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有限アーベル群の構造定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レオポルト・クロネッカー (1823–1891)

有限アーベル群の構造定理(ゆうげんアーベルぐんのこうぞうていり、: structure theorem of finite abelian group)は、数学の特に群論における定理であり、有限アーベル群の基本定理(ゆうげんアーベルぐんのきほんていり)とも呼ばれる。 任意の有限アーベル群巡回群直積同型であることを主張するもので、Kronecker (1870) によって示された。この定理は有限生成アーベル群の構造定理フランス語版の特別の場合として、さらに単因子定理、すなわち主イデアル整域上の有限生成加群の構造定理に一般化される。

定理の主張

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定理 (Kronecker)
有限アーベル群 G に対し、1 より大きい整数からなる列 (a1, a2, …, ak) が一意に存在して、G はこの数列の各項に等しい位数を持つ巡回群直積群に同型: であり、かつ各 i = 1, …, k − 1 に対して ai+1ai を割り切る。

この一意に定まる数列を G の不変系、その各項を G単因子と呼ぶ。

証明

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この定理の証明法はいくつも存在する。筋の良い証明の一つは群の表現論を用いるもので、ほかにも例えば有限群の指標を用いるものもある。

以下に示すものは完全に群論の枠組みに収まるもので、分解の存在性は補題 1 による(それには補題 2 を用いる)。

補題 1 ― 冪数[1]:47 e を持つ任意の有限アーベル群 G に対し、G位数 e を持つ任意の巡回部分群は、G の直積因子である。

補題 2 ―  e, m は正整数で me を割り切るものとし、H を巡回群 Z/mZ の部分群とする。任意の準同型 は準同型 に延長できる。

応用

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  • 上記の分解において、G の冪数は a1 に等しく、また G の位数は積 a1ak に等しい。したがって、有限アーベル群の位数がその冪数以下となれば、それは巡回群である。特に、可換体の乗法群の任意の有限部分群は巡回群になる[2]
  • 二つの有限アーベル群が同型となるのは、各位数の元の数がそれら二つの群において一致するときである。実際、このデータから単因子が求められる[3]。「アーベル」であるという条件を欠かすことはできない: 例えば、任意の奇素数 p に対し、位数 p3 かつ冪数 p の群がふたつ存在する[4]。それはアーベル群 (p)3Fp 上のハイゼンベルク群である。

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注釈

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出典

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  1. ^ 服部昭『現代代数学』朝倉書店〈近代数学講座 1〉、1968年。「有限群の元の位数の最小公倍数を冪数と呼ぶ」 
  2. ^ (en) E. B. Vinberg, A Course in Algebra, AMS, coll. « GSM (en) » (no 56),‎ (ISBN 978-0-82183413-8, lire en ligne), p. 336–337.
  3. ^ Vipul Naik. "Finite abelian groups with the same order statistics are isomorphic". groupprops.subwiki.org. 2022年12月27日閲覧 および McHaffey, Ronald (1965). “Isomorphism of finite abelian groups”. Amer. Math. Monthly 72 (1): 48–50. JSTOR 2313001. 
  4. ^ McHaffey 1965.

関連項目

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参考文献

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