「詩曲 (ショーソン)」の版間の差分

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'''詩曲 作品25'''は、[[エルネスト・ショーソン]]が作曲した[[ヴァイオリン]]と[[オーケストラ|管弦楽]](もしくは[[ピアノ]])のための作品。「'''ポエム(またはポエーム'''」とも呼ばれる。ショーソンの作品の中ではよく知られた作品で、彼の代表作である。
'''詩曲'''(しきょく、''Poème'')作品25は、[[エルネスト・ショーソン]]が作曲した[[ヴァイオリン]]と[[オーケストラ|管弦楽]](もしくは[[ピアノ]])のための作品。「'''ポエム'''(または'''ポエーム'''」とも呼ばれる。ショーソンの作品の中ではよく知られた作品で、代表作である。


==概要==
== 概要 ==
このヴァイオリンと管弦楽のための作品は、ショーソンが[[1899年]]に[[自転車]][[事故]]で亡くなる3年前の[[1896年]]に作曲され、同じ時期に完成された。もともとは、[[ロシア]]の[[作家]][[イワン・ツルゲーネフ|ツルゲーネフ]]がルネサンス・イタリアを舞台として書いた[[小説]]『愛の勝利の歌(または『勝ち誇る愛の歌』)に基づく[[交響詩]]として着想されたが、ショーソンはこの小説に漂う神秘的な物語性を絶対音楽的な理念にまで高め、標題を取り去って普遍的な「詩曲」として発表した。
このヴァイオリンと管弦楽のための作品は、ショーソンが[[1899年]]に自転車事故で亡くなる3年前の[[1896年]]に作曲され、同じ時期に完成された。もともとは、[[ロシア]]の作家[[イワン・ツルゲーネフ|ツルゲーネフ]]が[[ルネサンス]]・イタリアを舞台として書いた小説『愛の勝利の歌(または『勝ち誇る愛の歌』)に基づく[[交響詩]]として着想されたが、ショーソンはこの小説に漂う神秘的な物語性を[[絶対音楽]]的な理念にまで高め、標題を取り去って普遍的な「詩曲」として発表した。


初演は同年[[4月4日]](12月であったとする説もある)に、[[パリ]]で[[ウジェーヌ・イザイ]]によって行われた。
初演は同年[[4月4日]](12月であったとする説もある)に、[[パリ]]で[[ウジェーヌ・イザイ]]によって行われた。


自筆譜はその後イザイが死に際して[[フリッツ・クライスラー]]へ寄贈し、現在[[アメリカ国会図書館]]に所蔵されている。
自筆譜はその後イザイが死に際して[[フリッツ・クライスラー]]へ寄贈し、現在[[アメリカ国会図書館]]に所蔵されている。


==編成==
== 編成 ==
独奏ヴァイオリン、[[フルート]]2、[[オーボエ]]2、[[クラリネット]]2、[[ファゴット]]2、[[ホルン]]4、[[トランペット]]2、[[トロンボーン]]3、[[チューバ]]、[[ティンパニ]]、[[ハープ]]、[[弦楽合奏|弦五部]]
独奏ヴァイオリン、[[フルート]]2、[[オーボエ]]2、[[クラリネット]]2、[[ファゴット]]2、[[ホルン]]4、[[トランペット]]2、[[トロンボーン]]3、[[チューバ]]、[[ティンパニ]]、[[ハープ]]、[[弦楽合奏|弦五部]]


==構成==
== 構成 ==
*レント・エ・ミステリオーソ-モルト・アニマート-アニマート-ポコ・レント-ポコ・メノ・レント-アレグロ-テンポ・プリモ-トランクイッロ
*レント・エ・ミステリオーソ-モルト・アニマート-アニマート-ポコ・レント-ポコ・メノ・レント-アレグロ-テンポ・プリモ-トランクイッロ


緩やかで神秘的な序奏で始まり、独奏ヴァイオリンが典雅で瞑想的な主要主題を静かに歌う。やがてほの暗い情熱に満ちたクライマックスが築かれたのちに沈静化し、余韻のうちに終わる。演奏時間は約16分。全体は[[変ホ短調]]である。フラットの多い曲は弦楽器には通常不向きであるが、逆に全体をくすんだ響きにするにより、後半で現れる半音上の[[ホ短調]]つまりシャープ系であり弦楽器の得意な調に移調された主題が効果的に響く。最後は[[同主調]]の[[変ホ長調]]で終わる。
緩やかで神秘的な序奏で始まり、独奏ヴァイオリンが典雅で瞑想的な主要主題を静かに歌う。やがてほの暗い情熱に満ちたクライマックスが築かれたのちに沈静化し、余韻のうちに終わる。演奏時間は約16分。全体は[[変ホ短調]]である。[[フラット (記号)|フラット]]の多い曲は弦楽器には通常不向きであるが、逆に全体をくすんだ響きにすることにより、後半で現れる半音上の[[ホ短調]]つまり[[シャープ (記号)|シャープ系]]であり弦楽器の得意な調に移調された主題が効果的に響く。最後は[[同主調]]の[[変ホ長調]]で終わる。


== 楽曲が用いられた作品 ==
== 楽曲が用いられた作品 ==
*小説『[[仮装集団]]([[山崎豊子]]東京体育館で行われたサベーリエフのヴァイオリン演奏会の中で登場する。
*小説『[[仮装集団]]([[山崎豊子]]) - 東京体育館で行われたサベーリエフのヴァイオリン演奏会の中で登場する。


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2014年2月15日 (土) 13:18時点における版

詩曲(しきょく、Poème)作品25は、エルネスト・ショーソンが作曲したヴァイオリン管弦楽(もしくはピアノ)のための作品。「ポエム(またはポエーム)」とも呼ばれる。ショーソンの作品の中ではよく知られた作品で、代表作である。

概要

このヴァイオリンと管弦楽のための作品は、ショーソンが1899年に自転車事故で亡くなる3年前の1896年に作曲され、同じ時期に完成された。もともとは、ロシアの作家ツルゲーネフルネサンス・イタリアを舞台として書いた小説『愛の勝利の歌』(または『勝ち誇る愛の歌』)に基づく交響詩として着想されたが、ショーソンはこの小説に漂う神秘的な物語性を絶対音楽的な理念にまで高め、標題を取り去って普遍的な「詩曲」として発表した。

初演は同年4月4日(12月であったとする説もある)に、パリウジェーヌ・イザイによって行われた。

自筆譜はその後、イザイが死に際してフリッツ・クライスラーへ寄贈し、現在アメリカ国会図書館に所蔵されている。

編成

独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバティンパニハープ弦五部

構成

  • レント・エ・ミステリオーソ-モルト・アニマート-アニマート-ポコ・レント-ポコ・メノ・レント-アレグロ-テンポ・プリモ-トランクイッロ

緩やかで神秘的な序奏で始まり、独奏ヴァイオリンが典雅で瞑想的な主要主題を静かに歌う。やがてほの暗い情熱に満ちたクライマックスが築かれたのちに沈静化し、余韻のうちに終わる。演奏時間は約16分。全体は変ホ短調である。フラットの多い曲は弦楽器には通常不向きであるが、逆に全体をくすんだ響きにすることにより、後半で現れる半音上のホ短調、つまりシャープ系であり弦楽器の得意な調に移調された主題が効果的に響く。最後は同主調変ホ長調で終わる。

楽曲が用いられた作品

  • 小説『仮装集団』(山崎豊子) - 東京体育館で行われたサベーリエフのヴァイオリン演奏会の中で登場する。

外部リンク