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2011年1月22日 (土) 01:36時点における版
エンパワーメント(エンパワメントとも、Empowerment)とは一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになることであると定義される。
対義語はディスエンパワーメント。エンパワーメントされていない状態のことをいう。
概要
エンパワーメントとは、20世紀を代表するブラジルの教育思想家であるパウロ・フレイレの提唱により社会学的な意味で用いられるようになり、ラテンアメリカを始めとした世界の先住民運動や女性運動、あるいは広義の市民運動などの場面で用いられ、実践されるようになった概念である。
エンパワーメントの概念が焦点を絞っているのは、人間の潜在能力の発揮を可能にするよう平等で公平な社会を実現しようとするところに価値を見出す点であり、たんに個人や集団の自立を促す概念ではない。
エンパワーメント概念の基礎を築いたジョン・フリードマンはエンパワーメントを育む資源として、生活空間、余暇時間、知識と技能、適正な情報、社会組織、社会ネットワーク、労働と生計を立てるための手段、資金を挙げ、それぞれの要素は独立しながらも相互依存関係にあるとしている。[1]
地方自治や弱者の地位向上など下から上にボトムアップする課題を克服していく上で、活動のネットワークが生み出す信頼、自覚、自信、責任等の関係資本を育むことが、エンパワーメント向上の大きな鍵とされている。
先住民運動とエンパワーメント
エンパワーメントは、先住民運動において、資源ナショナリズムなどの理論的枠組みとなった。
市民運動とエンパワーメント
市民参加のあり方が問われる地方自治などの分野において、市民の地域に対する関心や主体的な関わりを構築していく上で重要視されている概念のひとつともなっている。また、エンパワーメントの基盤となる公平な社会という理念は、市民オンブズマン制度や行政アセスメント制度などの確立する上で理論的支柱となった。
市民参加としてのエンパワーメントのことを市民エンパワーメント、地域振興や地域再生・地域活性化のことをコミュニティ・エンパワーメントということもある。企業では単に権限委譲やスキルアップなどの意味でも用いられる。まちづくりの分野では福祉や防災などでエンパワーメントの概念が多用される。防災分野では、非常時における市民の自助・共助による自主防災活動の重要性から、防災エンパワーメントという。
市民運動におけるエンパワーメントの概念のとらえ方は、以上のように分野により若干の違いがある。「力をつけること」と理解されることが多い。何か目前の課題がある場合に当事者が自身の置かれた状況に気づき、問題を自覚し、自らの生活の調整と改善を図る力をつけることを目指す意味が用いられるものであるといえる。そもそもこのエンパワーメントという概念自体が多義的なものであることから、そのような解釈が決して誤りとはいえない。[要出典]
エンパワーメントの著名な例(年次ごと)
- ヨーロッパで行われた近代建築運動(ル・コルビュジエが提唱した輝く都市の理念の基づいて行われたアテネ憲章などの取り組み)[要出典]
- マハトマ・ガンディーによってインドで行われた非暴力主義による独立運動
- キング牧師によってアメリカで行われた非暴力主義による公民権運動
- 日本の町内会で行われた市民公衆衛生運動(ハエと蚊をなくす生活実践運動)
- 学生運動(1960年に起きた安保闘争と1960年代末-1970年にかけての全共闘運動・大学闘争などの闘争運動)
- 日本赤軍のテロ運動[要出典]
- アイヌ民族復権運動
- アルカイダによるテロ運動[要出典]
- ムハマド・ユヌスによって始まったマイクロクレジットによる女性の支援
脚注
- ^ 市民・政府・NGO―「力の剥奪」からエンパワーメントへ、ジョン・フリードマン著、定松 栄一、西田 良子、林 俊行訳、新評論、1995年。 ISBN 4794802471
関連書籍
- 『被抑圧者の教育学』、パウロ・フレイレ著、ISBN 4750579076
- 『産業カウンセリング辞典』、日本産業カウンセリング学会監修、ISBN 978-4-7608-2622-3