投影 (図学)
図学における投影(とうえい、英: projection)は3次元立体を2次元平面へ写すことである[1][2]。投象(とうしょう)とも。
「投影」は「写し方」と「写した図」の両方を指しうるため、写し方を投影図法、写した図を投影図と呼び分ける場合もある。
概要
[編集]物体は3次元空間に立体として存在する。ヒトは3次元空間から放射される光を目の網膜曲面(2次元面)で受け止めそこから空間の構造を推察できる。また写実絵画やカメラでは空間を平面へ写し取りこれを鑑賞する。工業では製品を加工するために立体をある側面から見た図が必要になる。これらでは共通して「3次元立体を2次元平面へ写す」ことがおこなわれており、これを投影という[1]。写真や図面は投影図といえる。
投影では各点からの投影線と投影面の交点を取って投影図を得る(#仕組み)。投影図法により得られる投影図の特性が異なるため、目的に応じた様々な投影が存在する(#分類)。
仕組み
[編集]投影では、3次元空間内の1点から投影線を伸ばしこれが投影面と交差した箇所をこの点の投影先とする。これを空間内すべての点に対しておこなうことで投影図を得る。
投影線
[編集]投影線(とうえいせん、英: projection line, 英: projector)は3次元空間中の点を投影する線である[3]。投射線(とうしゃせん)とも。
投影線は物体のある点から放射された光の軌跡に例えられる。この光を平面(=投影面)で受け止めれば空間を平面へ写し取れる。
投影線にどのような幾何的制約を与えるかで投影図が大きく変化する。投影線が1点へ収束する制約を与えれば遠近感が発生し(透視投影)、投影線が互いに平行である制約を与えれば奥行きに依らず長さが保存される(平行投影)。
投影面
[編集]投影面(とうえいめん、英: projection plane)は投影線を写し取る平面である[4]。
分類
[編集]投影は写し方に応じて以下のように分類できる:
平行投影
[編集]視点が無限遠に存在すると仮定すると、立体物上の点と視点とを結ぶと投影線は互いに平行になる(図参照)。これを平行投影(へいこうとうえい、英: Parallel projection)という。
平行投影は投影線と投影面の直交有無によって垂直投影と斜投影に分類される。
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垂直投影(等軸測投影)
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斜投影(カバリエ投影)
垂直投影
[編集]垂直投影(すいちょくとうえい、英: Orthographic projection)は投影線と投影面が直交する平行投影である[5]。
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正投影。1つの立体物を複数の投影図で表す。
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軸測投影。複数の側面が単一の投影面に写る。
軸測投影
[編集]軸測投影 (じくそくとうえい、英: Axonometric projection) 。
軸測投影はさらに等軸測投影、二等角投影 (英: Dimetric projection) 、斜方投影 (英: Trimetric projection、不角投影とも) に分類される。
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等軸測投影。3軸がそれぞれ等しい縮尺率で描写される。
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二等角投影。2軸が等しく縮小されている。
最もよく使われるのは等軸測投影(とうじくそくとうえい、英: Isometric projection)(等角投影、アイソメトリック投影(アイソメ)とも)である。正投影と異なり、対象物を斜めから見た図となる。座標の2軸が30゜の傾きで描かれ、各辺は実寸で作図されるため、寸法出しに都合がよいが、奥行きも実寸となるため、実際の見た目より大きく描かれることになる。(→等角図)
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斜投影
[編集]斜投影(しゃとうえい、英: Oblique projection)は投影線と投影面が直交しない平行投影である[6]。
斜投影の代表は「キャビネット投影法」である。正面図を等比率で同じ形のまま縮小し、奥行きは45゜の角度で2分の1の縮尺で描く。なお、奥行きを実寸で作図するものを「カバリエ投影法」(キャバリエ投影法)という。
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投影図
[編集]投影図(とうえいず、英: projection drawing, 英: projection view)は3次元立体を2次元平面へ写すことで得られる表現・図である[7][8]。
投影図の分類
[編集]投影図は対象と視点の位置関係から以下のように分類できる:
- 正面図(しょうめんず、英: front view): 対象の正面に視点が正対[9]。立面図(りつめんず、英: elevation)とも[10]。
- 上面図(じょうめんず、英: top view): 対象の上面に視点が正対[11]。平面図(へいめんず、英: plan)とも[12]。
- 側面図(そくめんず、英: side view): 対象の側面に視点が正対[13]
- 下面図(かめんず、英: bottom view): 対象の下面に視点が正対[14]
- 背面図(はいめんず、英: rear view): 対象の背面に視点が正対[15]
