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雇用の効力について
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[[民法]]での雇用は、雇い主と[[労働者]]とが対等の地位にあるとの前提のもとに、それぞれ自己の自由意志によって締結される契約である。これは日本の民法が[[ブルジョワ]][[市民革命]]としての[[フランス革命]]の[[精神]]に則って編纂された[[フランス]]民法典([[ナポレオン法典]])の影響を大きく受けた市民[[社会]]モデルを想定しているためである。<br/>
[[民法]]での雇用は、雇い主と[[労働者]]とが対等の地位にあるとの前提のもとに、それぞれ自己の自由意志によって締結される契約である。これは日本の民法が[[ブルジョワ]][[市民革命]]としての[[フランス革命]]の[[精神]]に則って編纂された[[フランス]]民法典([[ナポレオン法典]])の影響を大きく受けた市民[[社会]]モデルを想定しているためである。<br/>
しかし現代社会においては労使関係が対等である事は稀である。そのため、社会保障の観点から[[労働基準法]]などの各種[[労働法|労働法規]]による修正が加えられている。雇用契約の終了を巡る問題がその最たる例である。期間の定めの無い雇用契約は労働慣習では「[[正社員]]」と呼び、一般にも良く見られるが、民法の原則から言えば当事者がいつでも解約を申し入れることができ、特別な期日を指定しない限り、その申し入れから2週間で雇用契約は終了する(民法)。しかし労働基準法などの労働法規によって使用者からの労働者に対する雇用契約を解約する申し入れ(つまり、[[解雇]])は制限を受けている。詳しくは解雇の項を参照。民法の雇用条項は労働法の整備された現在、ほとんど適用される場面はない、といわれることもあるが、雇用契約での主要なルールの内、労働法には規定はなく、民法雇用条項にのみ規定があるものも存在するため(労働者からの辞職のルールを定めた[[b:民法第627条|第627条]]等)、この見解は誤りである。
しかし現代社会においては労使関係が対等である事は稀である。そのため、社会保障の観点から[[労働基準法]]などの各種[[労働法|労働法規]]による修正が加えられている。雇用契約の終了を巡る問題がその最たる例である。期間の定めの無い雇用契約は労働慣習では「[[正社員]]」と呼び、一般にも良く見られるが、民法の原則から言えば当事者がいつでも解約を申し入れることができ、特別な期日を指定しない限り、その申し入れから2週間で雇用契約は終了する(民法)。しかし労働基準法などの労働法規によって使用者からの労働者に対する雇用契約を解約する申し入れ(つまり、[[解雇]])は制限を受けている。詳しくは解雇の項を参照。民法の雇用条項は労働法の整備された現在、ほとんど適用される場面はない、といわれることもあるが、雇用契約での主要なルールの内、労働法には規定はなく、民法雇用条項にのみ規定があるものも存在するため(労働者からの辞職のルールを定めた[[b:民法第627条|第627条]]等)、この見解は誤りである。

== 雇用の効力 ==
=== 被用者の義務 ===
*労務給付義務
:労働者は使用者の承諾を得なければ自己に代わって第三者を労働に従事させることができない([[b:民法第625条|第625条]]2項)。この規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は契約の解除をすることができる([[b:民法第625条|第625条]]3項)。
*付随的義務
:契約上・信義則上の[[秘密保持義務]]や[[競業避止義務]]などを負う。
=== 使用者の義務 ===
*報酬支払義務
:雇用契約では[[b:民法第623条|第623条]]により使用者は労働者に対して労働の報酬を与えることを約することを内容としているので報酬支払義務を負う。
*付随的義務
:契約上・信義則上の[[安全配慮義務]]などを負う。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2009年3月29日 (日) 15:45時点における版

雇用(こよう)とは、仕事をさせるために有償で人を雇うことをいう。民法第623条では、雇用(雇傭)は当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約して、相手方がその労務に対して報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる典型契約の一種として規定されている。雇用契約の法的性質は諾成・有償・双務契約である。なお、従来、条文上は「雇傭」という漢字で表記されていたが、2004年(平成16年)の民法現代語化の際に「雇用」に改められている。

総説

雇用契約は請負契約委任契約などと同様に他人の役務の利用を目的とする労務供給契約の一種である。雇用は労務に服する事自体がその内容であり、請負では仕事の完成が目的となっている点が異なる。また、雇用では使用者に従属した形で労働が行われるが、請負では独立して行われる。一方、委任は請負同様独立性をもって遂行される点が異なるが、仕事の完成を目的とするわけではない点は雇用と類似する。

民法での雇用は、雇い主と労働者とが対等の地位にあるとの前提のもとに、それぞれ自己の自由意志によって締結される契約である。これは日本の民法がブルジョワ市民革命としてのフランス革命精神に則って編纂されたフランス民法典(ナポレオン法典)の影響を大きく受けた市民社会モデルを想定しているためである。
しかし現代社会においては労使関係が対等である事は稀である。そのため、社会保障の観点から労働基準法などの各種労働法規による修正が加えられている。雇用契約の終了を巡る問題がその最たる例である。期間の定めの無い雇用契約は労働慣習では「正社員」と呼び、一般にも良く見られるが、民法の原則から言えば当事者がいつでも解約を申し入れることができ、特別な期日を指定しない限り、その申し入れから2週間で雇用契約は終了する(民法)。しかし労働基準法などの労働法規によって使用者からの労働者に対する雇用契約を解約する申し入れ(つまり、解雇)は制限を受けている。詳しくは解雇の項を参照。民法の雇用条項は労働法の整備された現在、ほとんど適用される場面はない、といわれることもあるが、雇用契約での主要なルールの内、労働法には規定はなく、民法雇用条項にのみ規定があるものも存在するため(労働者からの辞職のルールを定めた第627条等)、この見解は誤りである。

雇用の効力

被用者の義務

  • 労務給付義務
労働者は使用者の承諾を得なければ自己に代わって第三者を労働に従事させることができない(第625条2項)。この規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は契約の解除をすることができる(第625条3項)。
  • 付随的義務
契約上・信義則上の秘密保持義務競業避止義務などを負う。

使用者の義務

  • 報酬支払義務
雇用契約では第623条により使用者は労働者に対して労働の報酬を与えることを約することを内容としているので報酬支払義務を負う。
  • 付随的義務
契約上・信義則上の安全配慮義務などを負う。

関連項目