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'''MSX-AUDIO'''(エムエスエックス・オーディオ)は、1986年に発表されたMSXの拡張音源の規格名、もしくはFM音源チップ''Y8950''の名称である<ref name="meioption">「早すぎた迷オプション MSX-AUDIO」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.148-151。</ref>。
'''MSX-AUDIO'''エムエスエックス・オーディオは、1986年に発表されたMSXの拡張音源の規格名、およびFM音源チップ''Y8950''の名称である<ref name="meioption">「早すぎた迷オプション MSX-AUDIO」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.148-151。</ref>。


== YAMAHA Y8950 ==
== YAMAHA Y8950 ==
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チップ表面にMSXロゴが印刷されているが、実際にはMSX以外でも利用されている。
チップ表面にMSXロゴが印刷されているが、実際にはMSX以外でも利用されている。
SNE(シスネット)のサウンドオーケストラV/サウンドオーケストラVSや、UNICA(ユニカサウンド)のUB-1といった[[PC-9801]]用サウンドボード、[[MZ-2861]]用のADPCMボードMZ-1E35、アーケード基板などにも搭載された実績がある。
SNE(シスネットのサウンドオーケストラV/サウンドオーケストラVSや、UNICA(ユニカサウンド)のUB-1といった[[PC-9801]]用サウンドボード、[[MZ-2861]]用のADPCMボードMZ-1E35、アーケード基板などにも搭載された実績がある。


基本的な操作法は他の4オペレータFM音源と差違はないが、「サスティン・レベル」<ref>音量の減衰速度が「ディケイ」値から「サスティン」値に切り替わる閾値[[ADSR]]も参照</ref>が存在しない、一部パラメータの[[bit]]が少なくなっている、などの違いがある。後発のMSX-MUSIC([[FM-PAC]])で使われている''[[YM2413]]''(OPLL)より制限が緩く、演奏の自由度は高いが、音色の質自体はほぼ同等である。詳しくはこの項目、および、FM-PACで挙げられているYAMAHAの参考文献を参照。
基本的な操作法は他の4オペレータFM音源と差違はないが、音量の減衰速度が「ディケイ」値から「サスティン」値に切り替わる閾値であるサスティン・レベル」が存在しない、一部パラメータの[[bit]]が少なくなっている、などの違いがある。後発のMSX-MUSIC([[FM-PAC]])で使われている''[[YM2413]]''(OPLL)より制限が緩く、演奏の自由度は高いが、音色の質自体はほぼ同等である。詳しくはこの項目、および、FM-PACで挙げられているYAMAHAの参考文献を参照。


ADPCMはMSX-AUDIO規格による外付けではなく、Y8950が内包している機能。1.8KHz - 16KHzで[[サンプリング]]でき、1.8KHz - 50KHzで再生可能で、音階が付けられる。波形メモリとして、最大256KBの[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]を実装可能であるが、必須ではない。データは8bit[[PCM]]であるが、内部では4bit[[ADPCM]]データとして処理される<ref>Y8950 APPLICATION MANUAL(MSX-AUDIO) YAMAHA</ref>。
ADPCMの機能はMSX-AUDIO規格による外付けではなく、Y8950が内包している。1.8KHz - 16KHzで[[サンプリング]]でき、1.8KHz - 50KHzで再生可能で、音階が付けられる。波形メモリとして、最大256KBの[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]を実装可能であるが、必須ではない。データは8bit[[PCM]]であるが、内部では4bit[[ADPCM]]データとして処理される<ref>Y8950 APPLICATION MANUAL(MSX-AUDIO) YAMAHA</ref>。


== MSX-AUDIO ==
== MSX-AUDIO ==
もともとはMSX2の次期規格で標準音源として開発されたもので、MSX-AUDIOというのは規格名である<ref name="nishi">「西和彦Special Interview 次期MSXの全貌 ユビキタスMSXが焦点」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.50-51.</ref>。
もともとはMSX2の次期規格で標準音源として開発されたもので、MSX-AUDIOというのは規格名である<ref name="nishi">「西和彦Special Interview 次期MSXの全貌 ユビキタスMSXが焦点」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.50-51.</ref>。