対象の見え方が最も明瞭になるよう自由に視点を決めた投影図を主投影図(しゅとうえいず、英: principal view)という[16]。
ウィンドウ
[編集]投影におけるウィンドウ(英: Window)は投影面のうち投影図として切り出される領域である[17][18]。窓(まど)とも。
写真や図面は投影面をウィンドウで切り出したものといえる。絵画における額縁やアニメのレイアウトにおけるメインフレームで囲まれた領域に相当する。コンピュータグラフィックスにおけるビューポートとも関係が深い[19]。ウィンドウが切り出した空間の広さを表現する指標のひとつに画角がある(透視投影で大きな意味をもつ)[20]。
投影図法
[編集]投影図法(とうえいずほう、英: projection drawing method)は3次元立体を2次元平面へ写す規則・手法・作図手順である[21]。投影法とも[22][1]。
投影図法は各投影に合わせて様々存在する。また、いくつかの図法に共通する作図のための概念が存在する。
脚注
[編集]- ^ a b c "三次元の物体を平面上で表現するための図法(投影法)" 以下より引用。武蔵野美術大学. 透視投影. MAU 造形ファイル. 2024-07-18 閲覧.
- ^ "投影 projection" 日本図学会 2024 より引用。2024-07-18 閲覧.
- ^ "投影線 投影中心からの視点と対象物上の点とを通って表示される直線。投影平面でのその交点は,対象物のその点の投影を示す。 projection line" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "投影面 対象物の画像を得るために,対象物が投影される平面。 projection plane" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "垂直投影 normal [orthogonal] projection; orthographic projection" 日本図学会 2024 より引用。2024-07-18 閲覧.
- ^ "斜投影 oblique projection" 日本図学会 2024 より引用。2024-07-18 閲覧.
- ^ "投影図 ... 投影法によって描いた図。... projection view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "投影図 projection; projection drawing" 日本図学会 2024 より引用。2024-07-18 閲覧.
- ^ "正面図 対象物の正面とした方向からの投影図 ... front view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "立面図 ... 鉛直面への投影図 ... elevation ... 正面図 ... 立面図ともいう"
- ^ "対象物の上面とした方向からの投影図 ... 上面図 (top view)" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "平面図 ... 対象物の上面とした方向からの投影図又は水平断面図 ... plan" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "側面図 ... 対象物の側面とした方向からの投影図 ... side view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "下面図 ... 対象物の下面とした方向からの投影図 ... bottom view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "背面図 ... 対象物の背面とした方向からの投影図 ... rear view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "主投影図 対象物の形・機能の特徴を最も明瞭に表すように選んだ投影図。 principal view" JIS Z8114:1999 より引用。
- ^ "ウィンドウ 投影面上の投影範囲" 藤堂 2015, p. 15 より引用。
- ^ "投影面にはウィンドゥが設定される.ウィンドゥはいわば投影面に開けられたのぞき窓である." 西田 2003, p. 334 より引用。
- ^ "ウィンドゥ内の2次元図形データは,表示装置固有のデバイス座標系 (とくにディスプレイ面の場合はスクリーン座標系ともいう)の指定した領域すなわちビユーポートに変換され表示される." 西田 2003, p. 335 より引用。
- ^ "画角(視野角) • ウィンドウ(投影範囲)の大きさを決める角度" 藤堂 2015, p. 15 より引用。
- ^ "投影図法 projection drawing method ... 投影法 projection [projecting] drawing method" 日本図学会 2024 より引用。2024-07-18 閲覧.
- ^ "投影法 三次元の対象物を二次元画像に変換するために用いる規則。... projection method" JIS Z8114:1999 より引用。
参考文献
[編集]- 西田 (2003). “チュートリアル コンピュータグラフィックスの数理(2)座標変換”. 応用数理 (社団法人日本物理学会) 13 (4): 334-342. CRID 1390001205765353472 .
- JIS Z8114:1999 製図-製図用語
- 藤堂 (2015年). “第5回CGのための数学的基礎2 -投影変換-”. 講義「コンピュータグラフィックス」. 明治大学. 2024年8月6日閲覧。
- 日本図学会. “図学辞書(簡易版)”. 2024年7月18日閲覧。