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[[File:Théodore Gérard The new rattle 1875.jpg|thumb|ジェラード・シオドール 『新しいがらがら』 1875年]]
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'''がらがら'''、'''ガラガラ'''は、[[乳幼児]]をあやすために用いられる[[玩具|音響玩具]]である<ref name="玩具事典">多田信作、多田千尋 『世界の玩具事典』 岩崎美術社、1989年、{{全国書誌番号|89049155}}、281-282頁。</ref><ref name=kotobank1>「[http://kotobank.jp/word/%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%8C%E3%82%89?dic=sekaidaihyakka&oid=00134602 がらがら]」 『世界大百科事典』第2版、kotobank(2014年6月22日閲覧)</ref>。一般に柄の付いた円筒状の形をしており、中に球が入っていて、柄を持って振ることで音を出す。振るとがらがら音が鳴るのでこの名がある<ref name=kotobank1/>。保育者が振ることを想定したものと、赤ちゃん自身に握らせることを想定したものと二つのタイプがあり<ref name="玩具事典"/>、後者にはやわらかい素材で作られたリング状のもの、おしゃぶりと一体化したものなども含まれ、「おにぎり」とも呼ばれる<ref name=kotobank1/><ref name=saitou1>齋藤良輔 『日本人形玩具事典』 東京堂出版 1997年 ISBN 4-490-10477-4 89-90頁</ref>。
[[File:Rattle in the shape of animal.jpg|thumb|子豚の形をした古代ギリシャの土製がらがら(紀元前600年-480年頃)]]
'''がらがら'''、'''ガラガラ'''は、[[乳幼児]]をあやすために用いられる[[玩具|音響玩具]]である<ref name="玩具事典">多田信作、多田千尋 『世界の玩具事典』 岩崎美術社、1989年、{{全国書誌番号|89049155}}、281-282頁。</ref><ref name=kotobank1>「[http://kotobank.jp/word/%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%8C%E3%82%89?dic=sekaidaihyakka&oid=00134602 がらがら]」 『世界大百科事典』第2版、kotobank(2014年6月22日閲覧)</ref>。一般に柄の付いた円筒状の形をしており、中に球が入っていて、柄を持って振ることで音を出す。振るとがらがら音が鳴るのでこの名がある<ref name=kotobank1/>。保育者が振ることを想定したものと、赤ちゃん自身に握らせることを想定したものと二つのタイプがあり<ref name="玩具事典"/>、後者にはやわらかい素材で作られたリング状のもの、おしゃぶりと一体化したものなども含まれ、「おにぎり」とも呼ばれる<ref name=kotobank1/><ref name=saitou1>齋藤良輔 『日本人形玩具事典』 東京堂出版 1997年 ISBN 4-490-10477-4 89頁</ref>。


「がらがら」は世界中で広く見られる玩具である<ref name="玩具事典"/>。素材はプラスチックや木製のものが多いが、[[メキシコ]]には[[さとうきび]]の茎で編まれたがらがらがあり、[[エスキモー]]は[[アザラシ]]の皮を使ってがらがらを作る<ref name="玩具事典"/>。日本にも張子を使った伝統的ながらがらもあるが、[[でんでん太鼓]]のような郷土玩具もがらがらの一種であると言える<ref name="玩具事典"/>。
「がらがら」は世界中で広く見られる玩具である<ref name="玩具事典"/>。素材はプラスチックや木製のものが多いが、[[メキシコ]]には[[さとうきび]]の茎で編まれたがらがらがあり、[[エスキモー]]は[[アザラシ]]の皮を使ってがらがらを作る<ref name="玩具事典"/>。日本にも張子を使った伝統的ながらがらもあるが、[[でんでん太鼓]]のような郷土玩具もがらがらの一種であると言える<ref name="玩具事典"/>。
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== 歴史 ==
== 歴史 ==
=== 西洋 ===
=== 西洋 ===
[[File:Rattle in the shape of animal.jpg|thumb|子豚の形をした古代ギリシャの土製がらがら(紀元前600年-480年頃)]]
楽器としてのがらがらの類は古代において呪術的な目的で用いられていたものであるが、子供をあやす目的で作られたものとしては[[古代ギリシャ]]・[[古代ローマ|ローマ]]時代から例が見られ、この頃には動物を象った土製のがらがらが作られている。特に古代ギリシャ初期においては[[豚]]を象ったがらがらが多く見られるが、これは当時、子豚が幼児の健康を守るという信仰がギリシャにあり、この信仰が玩具に反映したものと見られる<ref name="玩具事典"/>。
楽器としてのがらがらの類は古代において呪術的な目的で用いられていたものであるが、子供をあやす目的で作られたものとしては[[古代ギリシャ]]・[[古代ローマ|ローマ]]時代から例が見られ、この頃には動物を象った土製のがらがらが作られている。特に古代ギリシャ初期においては[[豚]]を象ったがらがらが多く見られるが、これは当時、子豚が幼児の健康を守るという信仰がギリシャにあり、この信仰が玩具に反映したものと見られる<ref name="玩具事典"/>。


