「権助」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
1行目: 1行目:
'''権助'''(ごんすけ)は[[落語]]に登場する架空の人物。[[定吉]]と並ぶ、落語に出てくる奉公人のキャラクターである。江戸落語で主に登場する<ref name="a">『落語古典語典』 94頁。</ref>。
'''権助'''(ごんすけ)は架空の人物小僧の[[定吉]]と並ぶ、古典[[落語]]登場する奉公人のキャラクターである。主に江戸落語で登場する<ref name="a">『落語古典語典』 94頁。</ref>。


元々「権助」という名前は個人名というより、地方出身の商家の使用人特に飯炊き<ref>『落語国・紳士録』 171頁。</ref>の総称で、職業名を示す[[普通名詞]]だった。落語に出てくる権助も、多くは地方から江戸に上京してきた田舎者で、奉公先で飯炊きや、下男をしている。
== キャラクター ==
=== 性格 ===
元々「権助」という名前は個人名というより、地方出身の商家の使用人特に飯炊き専門に雇われた男<ref>『落語国・紳士録』 171頁。</ref>の総称で、職業名を示す[[普通名詞]]だった。<br />この権助も、奉公先の家の人々の間活躍す[[脇役]]である<ref name="b">『落語登場人物辞典』 67頁。</ref>


== プロフィール ==
[[田舎]]の出身で、非常にまじめな性格でもあり、「奉公人が三日たたないうちに逃げ出す」という人使いの荒い家で3年間勤め上げたことがある<ref name="b"/>。
田舎者のステレオタイプとして描かれる。江戸時代に[[田舎]]の典型とされた[[信州]]の出とする演出が多い。
<!-- 一人称は「おら」の場合が多い。頭が回り、おまけに弁の立つ知恵者。あまりなめてかかると、かえってえらい目にあうことが多い。村にいた時分は芝居に出ていたららしく、「代役」として舞台に出て大失敗をやらかした事も。商家の、旧弊でせせこましい習俗をニヒルに茶化し、あざ笑う一種の批判者として登場している。何のかんのと言いつつ、主への忠誠は非常に高い。 -->
<!-- === 職業 ===
【性格】の項でも書いたが、商家のご飯たきが仕事


一人称は「おら」。性格は朴訥で、頭がぶく、気が利かない。一方で辛抱強くまじめな性格で、主人には忠実でもあり、「奉公人が三日たたないうちに逃げ出す」という人使いの荒い主人に3年間勤め通す<ref name="b"/>。
ただし、「言われればなんでもこなす」のがモットーのようで、主に「飯炊きだけやっていればいい」と言われたときはこんな言葉で反論している。


地元では村芝居の人気役者だったり、村相撲の強豪だったりする。お洒落をするときは手織り木綿の羽織を着て、自慢の熊の皮のたばこいれを持つ([[木乃伊取り]])。
「仮にここな家へ泥棒が入って、暴れたとき俺ぁ飯炊きだから、飯を炊くために台所にはいつくばっているわけにはいかんべ?」

<!-- 頭が回り、おまけに弁の立つ知恵者。あまりなめてかかると、かえってえらい目にあうことが多い。村にいた時分は芝居に出ていたららしく、「代役」として舞台に出て大失敗をやらかした事も。商家の、旧弊でせせこましい習俗をニヒルに茶化し、あざ笑う一種の批判者として登場している -->
<!-- 【性格】の項でも書いたが、商家のご飯たきが仕事

ただし、「言われればなんでもこなす」のがモットーのようで、主に「飯炊きだけやっていればいい」と言われたときはこんな言葉で反論している。


「仮にここな家へ泥棒が入って、暴れたとき俺ぁ飯炊きだから、飯を炊くために台所にはいつくばっているわけにはいかんべ?」-->
=== 家族 ===
* 実家は[[信州]]。
* 田舎の分限者(金持ち)の二・三男坊であり、精神修養のために江戸へ来ている。-->


