「ゴシック体」の版間の差分

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2008年7月18日 (金) 02:30時点における版

ゴシック体ゴシックたいGothic)とは、サンセリフ書体(主として漢字、かな)のこと。ただし、文字においてゴシックの原義はローマン書体以外の文字のことであり、ブラックレターなども含まれる。

日本におけるコンピュータ用ゴシック体の比較。MS ゴシック・MS P ゴシック(Microsoft)、 OsakaApple)、東風ゴシック (Linux)、ヒラギノ角ゴシック・ヒラギノ丸ゴシック・(大日本スクリーン製造)・小塚ゴシック (Adobe
アンチゴチの例。かな部分は「アンチック体」という書体を使用している

書体としてのゴシックが指すものは、日本と欧米ではまったく異なる。ヨーロッパではゴシックの内ブラックレターなど装飾的な筆記書体を指す。日本においては縦画と横画の太さが均等で起筆、終筆点にかざりのない書体を指す。欧文書体におけるサンセリフ体に相当する。一方中国組版においては、同様の漢字書体を「黒体(ヘイティ)」と呼んでいる。

縦横の太さが均等なのがゴシック体の特徴であるが、伝統的なゴシック体では起筆から終筆までの線の太さには変化があり、中央がやや細い。これがゴナなどの書体との大きな違いのひとつとなっている。また、ゴナがボディーいっぱいに線を引くのに対し、伝統的なゴシック体ではやや内側を通る。

(日本の)ゴシック体は、「ゴジック」「ゴチック」とも呼ばれ、印刷業界においては「ゴチ」あるいは「ゴ」と略される。組版指定や修正指示においては、朱筆によって『ゴ』あるい『ゴチ』とだけ記入すれば、当該箇所をゴシック体にする、という意味になる。会話においては「ゴ」のみでは分かりづらいためか、「ゴチ」という表現が用いられることのほうが多い。

タイポグラフィとしての和文ゴシック体は、欧文サンセリフ体の影響によって出現したものと言って良いが、その完全な模倣であり漢字仮名の文化における背景の無いところから出現したとするのには無理がある。おそらくは、縦画と横画の均一なその形態は隷書体の流れを汲むものと考えられる。むろん隷書体は筆文字であるのでその起筆部・終筆部の形状は角が立ったものではなく、その変貌こそがサンセリフの設計概念を取り入れた和文ゴシック体の誕生と言えよう。

たいていの印刷物において、本文が明朝体で組まれ、その中で見出し部分や、強調したいところにゴシック体が使われた。それには、縦画と横画の差が大きく、欧文のローマン体にも擬せられる明朝活字が本文用書体として可読性にすぐれていた一方、インキのつく面が広く視覚的訴求性の高いゴシック体の特性があった。

そもそも金属活字の時代には、日本語など漢字を使う言語においてはアルファベットとは比較にならぬほど多数の活字をそろえねばならないため、欧文活版印刷のように多種の書体を混植することは難しく、よほど大きな印刷所以外では明朝とゴシックのみ、というところが多かった。このため「本文はミン(明朝)、強調はゴチ」という日本語組版の了解事項のようなものがあり(当時から「欧文のように多彩な書体を使いたい」という需要はあった)、時代が下って写真植字DTPが興隆し多数の書体を自在に扱えるようになっても、このシンプルなルールは変わることなく続いている。また現在の一般的な漫画雑誌や単行本では、漢字部分をゴシック体、かな部分を明朝体という書体とした混植が一般的である(これをアンチゴチという)。自動車のナンバープレートに用いられる数字書体は、「ゴジック体」と定められている。だがこれには制定書体があるわけではなく、特段の字形の規定自体がない。

DTPの黎明期においても、扱えるフォントは事実上モリサワリュウミンLと中ゴシックBBBだけであり、デザイナーたちはその制約の中で意匠をこらした。だがそれは確かに写植の多彩な書体から見れば制約ではあったが、金属活字を削って工夫していた状態に比して遙かに大きな利便性を得ていたとも言える。現在では扱えるフォントは選択に迷うほどに増加しているが、それでもやはり明朝とゴシックの組み合わせは王道とされる。

コンピュータの世界においても、ゴシック体は標準的な地位を占めている。一つにはディスプレイの表示解像度の問題から、縦横の差異やウロコ(明朝体で言えば三角形になっている部分)のある書体は読みづらくなる(環境によっては実用レベルでなくなる)一方、ゴシック体はそういった需要を適切に満たすゆえである。

Windowsに標準でインストールされるMS ゴシックと呼ばれるフォントは、マイクロソフトによる独自開発ではなく、写真植字機開発の伝統を持つリョービのゴシック-Bをベースに、リコーが開発しフォントデータとして仕上げたものである。その後、現ダイナコムウェアによるリョービのゴシック体も登場したが、MS ゴシックとは字形が僅かに異なる。

現在では強調・見出し以外にも、細身のゴシック体を本文用に使うことは多い。上述のようなコンピュータにおけるゴシックの多用との関係を指摘する声もあるが、それだけで語ることは難しいであろう。本文用に用いられるのは広告や雑誌などが中心であり、小説の単行本などでは基本的に用いられない。

こうした動きに対し、ゴシック体は明朝体以上に手書きの筆法と無関係になっている書体であるため、教育的見地からすると問題があり、日本語の手書き文化に悪影響を及ぼしていると指摘する向きもある。

関連項目