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=== 日本 ===
=== 日本 ===
日本では[[室町時代]]、京の御所の女官たちが[[張子|紙張子]]の文箱を手慰みに作り、それに小物を入れて振ると音がしたことからはじまったとされている<ref name="玩具事典"/><ref name=kotobank1/>。のちには雀、犬、兎といったさまざまな鳥獣を象った紙製のがらがらが作られた。当時は馬や兎の皮を使った[[でんでん太鼓]]も御殿玩具として作られ「ばたばた」と呼ばれていた。この「ばたばた」は[[天然痘]]でできたあばたを取り除くという信仰もあった<ref name="玩具事典"/>。[[江戸時代]]には張子のほか、[[曲物]]の胴に柄をつけ中に小石を入れたもの、[[桐]]の木を円く挽いて[[土鈴]]をいれたものなども作られている<ref name=kotobank1/>。また江戸時代の随筆集『[[翁草]]』や『[[武林隠見録]]』には、[[政商|御用商人]]の[[河村瑞賢]]が三両の[[小判]]に刀で穴をあけ、そこに[[紙捻り]]を通して即興のがらがらを作り、遊び道具として子供に与えたという逸話が載っている<ref name=saitou1/>。
日本では[[室町時代]]、京の御所の女官たちが[[張子|紙張子]]の文箱を手慰みに作り、それに小物を入れて振ると音がしたことからはじまったとされている<ref name="玩具事典"/><ref name=kotobank1/>。のちには雀、犬、兎といったさまざまな鳥獣を象った紙製のがらがらが作られた。当時は馬や兎の皮を使った[[でんでん太鼓]]も御殿玩具として作られ「ばたばた」と呼ばれていた。この「ばたばた」は[[天然痘]]でできたあばたを取り除くという信仰もあった<ref name="玩具事典"/>。
[[江戸時代]]には張子のほか、[[曲物]]の胴に柄をつけ中に小石を入れたもの、[[桐]]の木を円く挽いて[[土鈴]]をいれたものなども作られている<ref name=kotobank1/>。また江戸時代の随筆集『[[翁草]]』や『[[武林隠見録]]』には、[[政商|御用商人]]の[[河村瑞賢]]が三両の[[小判]]に刀で穴をあけ、そこに[[紙捻り]]を通して即興のがらがらを作り、遊び道具として子供に与えたという逸話が載っている<ref name=saitou1/>。ほかに年始の[[年玉]]として桐箱に扇形の棒状のものを入れてがらがらとして配ったり、手作りの玩具として小板を紐で繋いで指で鳴らすものなども作られていた。当時はこうした音のなる玩具を「がらがら」と総称していたようである<ref name=saitou1/>。


[[明治]]・[[大正時代]]になると、がらがらにもヴァリエーションが増える<ref name=saitou2>齋藤良輔 『日本人形玩具事典』 東京堂出版 1997年 ISBN 4-490-10477-4 90頁</ref>。まず明治時代には、海外から[[ブリキ]]が輸入されいブリキ製のがらがらがられるようにな<ref name=saitou1/>。明治30年頃には、フケを取る道具材料使われた竹の廃物素材とした、中に小石たがらがらがられた<ref name=saitou1/>。竹の輪の両面には犬や猫の絵が描かれていた<ref name=saitou1/>。明治33年には「万寿がら」と呼ばれるがらがらが造られた<ref name=saitou1/>。
[[明治時代]]になると海外から[[ブリキ]]が輸入され、ブリキの空き缶を平らして作った一枚がらがら、次ブリキ板2枚を合わせた中に小石を入れたがらがらがられるようになった<ref name=saitou1/>。明治30年頃には、輪の両面ブリキ張り中に小石たがらがらがられており、竹の輪の両面には犬や猫の絵が描かれていた。これはフケを取る道具の材料に使われた竹の廃物を利用したもので、柄の部分は笛になっている<ref name=saitou1/>。明治33年には同様のかたちのものに日の出と鶴亀の絵を配した「万寿がら」と呼ばれるがらがらも作られた<ref name=saitou1/>。


