トレジャーハンター
トレジャーハンター (英: Treasure hunter)は、財宝を探索する人。
概要[編集]
海(沈没船)や山・廃墟・遺跡など、主に人の手の入ることのない場所に赴き、遺された「財宝」を探す、探し出す(トレジャーハント、もしくはトレジャーハンティング)ことをおもな目的とする。探索対象となる「財宝」は黄金や宝石の遺物などといった物であるが、著名な人物の遺体[1][2][3]などといったものも含まれる。アメリカやイギリスなどでは、トレジャーハントのみで生計を立てるプロのトレジャーハンターも存在する[4][5][6]。
また、これらのイメージから派生して、町や家にあるがらくたなどの中から価値のある品(骨董品・希少価値の高いものなど)を探し出す人をトレジャーハンターと呼ぶこともある。また近年ではグーグル・アースなどを使用し財宝を発見するトレジャーハンターも存在する。
各国のトレジャーハンティング[編集]
各国のトレジャーハンティング(宝探し)について解説する。
アメリカ[編集]
アメリカのフロリダ州には、数百年前に財宝を積んだまま沈没したスペインの船が存在し、そうした船の財宝を探すトレジャーハンターが存在する。そういった人々の中には、発見した財宝を収集家などに売却して、さらに宝探しを続ける人もいる[7]。
イギリス[編集]
イギリスでは、趣味として宝探しをする人が地中に隠されていた財宝を発見することがある[8]。イギリスで発見される遺物の90%がアマチュアのトレジャーハンターによって発見されていて、こうした一般の人々による活動は「ランド・フィッシング」と呼ばれている[9]。
カンボジア[編集]
カンボジアのジャングルには財政難や遺跡が森のあちこちに点在しているなどの理由で、地表に放置されたままの遺跡が数多く存在する。そうした遺跡を探索するトレジャーハンターが存在する[10]。
発見物の利権[編集]
財宝を発見した場合、発見した場所によっては法律的な所有権が絡んでくる。
日本国内の場合[編集]
地下に埋められた財宝を発掘した場合には、民法第241条「埋蔵物の発見」に基づいて、発掘した財宝は遺失物扱いとなり、警察に速やかに届け出なければならない。通常の場合とは違い6か月間、所有者が現れるのを待ち、もし現れなかった場合には、発掘した土地の地主との折半になる。自分の土地の場合は、すべて自分のものとなる[11]。1963年(昭和38年)、東京都中央区新川の日清製油本社ビルの改築工事現場から江戸時代の金貨が大量に発見された事例では、もともと当地に屋敷を構えていた豪商鹿島清兵衛が埋めたことが分かり子孫に返還された。
なお、2019年現在日本国内において道路工事などで偶然小判等が発見された例はあるが、いわゆる『埋蔵金』を発見したトレジャーハンターは存在しない[12]。
海中で発見した場合はまた異なり、「水難救護法」が適用される。こちらの届け出先は警察ではなく、沿岸部の各市町村となる。財宝が剥き出しのままの場合には6か月間、沈没船などの船内にあった場合には1年間、所有者が現れるのを待ち、現れなかった場合にはすべてが発見者のものとなる。また、もし現れた場合でも、所有者は財宝の価値の3分の1に相当する金額を発見者に支払うことになっている。
日本国外の場合[編集]
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- イギリス
イギリスで財宝を発見した場合は、発見時から14日以内にそれを国に提出する必要がある[9]。制作されてから300年以上が経過している黄金や銀のアーティファクトが財宝と定義され王室の所有物になるが、財宝を売却した値段と同額の補償金が支払われる[9]。一般の土地で発見者と地主が別の場合は、発見者と地主とで補償金を分け合うことになり、黄金や銀ではない遺物は王室の物にはならずに競売に掛けられることもある[9][註 1]。スコットランドでは、黄金や銀以外の材料で制作された物、制作されてから300年未満の物も対象になる[13]。
- トルコ
トルコ国内で宝探しをする場合は、文化観光省の責任部署から発掘許可をもらう必要がある[14][註 2]。遺物が発見された場合、その発見者は、3日以内に博物館あるいは政府の関係機関に届け出を出さなければいけない[14]。自分の土地ではない場所や国有地などで遺物を発見した場合は、正式に届け出がなされていれば、政府から報奨金が渡される[14]。金額はその遺物の価値を元に査定される[14]。自分の土地で遺物を発見し、なおかつ正式に届け出がなされていた場合には、政府が発見者からその遺物を買い取る[14][註 3][註 4]。
沈没船サルベージと法整備の問題[編集]
世界的には沈没船や海底遺跡の海洋サルベージによるトレジャーハンティングが、本格的に行われている[16]。こうした行為は、本来は国家が管理するべき歴史的に貴重な水中文化遺産を私的に売買しているもので、遺産保護の観点から問題視されている。船内の財宝を回収する際に、船体が損傷する危険性や、水中文化遺産である沈没船を元の位置に保持・保存する必要性についても、各国政府や海洋考古学者・歴史研究家の間から懸念の声があがっている。
こうした問題に対処するため、2001年のユネスコ総会にて水中文化遺産保護条約が採択され、2009年1月より発効された[17]。しかしアメリカ合衆国・イギリス・日本などの批准には至っていない[17]。