== 主な登場作品 ==
== 主な登場作品 ==
27行目: 26行目:
*『[[化け物使い]]』<ref name="c"/>:凄まじく人使いの荒い隠居のところへ奉公する。
*『[[化け物使い]]』<ref name="c"/>:凄まじく人使いの荒い隠居のところへ奉公する。
*『[[一つ穴]]』<ref name="c"/>::主の浮気を手伝わされ、主のかみさんに攻め立てられる。
*『[[一つ穴]]』<ref name="c"/>::主の浮気を手伝わされ、主のかみさんに攻め立てられる。
*『[[木乃伊取り]]』<ref name="c"/>:遊郭に入り浸って帰ってこない若旦那を、権助が連れもどしに行く。
*『和歌三神』<ref name="c"/>:主と雪見に出かける。
*『和歌三神』<ref name="c"/>:主と雪見に出かける。
<!--=== 脇役として登場する噺 ===
<!--=== 脇役として登場する噺 ===

2015年1月11日 (日) 12:19時点における版

権助(ごんすけ)は、架空の人物名。小僧の定吉と並ぶ、古典落語に登場する奉公人のキャラクターである。主に江戸落語で登場する[1]

元々「権助」という名前は個人名というより、地方出身の商家の使用人、特に飯炊き[2]の総称で、職業名を示す普通名詞だった。落語に出てくる権助も、多くは地方から江戸に上京してきた田舎者で、奉公先で飯炊きや、下男をしている。

プロフィール

田舎者のステレオタイプとして描かれる。江戸時代に田舎の典型とされた信州の出とする演出が多い。

一人称は「おら」。性格は朴訥で、頭がにぶく、気が利かない。一方で辛抱強くまじめな性格で、主人には忠実でもあり、「奉公人が三日たたないうちに逃げ出す」という人使いの荒い主人に3年間勤め通す[3]

地元では村芝居の人気役者だったり、村相撲の強豪だったりする。お洒落をするときは手織り木綿の羽織を着て、自慢の熊の皮のたばこいれを持つ(木乃伊取り)。


主な登場作品

  • 権助芝居[1]:芝居の代役を頼まれ、おかしな演技で大暴れ。
  • 権助魚[4]:浮気をしている主に意見をするが、結局は浮気の片棒を担がされてしまう。
  • 権助提灯[4]:浮気旦那の提灯持ちを勤める。
  • 蒟蒻問答[4]:八五郎と競演。八五郎が坊主を勤めることになったお寺の下男を勤める。
  • しの字嫌い[3]:生意気な性格を矯正しようと思い立った、岩田の隠居と知恵比べ。
  • 化け物使い[4]:凄まじく人使いの荒い隠居のところへ奉公する。
  • 一つ穴[4]::主の浮気を手伝わされ、主のかみさんに攻め立てられる。
  • 木乃伊取り[4]:遊郭に入り浸って帰ってこない若旦那を、権助が連れもどしに行く。
  • 『和歌三神』[4]:主と雪見に出かける。
  • 王子の幇間[5]:幇間の平助に隠しておきたかった過去を暴露され、思わず奴さんの頭をポカポカと叩く。
  • かつぎや[4]:超極端な「縁起担ぎ」である旦那に、物騒な事ばかり連呼して怒らせてしまう。
  • 宗論[4]:「浄土真宗」の信者である主と、「キリスト教」信者である若旦那の親子喧嘩に割って入る。
  • 味噌蔵[4]:「ケチの標本」のような赤螺屋(あかにしや)ケチ兵衛という人に仕えている。

脚注

  1. ^ a b 『落語古典語典』 94頁。
  2. ^ 『落語国・紳士録』 171頁。
  3. ^ a b 『落語人物事典 上』 179頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j 『落語登場人物辞典』 68頁。
  5. ^ 『落語人物事典 上』 178頁。

参考文献