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| Name = ペラグラ(Pellagra)
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'''ペラグラ'''({{lang-it|Pellagra}})は、[[内分泌学|代謝内分泌疾患]]の一つで、[[ナイアシン]]欠乏症である。[[ICD10]]ではE52。 Pellagraは[[イタリア語]]で「[[皮膚]]の痛み」を意味する。
'''ペラグラ'''({{lang-it|Pellagra}})は、[[内分泌学|代謝内分泌疾患]]の一つで、[[ナイアシン]]欠乏症(栄養失調)である。Pellagraは[[イタリア語]]で「[[皮膚]]の痛み」を意味する。


ナイアシンは[[必須アミノ酸]]のひとつである[[トリプトファン]]から体内で[[生合成]]されるので、トリプトファンが欠乏することでもナイアシンが欠乏し、結果ペラグラを発症する。
ナイアシンは[[必須アミノ酸]]のひとつである[[トリプトファン]]から体内で[[生合成]]されるので、トリプトファンが欠乏することでもナイアシンが欠乏し、結果ペラグラを発症する。


治療においては、[[ニコチンアミド|ニコチン酸アミド]]及びビタミンB群を経口摂取する。
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== 原因 ==
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==概略==
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ペラグラは[[トウモロコシ]]を主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンは[[アルカリ]]で処理すること ([[ニシュタマリゼーション]]) によって吸収されるようになる([[メキシコ]]の[[トルティーヤ]]は良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。
ペラグラは[[トウモロコシ]]を主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンは[[アルカリ]]で処理すること ([[ニシュタマリゼーション]]) によって吸収されるようになる([[メキシコ]]の[[トルティーヤ]]は良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。


[[アルコール使用障害]]患者や[[拒食症]]患者など、栄養不良(特に[[鉄]]、[[ビタミンB2]]、[[ビタミンB6|B6]])のある者は、ペラグラになるリスクが高くなる。また、[[遺伝病]]である[[ハートナップ病]](トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。
[[アルコール使用障害]]患者や[[拒食症]]患者など、栄養不良(特に[[鉄]]、[[ビタミンB2]]、[[ビタミンB6|B6]])のある者は、ペラグラになるリスクが高くなる。また、[[遺伝病]]である[[ハートナップ病]](トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。


==症状と診断==
[[File:Pellagra2.jpg|thumb|光線過敏による皮膚炎を発症したペラグラ患者]]
ペラグラは、ナイアシン不足に加えて日光に当たることによって発症する。まず[[光線過敏|光線過敏症]]が生じ、顔に左右対称の赤い発疹が出る。
ペラグラは、ナイアシン不足に加えて日光に当たることによって発症する。まず[[光線過敏|光線過敏症]]が生じ、顔に左右対称の赤い発疹が出る。


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その後、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全([[脳症]])による錯乱、[[見当識]]の喪失、[[幻覚]]、[[健忘]]などが起こり、最悪の場合死に至る。
その後、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全([[脳症]])による錯乱、[[見当識]]の喪失、[[幻覚]]、[[健忘]]などが起こり、最悪の場合死に至る。


== 歴史 ==
治療においては、[[ニコチンアミド|ニコチン酸アミド]]及びビタミンB群を経口摂取する。
[[1735年]]に[[スペイン]]で記録されたのが初出である。[[トウモロコシ]]を主食とする[[イタリア]]北部などで猛威をふるい、「イタリア癩病」、「アストゥリアス癩病」などと呼ばれた。

[[1926年]]に、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の医学者[[ジョゼフ・ゴールドバーガー]]([[:w:Joseph Goldberger|Joseph Goldberger]])によって肉や牛乳に含まれる何らかの栄養が不足することが原因であると突き止められ、[[1937年]]になって[[コンラッド・エルヴェージェム]]([[:w:Conrad Elvehjem|Conrad Elvehjem]])によりその物質がナイアシンだと判明した。

== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2017年9月3日 (日) 14:16時点における版

ペラグラ
皮膚炎症を起こした患者
概要
診療科 内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10 E52
ICD-9-CM 265.2
DiseasesDB 9730
MedlinePlus 000342
eMedicine ped/1755
Patient UK ペラグラ

ペラグライタリア語: Pellagra)は、代謝内分泌疾患の一つで、ナイアシン欠乏症(栄養失調)である。Pellagraはイタリア語で「皮膚の痛み」を意味する。

ナイアシンは必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンから体内で生合成されるので、トリプトファンが欠乏することでもナイアシンが欠乏し、結果ペラグラを発症する。

治療においては、ニコチン酸アミド及びビタミンB群を経口摂取する。

原因

ペラグラはトウモロコシを主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンはアルカリで処理すること (ニシュタマリゼーション) によって吸収されるようになる(メキシコトルティーヤは良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。

アルコール使用障害患者や拒食症患者など、栄養不良(特にビタミンB2B6)のある者は、ペラグラになるリスクが高くなる。また、遺伝病であるハートナップ病(トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。

症状と診断

光線過敏による皮膚炎を発症したペラグラ患者

ペラグラは、ナイアシン不足に加えて日光に当たることによって発症する。まず光線過敏症が生じ、顔に左右対称の赤い発疹が出る。

その後、消化管全体が侵されて吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの症状が現れ、舌と口に口内炎が生じる。また、喉や食道にも炎症が起こる。

その後、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全(脳症)による錯乱、見当識の喪失、幻覚健忘などが起こり、最悪の場合死に至る。

歴史

1735年スペインで記録されたのが初出である。トウモロコシを主食とするイタリア北部などで猛威をふるい、「イタリア癩病」、「アストゥリアス癩病」などと呼ばれた。

1926年に、アメリカの医学者ジョゼフ・ゴールドバーガー(Joseph Goldberger)によって肉や牛乳に含まれる何らかの栄養が不足することが原因であると突き止められ、1937年になってコンラッド・エルヴェージェムConrad Elvehjem)によりその物質がナイアシンだと判明した。

脚注

外部リンク