬の関節に出来るグリースという病気がたまたま牛に伝染り発症すると考えていたため馬由来の病気から牛痘が生まれると理解していた可能性もある。)<ref>Damaso, C.: Revisiting Jenner’s mysteries, the role of the Beaugency lumph in the evolutionary path of ancient smallpox vaccines. Lancet Infect. Dis., August 18, 2017.</ref>[[天然痘ウイルス]]が[[牛痘ウイルス]]と同じ[[ポックスウイルス科]][[オルソポックスウイルス属]]に属しているためで、牛痘ウイルスと天然痘ウイルスの[[デオキシリボ核酸|DNA]][[塩基配列]]も極めて酷似していることが判明している。 |
ヒトでは症状が軽く、瘢痕も残らず、しかも近縁である[[天然痘]]ウイルスに対する免疫を獲得できるので、18世紀末に[[エドワード・ジェンナー|エドワード=ジェンナー]]により[[種痘]]に用いられていたと思われていた。しかし1930年代以降の研究で種痘に用いられているウイルスは[[ワクシニアウイルス|ワクチニアウイルス]]というウイルスであり天然痘ウイルスとも牛痘ウイルスとも違うことが判明しワクチニアウイルスの由来は一体何か様々な研究がなされてきた。この中で牛痘ウイルスが継代されていく間に変異しワクチニアウイルスとなったと考えられていた時期もあったが、2013年モンゴルで採取された馬痘ウイルスのゲノム解析をした結果、種痘に用いられているワクチニアウイルスと馬痘ウイルスが99.7%同一のゲノムであることが判明しワクチニアウイルスとは馬痘ウイルスもしくはその近縁のウイルスである事がわかった。つまりジェンナーの種痘は牛痘ウイルスではなく馬痘ウイルスがたまたま牛に感染したものを種痘として利用したものであり種痘には一度も牛痘ウイルスは使用されていなかったことになる。(ただしジェンナー自身牛痘は馬の関節に出来るグリースという病気がたまたま牛に伝染り発症すると考えていたため馬由来の病気から牛痘が生まれると理解していた可能性もある。)<ref>Damaso, C.: Revisiting Jenner’s mysteries, the role of the Beaugency lumph in the evolutionary path of ancient smallpox vaccines. Lancet Infect. Dis., August 18, 2017.</ref>[[天然痘ウイルス]]が[[牛痘ウイルス]]と同じ[[ポックスウイルス科]][[オルソポックスウイルス属]]に属しているためで、牛痘ウイルスと天然痘ウイルスの[[デオキシリボ核酸|DNA]][[塩基配列]]も極めて酷似していることが判明している。 |
||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2020年2月28日 (金) 16:48時点における版
牛痘(ぎゅうとう、英: cowpox)は、牛痘ウイルス感染を原因とする感染症。牛痘ウイルスはポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属するDNAウイルスであり、ネコ科動物、ヒト、牛など種々の動物を宿主とする。ネコ科動物では感受性が高い。症状として丘疹、結節、水疱、膿疱を形成する。
ヒトでは症状が軽く、瘢痕も残らず、しかも近縁である天然痘ウイルスに対する免疫を獲得できるので、18世紀末にエドワード=ジェンナーにより種痘に用いられていたと思われていた。しかし1930年代以降の研究で種痘に用いられているウイルスはワクチニアウイルスというウイルスであり天然痘ウイルスとも牛痘ウイルスとも違うことが判明しワクチニアウイルスの由来は一体何か様々な研究がなされてきた。この中で牛痘ウイルスが継代されていく間に変異しワクチニアウイルスとなったと考えられていた時期もあったが、2013年モンゴルで採取された馬痘ウイルスのゲノム解析をした結果、種痘に用いられているワクチニアウイルスと馬痘ウイルスが99.7%同一のゲノムであることが判明しワクチニアウイルスとは馬痘ウイルスもしくはその近縁のウイルスである事がわかった。つまりジェンナーの種痘は牛痘ウイルスではなく馬痘ウイルスがたまたま牛に感染したものを種痘として利用したものであり種痘には一度も牛痘ウイルスは使用されていなかったことになる。(ただしジェンナー自身牛痘は馬の関節に出来るグリースという病気がたまたま牛に伝染り発症すると考えていたため馬由来の病気から牛痘が生まれると理解していた可能性もある。)[1]天然痘ウイルスが牛痘ウイルスと同じポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属しているためで、牛痘ウイルスと天然痘ウイルスのDNA塩基配列も極めて酷似していることが判明している。
関連項目
参考文献
- 清水悠紀臣ほか 『動物の感染症』 近代出版 2002年 ISBN 4874020747
出典
- ^ Damaso, C.: Revisiting Jenner’s mysteries, the role of the Beaugency lumph in the evolutionary path of ancient smallpox vaccines. Lancet Infect. Dis., August 18, 2017.