しかし標準搭載される音源とはならずにMSX2のオプション規格として、規格を発表した[[1986年]]から1年後の[[1987年]]からMSXの[[スロット]]に挿入するカートリッジの形態の周辺機器として発売されたMSX-AUDIOはその値段の高さから日本国内ではほとんど普及せず、その後PCM音源機能などが削除された廉価版の[[FM-PAC|MSX-MUSIC]](YM2413)が普及、事実上の標準音源となった
しかし標準搭載される音源とはならずにMSX2のオプション規格として、カートリッジの形態の周辺機器が、松下電器から FS-CA1 MSX AUDIO UNIT、フィリップスより NMS-1205 Muziekmodule(ミュージックモジュール)、東芝より HX-MU900 MSX MUSIC SYSTEM いう名称で発売された<ref>[http://www.faq.msxnet.org/msxaudio.html The Ultimate MSX FAQ - MSX Audio section]</ref>
[[1987年]]発売の MSX AUDIO UNIT が34,800円なのに対して、[[1988年]]発売の[[MSX-MUSIC|FM Pana Amusement Cartridge]] は7,800円であった<ref name="meioption" /><ref name="nishi" />。


[[1987年]]に松下電器産業(当時)から発売された MSX AUDIO UNIT は34,800円という値段の高さから日本国内ではほとんど普及しなかった。その後PCM音源機能などが削除され[[1988年]]に7,800円で発売された[[FM-PAC|MSX-MUSIC]](YM2413)規格の[[MSX-MUSIC|FM Pana Amusement Cartridge]]が普及、事実上の標準音源となった<ref name="meioption" /><ref name="nishi" />。
よく間違われるが、MSX-AUDIOというのは規格名であり、 MSX AUDIO UNIT というのが松下電器産業(当時)から発売された音源カートリッジの名称である。
松下電器から FS-CA1 MSX AUDIO UNIT、フィリップスより NMS-1205 Muziekmodule(ミュージックモジュール)、東芝より HX-MU900 MSX MUSIC SYSTEM という名称で発売された<ref>[http://www.faq.msxnet.org/msxaudio.html The Ultimate MSX FAQ - MSX Audio section]</ref>。


== FS-CA1 ==
== FS-CA1 ==
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出力端子は[[RCA端子]]が2チャンネル分用意されているが、MSX-AUDIOはモノラル音源であるため、内部では1チャンネルに結線されている。それとは別にPCM録音用[[フォーンプラグ|標準プラグ]]と[[鍵盤]]を接続する端子も用意されている。
出力端子は[[RCA端子]]が2チャンネル分用意されているが、MSX-AUDIOはモノラル音源であるため、内部では1チャンネルに結線されている。それとは別にPCM録音用[[フォーンプラグ|標準プラグ]]と[[鍵盤]]を接続する端子も用意されている。


サンプリングデータを64KBの[[Read Only Memory|ROM]]に18種搭載していたほか、拡張BASICやシンセアプリケーションを内蔵していたが、ROMのサンプリングデータはほとんどが[[効果音]]で(犬や猫の鳴き声、[[ゴルフ]]スイングなど)、楽曲作成に向いた物ではなかった。
サンプリングデータを64KBの[[Read Only Memory|ROM]]に18種搭載していたほか、拡張BASICやシンセアプリケーションを内蔵していたROMのサンプリングデータは犬や猫の鳴き声、[[ゴルフ]]スイングなどほとんどが[[効果音]]で、楽曲作成に向いた物ではなかった。


当時はRAMの価格が高かったためか、価格も34800円と、MSX本体に迫るものとなっている。上述の特異な形状の問題もあり、あまり普及はしなかった<ref name = "gmp" />。
当時はRAMの価格が高かったためか、価格も34800円と、MSX本体に迫るものとなっている。上述の特異な形状の問題もあり、あまり普及はしなかった<ref name = "gmp" />。

2011年2月4日 (金) 06:08時点における版

Y8950

MSX-AUDIO(エムエスエックス・オーディオ)は、1986年に発表されたMSXの拡張音源の規格名、およびFM音源チップY8950の名称である[1]

YAMAHA Y8950

Y8950は2オペレータ、9チャンネル、モノフォニックのFM音源であり、OPLを拡張したものである。オペレータが2つしかないため、オペレータ接続は直列・並列の2種のみである。CSM(複合正弦波モデル)による音声合成機能が存在する[1]

チップ表面にMSXロゴが印刷されているが、実際にはMSX以外でも利用されている。 SNE(シスネット)のサウンドオーケストラV/サウンドオーケストラVSや、UNICA(ユニカサウンド)のUB-1といったPC-9801用サウンドボード、MZ-2861用のADPCMボードMZ-1E35、アーケード基板などにも搭載された実績がある。