近年では上記のような法整備や批判の声もあってか、沈没船が沈む領海の政府に許可を受けてからサルベージするケースが多くなっているが、それでもなお政府に無断で領海内の沈没船から財宝を盗掘したとして、トレジャーハンターが逮捕される事件も起こっている[18]。
トレジャーハンターの一覧[編集]
- メル・フィッシャー - スペインの沈没船「アトーチャ号」から、約4億ドル相当の財宝をサルベージした。
- 八重野充弘 - 日本トレジャーハンティングクラブ会長。長年にわたり日本国内または国外の埋蔵金、トレジャーハンティングに関わる歴史、伝承、また実際に発掘などの経験等を執筆し、それらは出版されている。
- ウィリアム・フィップス-17世紀のトレジャーハンター。沈没船の財宝を引き揚げたことでナイトの称号を得た。
- マイケル・ハッチャー- 沈没したオランダの商船や中国船を発見し、黄金や何十万点もの中国製陶磁器などをサルベージした[19]。彼は「世界で最も有能な海洋探検家」「最も成功したトレジャーハンター」などと表現される[19]。
- デレク・マクレナン(Derek McLennan)2014年にスコットランドでバイキングの埋蔵財宝を発見した[20]。マクレナンは他にも複数の財宝を発見しており、その総額は4億5000万円に上る[21]。
脚註[編集]
註釈[編集]
出典[編集]
- ^ Fell's Complete Guide to Buried Treasure, Land and Sea Author: Harry Earl Rieseberg, Publisher: F. Fell, 1970, ISBN 081190184X, 9780811901840, Length: 235 pages
- ^ 本当に見つかるの? トレジャーハンターが海底に沈むビンラディンの遺体を探し始める 2015年 3月21日閲覧
- ^ 【鈍機翁のため息】375 間奏IV 海賊ドレークと聖ヤコブ産経ニュース2017年1月26日閲覧
- ^ トレジャーハンティングとは - ダイビング用語 Weblio辞書2017年1月閲覧
- ^ Google Earthと金属探知機を駆使して地中の財宝を探すハンター集団「Weekend Wanderers」
- ^ Google Earth と金属探知器で宝探し
- ^ 18世紀の沈没船から金貨48枚発見、2千万円相当2016年9月10日閲覧
- ^ 地中に眠る騎士の財宝 2016年9月10日閲覧
- ^ a b c d e 発掘した財宝は誰のもの? 英米の違い2016年9月10日閲覧
- ^ 次を見据えるカンボジア:時事ドットコム2016年9月10日閲覧
- ^ 第180条~263条 - 行政書士試験対策講座 合格ファーム 2015年10月28日閲覧
- ^ 「自分の能力、その全てを振り絞って挑戦するから面白い」45年間まだ見ぬ財宝を探す、トレジャーハンター・八重野充弘さん|クレイジーワーカーの世界
- ^ 発見した財宝は誰のもの?英米の違い2015年4月7日閲覧
- ^ a b c d e f g h i 「Win-Winな解決方法」か「脅迫」かトルコによる国外流出した文化遺産の返還要求に関する最近の動向2017年4月12日閲覧、p6-p7
- ^ a b 同上のPDF、p5
- ^ 「水中文化遺産」~研究活動と経済活動の衝突2015年5月28日閲覧
- ^ a b 日本大百科全書(ニッポニカ)2017年1月閲覧
- ^ Sunken treasure theft arrests - NEWS.com.au(2008年10月7日時点のアーカイブ)
- ^ a b <南海1号>引き揚げ成功秘話!成功の裏に海洋トレジャーハンターの影?―中国レコードチャイナ、2017年4月12日閲覧
- ^ “千年前のバイキングが埋めたお宝が出土、英国”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023年11月27日閲覧。
- ^ https://datazoo.jp/tv/%E8%B2%A1%E5%AE%9D%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E3%81%AF%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F/922945
関連項目[編集]
- オデッセイマリーンエクスプロレイション(沈没船のトレジャーハント専門の株式会社)
- 水中文化遺産保護条約
- 盗掘
- 山下財宝
- de:schatzsuche(中世や近世ヨーロッパでのトレジャーハンターについて記述されている)
- ジオキャッシング - 町中で宝を模した容器を探し出すGPS機能などを利用したゲーム
外部リンク[編集]
- 史上最も深い海底から戦時中の銀貨の大量回収に成功 - 深海サルベージの道を切り拓く(PDF) 2015年10月28日閲覧 - 沈没船のトレジャーハンティングの一例。
- 世の中に存在する“アブない仕事”で一攫千金を狙え2017年1月27日閲覧 - 沈没船の宝探しやマヤの宝探しなどが仕事として紹介されている。