布目摺り

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『名所江戸百景』夏の部71番「利根川ばらばらまつ」船の帆に布目摺りが用いられている。

布目摺り(ぬのめすり)とは、浮世絵版画で用いられる版画技法の一種で、実物の布をつかった空摺りの一種[1]である。布目を表すために用いられる。

概要[編集]

布目摺りを行うには、布目をあらわそうとする絵の形と同じ大きさに、またはの切れを切りぬいて板面にはりつけ、これを版木にして、圧力を強くかけるために馬楝で摺る[2][3]。こうすることで布生地のもつ微妙な凹凸が、刷り上がった版画の紙の凹凸として移し取られ、布の質感が表現できる。

作例[編集]

歌川広重が制作した連作浮世絵名所絵名所江戸百景』の中のひとつ「利根川ばらばらまつ」では、船の帆の質感を出すために、布目摺りの手法が用いられている[4]

脚注[編集]

  1. ^ 林美一『浮世絵の極み春画』新潮社、1988年、16頁。 
  2. ^ "ぬのめ‐ずり【布目摺】", 日本国語大辞典”. JapanKnowledge. 2022年1月30日閲覧。
  3. ^ 布目摺り”. 版画ネット. 2022年1月30日閲覧。
  4. ^ 『広重 名所江戸百景』クールジャパン研究部、2013年、72頁。