「水中文化遺産保護条約」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m →‎概要: リダイレクト回避
RJANKA (会話 | 投稿記録)
3行目: 3行目:


== 概要 ==
== 概要 ==
世界の海には300万隻の沈没船が沈んでいるといわれる。1960年代以降、スクーバ式潜水の普及とともに水中考古学が盛んになった <ref>木村淳 2006「水中考古学発展への模索:世界の水中考古学研究との比較を通じて」『考古学研究』53-1</ref>。同時に遺物の無秩序な引き揚げが問題となる。近年では水中探査技術の発展とともに[[トレジャーハンター]]が[[海洋サルベージ]]を行って沈没船からの組織的な遺物の引き揚げ、オークションなどを利用した大規模な遺物売買が活発になった。トレジャーハンターは科学的調査は行わずに水中文化遺産を破壊して金銭的価値のあるものだけを収集していたため、こうした行為に対する国際的な非難が高まったが、これを規制する[[国際法]]は長らく存在しなかった<ref name="suichuu">{{Cite journal|和書
世界の海には300万隻の沈没船が沈んでいるといわれる。1960年代以降、[[スクーバダイビング|スクーバ式潜水]]の普及とともに水中考古学が盛んになった <ref>木村淳 2006「水中考古学発展への模索:世界の水中考古学研究との比較を通じて」『考古学研究』53-1</ref>。同時に遺物の無秩序な引き揚げが問題となる。近年では水中探査技術の発展とともに[[トレジャーハンター]]が[[海洋サルベージ]]を行って沈没船からの組織的な遺物の引き揚げ、オークションなどを利用した大規模な遺物売買が活発になった。トレジャーハンターは科学的調査は行わずに水中文化遺産を破壊して金銭的価値のあるものだけを収集していたため、こうした行為に対する国際的な非難が高まったが、これを規制する[[国際法]]は長らく存在しなかった<ref name="suichuu">{{Cite journal|和書
|author=小山佳枝
|author=小山佳枝
|authorlink=小山佳枝
|authorlink=小山佳枝

2014年10月3日 (金) 03:05時点における版

第二次世界大戦中に紅海で沈没したイギリスの軍用貨物船ティスルゴーム

水中文化遺産の保護に関する条約(水中文化遺産保護条約 すいちゅうぶんかいさんほごじょうやく、Convention on the Protection of the Underwater Cultural Heritage)は、2001年の国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)総会で採択された、沈没船海底遺跡などの水中文化遺産の保護を目的とした条約である。批准国の数が所定の数に達し、2009年1月より発効された。

概要

世界の海には300万隻の沈没船が沈んでいるといわれる。1960年代以降、スクーバ式潜水の普及とともに水中考古学が盛んになった [1]。同時に遺物の無秩序な引き揚げが問題となる。近年では水中探査技術の発展とともにトレジャーハンター海洋サルベージを行って沈没船からの組織的な遺物の引き揚げ、オークションなどを利用した大規模な遺物売買が活発になった。トレジャーハンターは科学的調査は行わずに水中文化遺産を破壊して金銭的価値のあるものだけを収集していたため、こうした行為に対する国際的な非難が高まったが、これを規制する国際法は長らく存在しなかった[2]

1982年に国連海洋法条約が採択され、1994年に発効し、水中文化遺産についても領海内での無断調査の禁止、領海外でも当該文化遺産の起源を有する国への配慮が盛り込まれた。しかし、規制が不十分であったためトレジャーハンターの活動は続けられた。日本では水中文化遺産については文化財保護法埋蔵文化財に関する規定が適用されるとされるが、明確な規定はない[3]。現行法は領海内でしか適用されず、排他的経済水域大陸棚における水中文化遺産の保護については特別の定めは存在しない[2]

こうした問題に対処するため、2001年の第31回ユネスコ総会で水中文化遺産保護条約が採択された。この条約では、少なくとも100年間水中にある文化遺産水中文化遺産と定義して保護の対象とし、水中文化遺産の商業目的による利用の禁止、保護に関しては現状での保全を優先とすること、専門家による調査の徹底などを定めている。また、領海、排他的経済水域、深海底などの区域ごとに保護措置を規定している[2]

水中文化遺産保護条約の発効には20か国以上の批准が条件となっており[2]、2008年10月段階で批准国数が規定に達し、2009年1月にユネスコ文化遺産関連の5番目の条約として発効した[4]。しかし、アメリカ合衆国、イギリス、日本などの主要国は批准には至っていない。この理由として、条約が排他的経済水域の管轄権に関して沿岸国に与えている権限が強すぎる点などがあげられている。

脚注

  1. ^ 木村淳 2006「水中考古学発展への模索:世界の水中考古学研究との比較を通じて」『考古学研究』53-1
  2. ^ a b c d 小山佳枝水中文化遺産の法的保護」『Ship & Ocean Newsletter』第98号、海洋政策研究財団、2004年9月、2009年11月23日閲覧 
  3. ^ 野上建紀 2004「海底遺跡における発掘調査手続きについて」『NEWSLETTER』18 九州・沖縄水中考古学協会
  4. ^ 木村淳 2009「国内水中遺跡の保護と管理,文化遺産としての問題」『日々の考古学2:東海大学考古学専攻開設30周年記念論集』

関連項目

外部リンク