基本的な操作法は他の4オペレータFM音源と差違はないが、音量の減衰速度が「ディケイ」値から「サスティン」値に切り替わる閾値である「サスティン・レベル」が存在しない、一部パラメータのbitが少なくなっている、などの違いがある。後発のMSX-MUSIC(FM-PAC)で使われているYM2413(OPLL)より制限が緩く、演奏の自由度は高いが、音色の質自体はほぼ同等である。詳しくはこの項目、および、FM-PACで挙げられているYAMAHAの参考文献を参照。

ADPCMの機能はMSX-AUDIO規格による外付けではなく、Y8950が内包している。1.8KHz - 16KHzでサンプリングでき、1.8KHz - 50KHzで再生可能で、音階が付けられる。波形メモリとして、最大256KBのDRAMを実装可能であるが、必須ではない。データは8bitPCMであるが、内部では4bitADPCMデータとして処理される[2]

MSX-AUDIO

もともとはMSX2の次期規格で標準音源として開発されたもので、MSX-AUDIOというのは規格名である[3]

しかし標準搭載される音源とはならずに、MSX2のオプション規格として、カートリッジの形態の周辺機器が、松下電器から FS-CA1 MSX AUDIO UNIT、フィリップスより NMS-1205 Muziekmodule(ミュージックモジュール)、東芝より HX-MU900 MSX MUSIC SYSTEM という名称で発売された[4]

1987年に松下電器産業(当時)から発売された MSX AUDIO UNIT は34,800円という値段の高さから日本国内ではほとんど普及しなかった。その後PCM音源機能などが削除され1988年に7,800円で発売されたMSX-MUSIC(YM2413)規格のFM Pana Amusement Cartridgeが普及、事実上の標準音源となった[1][3]

FS-CA1

松下電器から発売されたMSX-AUDIOユニットのFS-CA1は、A1コンボシリーズと銘打ったパナソニックの「A1シリーズ」を想定した特異なカートリッジ形状になっているため、機種によっては装着が不可能なこともあった[1][5]

出力端子はRCA端子が2チャンネル分用意されているが、MSX-AUDIOはモノラル音源であるため、内部では1チャンネルに結線されている。それとは別にPCM録音用標準プラグ鍵盤を接続する端子も用意されている。

サンプリングデータを64KBのROMに18種搭載していたほか、拡張BASICやシンセアプリケーションを内蔵していた。ROMのサンプリングデータは、犬や猫の鳴き声、ゴルフスイングなどほとんどが効果音で、楽曲作成に向いた物ではなかった。

当時はRAMの価格が高かったためか、価格も34800円と、MSX本体に迫るものとなっている。上述の特異な形状の問題もあり、あまり普及はしなかった[5]

BASICからのMSX-AUDIOの使用

標準的な使用法は「FM-PAC#BASICからのMSX-MUSICの使用」(MSX-MUSIC)の項目も参照。 なお、プリセットされている音色は、FM音源が65種、PCM音源は18種である[6]

CALL SYNTHE
付属のシンセサイザーアプリケーションを起動する。
CALL AUDIO(3,0,1,1,1)
MSX-MUSICと異なり、左端のパラメータに2か3を指定すると、PCMが使用可能になる。PCMはPLAY #2命令で、FM音源、PSGと同期演奏が可能。
CALL COPY PCM(#n,m)
ROMに搭載されているPCMデータをRAMに転記する。#nは音色番号。
CALL SET PCM
各音色番号ごとに、PCMのパラメータを設定する。
CALL LOAD PCM("FILENAME", #n)
ディスクからPCMデータを読み込む。
CALL SAVE PCM("FILENAME", #n)
ディスクにPCMデータを保存する。

関連リンク

参考文献

  • マイコンBASIC Magazine DELUXE MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラム大全集 1989年 電波新聞社
  • Y8950 APPLICATION MANUAL(MSX-AUDIO) YAMAHA
  • FM音楽館 横川理彦 徳間書店 1989 ISBN 4-19-723969-6

出典

  1. ^ a b c d 「早すぎた迷オプション MSX-AUDIO」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.148-151。
  2. ^ Y8950 APPLICATION MANUAL(MSX-AUDIO) YAMAHA
  3. ^ a b 「西和彦Special Interview 次期MSXの全貌 ユビキタスMSXが焦点」『MSX MAGAZINE 永久保存版 2』アスキー書籍編集部編著、アスキー、2003年、pp.50-51.
  4. ^ The Ultimate MSX FAQ - MSX Audio section
  5. ^ a b 『MSX/2/2+ ゲーム・ミュージック・プログラム大全集』p.218
  6. ^ FM音楽館 横川理彦 徳間書店 1989 ISBN 4-19-723969-6

参考リンク

脚注