[[日露戦争]]後、日本がらがらは飛躍的にその数増やす<ref name=saitou1/>。明治後期生まれた主ながらがらとて、「笛がら」「面がら」「鈴がら」「風車がら」「首振りがら」「自動がら」「当てがら」「縄跳びがら」「拳がら」などがある<ref name=saitou2/>。
このようなブリキ製のがらがらは[[日露戦争]]後急速に進歩し陶器用塗料使い柄を笛にし「笛がら」、[[仮面]]を二枚組み合わせた形に作った「面ガラ、鈴を使った「鈴がら」、風車状に回転する仕掛けをつけた「風車がら」、胴部につけた首が左右に振れる「首振りがら」、胴部にゼンマイ仕掛けを仕込み回転するようにした「自動がら」、鳥獣の絵を配し、胴体部を回転させてどの絵で止まるか当てるようにできている「当てがら」、同様にじゃんけんの絵を配した「拳がら」など多様な仕掛けをもつらがらが作られていった<ref name=saitou1/>。


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一方で[[セルロイド]]製のがらがらも明治32・33年ころから登場しはじめ、明治40年頃はゼンマイ仕掛けでオルゴールの音を入れたものが流行している<ref name=saitou1/>。セルロイド玩具全盛期である[[大正時代]]になるとこうしたセルロイド製のがらがらが盛んに作られた。大正時代がらがらは音に趣向を凝らしたことに特徴があり、その音によって「ラッパ笛がら」「太鼓がら」「笛入りがら」と呼ばれるがらがらも作られたが、この時期の代表的なものは鈴4個つ優美に作れた「高貴がら」同様に鈴を用い、[[常盤御前]]の被った[[市女笠]]に似せたものを合わせ作られた「常盤がら」であった<ref name=saitou1/>。こらにプラスチック製のものが加わわるのは戦後になっからである<ref name=saitou1/>。


== 出典 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[ラトル]]
*[[ラトル]]
*[[ラチェット]]
*[[ラチェット (楽器)]]
*[[からから煎餅]](がらがら煎餅) - がらがらを菓子化したもの


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2014年7月2日 (水) 21:18時点における版

ジェラード・シオドール 『新しいがらがら』 1875年

がらがらガラガラは、乳幼児をあやすために用いられる音響玩具である[1][2]。一般に柄の付いた円筒状の形をしており、中に球が入っていて、柄を持って振ることで音を出す。振るとがらがら音が鳴るのでこの名がある[2]。保育者が振ることを想定したものと、赤ちゃん自身に握らせることを想定したものと二つのタイプがあり[1]、後者にはやわらかい素材で作られたリング状のもの、おしゃぶりと一体化したものなども含まれ、「おにぎり」とも呼ばれる[2][3]

「がらがら」は世界中で広く見られる玩具である[1]。素材はプラスチックや木製のものが多いが、メキシコにはさとうきびの茎で編まれたがらがらがあり、エスキモーアザラシの皮を使ってがらがらを作る[1]。日本にも張子を使った伝統的ながらがらもあるが、でんでん太鼓のような郷土玩具もがらがらの一種であると言える[1]

歴史

西洋

子豚の形をした古代ギリシャの土製がらがら(紀元前600年-480年頃)

楽器としてのがらがらの類は古代において呪術的な目的で用いられていたものであるが、子供をあやす目的で作られたものとしては古代ギリシャローマ時代から例が見られ、この頃には動物を象った土製のがらがらが作られている。特に古代ギリシャ初期においてはを象ったがらがらが多く見られるが、これは当時、子豚が幼児の健康を守るという信仰がギリシャにあり、この信仰が玩具に反映したものと見られる[1]

