「分圧」の版間の差分
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[[ジョン・ドルトン|ドルトン]]の[[分圧の法則]]によれば、混合気体の圧力([[全圧]])は各成分の分圧の和に等しい。よって、分圧の法則が成り立つ混合気体であれば、ある成分 {{mvar|i}} の分圧 {{mvar|P<sub>i</sub>}} は |
[[ジョン・ドルトン|ドルトン]]の[[分圧の法則]]によれば、混合気体の圧力([[全圧]])は各成分の分圧の和に等しい。よって、分圧の法則が成り立つ混合気体であれば、ある成分 {{mvar|i}} の分圧 {{mvar|P<sub>i</sub>}} は |
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のように全圧 {{mvar|P}} に係数として[[モル分率]] {{mvar|X<sub>i</sub>}} を使って簡単に表すことができる。混合気体が[[理想気体の状態方程式]] {{math|1=''PV'' = ''nRT''}} に従うなら、この混合気体では分圧の法則が成り立つ。すなわち、理想混合気体の成分 {{mvar|i}} の分圧は {{math|1=''P<sub>i</sub>'' = ''X<sub>i</sub>P''}} で表すことができる。それに対して混合気体が {{math|1=''PV'' = ''nRT''}} に従わないときには、ふつうは分圧の法則が成り立たないので {{math|1=''P<sub>i</sub>'' ≠ ''X<sub>i</sub>P''}} である。 |
のように全圧 {{mvar|P}} に係数として[[モル分率]] {{mvar|X<sub>i</sub>}} を使って簡単に表すことができる。混合気体が[[理想気体の状態方程式]] {{math|1=''PV'' = ''nRT''}} に従うなら、この混合気体では分圧の法則が成り立つ。すなわち、[[理想混合気体]]の成分 {{mvar|i}} の分圧は {{math|1=''P<sub>i</sub>'' = ''X<sub>i</sub>P''}} で表すことができる。それに対して混合気体が {{math|1=''PV'' = ''nRT''}} に従わないときには、ふつうは分圧の法則が成り立たないので {{math|1=''P<sub>i</sub>'' ≠ ''X<sub>i</sub>P''}} である。 |
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=== 専門的な定義 === |
=== 専門的な定義 === |
2016年9月27日 (火) 09:45時点における版
分圧(ぶんあつ)は、電気工学と物理化学で異なる意味をもつ。この項目ではそれぞれの分圧について説明する。
電気工学における分圧
電気回路において、2つ以上の抵抗器を直列に接続したときに、一方の抵抗器にかかる電圧は2つの抵抗器に掛かる電圧より低くなる。このようにして電圧を下げ、必要な電圧を取り出すことを分圧という。オームの法則より、2つの抵抗器に掛かる電圧は抵抗器の抵抗値に比例する。また、この回路は分圧回路と呼ばれる。
物理化学における分圧
素朴な定義
多成分からなる混合気体において、ある1つの成分が混合気体と同じ体積を単独で占めたときの圧力を、その成分の分圧 (英語: partial pressure)という[1]。たとえば酸素の分圧は酸素分圧と呼ばれる。
ドルトンの分圧の法則によれば、混合気体の圧力(全圧)は各成分の分圧の和に等しい。よって、分圧の法則が成り立つ混合気体であれば、ある成分 i の分圧 Pi は
のように全圧 P に係数としてモル分率 Xi を使って簡単に表すことができる。混合気体が理想気体の状態方程式 PV = nRT に従うなら、この混合気体では分圧の法則が成り立つ。すなわち、理想混合気体の成分 i の分圧は Pi = XiP で表すことができる。それに対して混合気体が PV = nRT に従わないときには、ふつうは分圧の法則が成り立たないので Pi ≠ XiP である。
専門的な定義
混合気体中の2つの成分が化学平衡の状態にあるときには、これらの成分は混合気体と同じ体積を単独では占めることができない。よって、上述の方法ではこれらの成分の分圧を定義することはできない。たとえば二酸化窒素は四酸化二窒素と
で表される平衡状態にある。そのため、NO2 と N2O4 の混合気体から NO2 または N2O4 の一方のみを取り出すことは不可能である。
このような場合でも各成分の分圧が定義できるように、専門的には成分 i の分圧 Pi を次式で定義する[2]。
ここで P は混合気体の全圧で、Xi は成分 i のモル分率である。この式を定義式とすることで、混合気体と同じ体積を単独では占めることができない成分についても分圧を定義することができる。また、分圧の法則が成り立たない混合気体についても Pi = XiP がすべての成分について成り立つ。すなわち、理想気体であれ実在気体であれ任意の混合気体について分圧が定義できる[3]。
分圧を Pi = XiP で定義すると、各成分の分圧の和はいつでも全圧に等しい。ドルトンの法則が成り立たないような混合気体においても、各成分の分圧の和が全圧に等しくなる。したがって、この定義のもとでドルトンの法則について述べるときは
混合気体の全圧は、各成分気体が混合気体と同温・同容積において示す圧力の和に等しい — デジタル大辞泉『ドルトンの法則』
というように、分圧という言葉を使わずに述べなければならない。
脚注
- ^ ムーア物理化学 p.28
- ^ IUPAC. Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book"). Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997). XML on-line corrected version: http://goldbook.iupac.org (2006-) created by M. Nic, J. Jirat, B. Kosata; updates compiled by A. Jenkins. doi:10.1351/goldbook.P04819
- ^ アトキンス第8版 p. 13
参考文献
- W. J. ムーア『ムーア物理化学』 上、藤代亮一 訳(第4版)、東京化学同人、1974年。ISBN 4-8079-0002-1。
- Peter Atkins、Julio de Paula『アトキンス物理化学』 上、千原秀昭、中村亘男 訳(第8版)、東京化学同人、2009年。ISBN 978-4-8079-0695-6。