がらがらは中世ヨーロッパにおいても人気のある玩具であり、フランスでは専用のメーカーがあったといわれる。このがらがらの人気は、単に実用的な面ばかりでなく、ガラガラの音が悪霊を追い払い人を守るという信仰が民衆に浸透していたことが背景にあったものと見られる[1]。16世紀には貴族などのための贅沢なつくりのがらがらが登場し、貴族の子供を描いた肖像画などにがらがらがよく描かれた。子供の玩具は素朴なものであるべきとして、珊瑚を使った贅沢ながらがらを批判したルソーの文章も残っている[1]

「がらがら」が前述のような二つのタイプに分かれるのは、子供の成長・発達の視点から玩具を評価するようになった18世紀中ごろからで、それまでの「がらがら」は主として養育者が使うことを想定して作られていたものと見られる。イギリスではこうしたがらがらは、ふだん母親や保母の帯飾りの鎖にぶら下げられていたものらしい[1]

日本

日本では室町時代、京の御所の女官たちが紙張子の文箱を手慰みに作り、それに小物を入れて振ると音がしたことからはじまったとされている[1][2]。のちには雀、犬、兎といったさまざまな鳥獣を象った紙製のがらがらが作られた。当時は馬や兎の皮を使ったでんでん太鼓も御殿玩具として作られ「ばたばた」と呼ばれていた。この「ばたばた」は天然痘でできたあばたを取り除くという信仰もあった[1]

江戸時代には張子のほか、曲物の胴に柄をつけ中に小石を入れたもの、の木を円く挽いて土鈴をいれたものなども作られている[2]。また江戸時代の随筆集『翁草』や『武林隠見録』には、御用商人河村瑞賢が三両の小判に刀で穴をあけ、そこに紙捻りを通して即興のがらがらを作り、遊び道具として子供に与えたという逸話が載っている[3]。ほかに年始の年玉として桐箱に扇形の棒状のものを入れてがらがらとして配ったり、手作りの玩具として小板を紐で繋いで指で鳴らすものなども作られていた。当時はこうした音のなる玩具を「がらがら」と総称していたようである[3]

明治時代になると海外からブリキが輸入され、ブリキの空き缶を平らにして作った一枚がらがら、次いでブリキ板2枚を合わせた中に小石を入れたがらがらが作られるようになった[3]。明治30年頃には、竹の輪の両面にブリキを張り中に小石を入れたがらがらが作られており、竹の輪の両面には犬や猫の絵が描かれていた。これはフケを取る道具の材料に使われた竹の廃物を利用したもので、柄の部分は笛になっている[3]。明治33年には同様のかたちのものに日の出と鶴亀の絵を配した「万寿がら」と呼ばれるがらがらも作られた[3]

このようなブリキ製のがらがらは日露戦争後急速に進歩し、陶器用の塗料を使い柄を笛にした「笛がら」、仮面を二枚組み合わせた形に作った「面ガラ」、鈴を使った「鈴がら」、風車状に回転する仕掛けをつけた「風車がら」、胴部につけた首が左右に振れる「首振りがら」、胴部にゼンマイ仕掛けを仕込み回転するようにした「自動がら」、鳥獣の絵を配し、胴体部を回転させてどの絵で止まるか当てるようにできている「当てがら」、同様にじゃんけんの絵を配した「拳がら」など多様な仕掛けをもつがらがらが作られていった[3]

一方でセルロイド製のがらがらも明治32・33年ころから登場しはじめ、明治40年頃にはゼンマイ仕掛けでオルゴールの音を入れたものが流行している[3]。セルロイド玩具の全盛期である大正時代になるとこうしたセルロイド製のがらがらが盛んに作られた。大正時代のがらがらは音に趣向を凝らしたことに特徴があり、その音によって「ラッパ笛がら」「太鼓がら」「笛入りがら」と呼ばれるがらがらも作られたが、この時期の代表的なものは鈴を4個つけて優美に作られた「高貴がら」、同様に鈴を用い、常盤御前の被った市女笠に似せたものを合わせて作られた「常盤がら」であった[3]。これらにプラスチック製のものが加わわるのは戦後になってからである[3]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 多田信作、多田千尋 『世界の玩具事典』 岩崎美術社、1989年、全国書誌番号:89049155、281-282頁。
  2. ^ a b c d e がらがら」 『世界大百科事典』第2版、kotobank(2014年6月22日閲覧)
  3. ^ a b c d e f g h i j 齋藤良輔 『日本人形玩具事典』 東京堂出版 1997年 ISBN 4-490-10477-4 89-90頁

関連項目