上遠恵子

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上遠 恵子(かみとお けいこ、1929年7月17日 - )は、日本エッセイスト翻訳家レイチェル・カーソン日本協会会長[1]

人物[編集]

東京都出身[2]東京薬科大学卒業[2]。1974年、ポール・ブルックス英語版『生命の棲家』(後に『レイチェル・カーソン』と改題)を訳出。研究室勤務、学会誌編集者を経て、現在エッセイスト。レイチェル・カーソン日本協会理事長を経て会長[1]

年譜[編集]

1929年:東京田園調布にて誕生。父親は昆虫学者東京帝国大学理学部を卒業後、農林省(現:農林水産省)に勤務する技官だった。両親がクリスチャンだったため、幼児洗礼を受ける。

1936年:小学校入学。

1941年:太平洋戦争勃発。田園調布のあたりもB29空襲を受けるが、生家は被害を免れた。

1942年:東京府立第三高等女学校(現:東京都立駒場高等学校)入学。

1946年:帝国女子理学専門学校(現:東邦大学理学部生物学科入学、2年後に退学

1950年:東京薬科大学に2年次編入学、在学中に21歳で結婚

1953年:同大学を卒業し、東京大学農学部農芸化学科研究室に勤務[3]

1959年:離婚。学会誌の編集などに携わる。この頃、甥や姪の母親代わりも務めるようになる。

1960年:日本農芸化学会編集部勤務[3]

1962年:米国でレイチェル・カーソンが『Silent Spring』を出版。DDTを始めとする農薬などの化学物質の危険性、生態系への影響を公にし、社会的に大きな影響を与えた。著作は半年で50万部を売り上げる。日本でも2年後に翻訳出版される。

1965年:植物化学調節研究会主事[3]

1970年:『Since Silent Spring/邦題:サイレント・スプリングの行くえ』フランク・グレアム著(同文書院)を共訳する[4]。職業の分野だけでなく境遇まで似ていることもあり、レイチェル・カーソンに興味を抱く[2]

1974年:『The House of life/~Rachel Carson at Work~/邦題:生命の棲家』ポール・ブルックス著(新潮社)を訳出[5](後に『レイチェル・カーソン』と改題)。

1977年:植物化学調節学会を退職。執筆生活と両親の介護をする。

1987年:『The Edge of the Sea/邦題:海辺』(平河出版)を訳出[6]。後に平凡社ライブラリーにて新書版も出版。

1988年:母死去。レイチェル・カーソン日本協会設立。代表委員となる[1]。母の死をきっかけに信仰を告白。

1991年:『The Sense of Wonder/邦題:センス・オブ・ワンダー』(佑学社)を訳出[7]

1993年:『Under the Sea Wind/邦題:潮風の下で』(宝島社)を訳出[8]。父死去。

1995年:『Peace Times/邦題:平和へ』キャサリン・スコールズ著(岩崎書店)を訳出[9]

1996年:佑学社の倒産により、『The Sense of Wonder/邦題「センス オブ・ワンダー」を新潮社が買い取り再販。

1999年:『Voice for the Earth/邦題:「沈黙の春」で地球の叫びを伝えた科学者レイチェル・カーソン』ジンジャー・ワズワース著(偕成社)訳出[10]

2001年:映画『センス・オブ・ワンダーレイチェル・カーソンの贈りもの』(グループ現代製作)に朗読者として出演[2]子安美知子・上遠恵子対談集『いのちの樹の下で』(海拓社)出版[11]

2004年:著書『レイチェル・カーソンの世界へ』(かもがわ出版)を上梓[12]

2006年:『Speaking for Nature/邦題:自然保護の夜明け デイヴィド・ソローからレイチェル・カーソンへ』ポール・ブルックス著(新思索社)を訳出[13]

2013年:著書『レイチェル・カーソン:いのちと地球を愛した人』(日本キリスト教団出版局)を上梓[14]

2014年:著書『レイチェル・カーソン いまに生きる言葉』(翔泳社)を上梓[15]

2021年:監修書『13歳からのレイチェル・カーソン』(かもがわ出版)を上梓[16]

翻訳[編集]

レイチェル・カーソンの著作[編集]

  • 『海辺 The Edge of the Sea』(平河出版社、1987年)[6]、のち平凡社ライブラリー[17]
  • 『潮風の下で Under the Sea-Wind』(宝島社、1993年)[8]、のち文庫[18]、岩波現代文庫[19]、ヤマケイ文庫[20]
  • 『センス・オブ・ワンダー The Sense of Wonder』(祐学社、1991年[7]、新潮社、1996年[21])、のち新潮文庫[22]

他の主な訳書[編集]

  • フランク・グレアム 『サイレント・スプリングの行くえ Since Silent Spring』(田村三郎共訳、同文書院、1970年)[4]
  • ポール・ブルックス『生命の棲家 The House of Life: Rachel Carson at Work』(新潮社、1974年)[5]
    • 改訂版『レイチェル・カーソン』(新潮社、1994年[23]、新版2004年[24])、のち新潮文庫 上[25][26]
  • キャスリン・カドリンスキー『レイチェル・カーソン―沈黙の春をこえて』(佑学社、1989年)[27]、児童向け。点字資料[28]
  • ジンジャー・ワズワース『レイチェル・カーソン 〈沈黙の春〉で地球の叫びを伝えた科学者』(偕成社、1999年)[10]、児童向け
  • リンダ・リア『レイチェル・カーソン『沈黙の春』の生涯』(東京書籍、2002年)[29]
  • ポール・ブルックス『自然保護の夜明け』(北沢久美共訳、新思索社、2006年)[13]

著書[編集]

  • 『レイチェル・カーソン : その生涯』レイチェル・カーソン女史生誕80年記念事業推進委員会、1987.5[30]
  • 『「沈黙の春」を読む』原強と共著、レイチェル・カーソン日本協会編、かもがわ出版、1992.4[31]
  • 『いのちの樹の下で : エンデとカーソンの道を継ぐ』子安美知子と共著、海拓舎、2001.7[11]
  • 『レイチェル・カーソンの世界へ』かもがわ出版、2004.8[12]
  • 『レイチェル・カーソン : いのちと地球を愛した人』日本キリスト教団出版局、2013.2[14]
  • 『レイチェル・カーソン : いまに生きる言葉』翔泳社、2014.7[15]

脚注[編集]

  1. ^ a b c レイチェル・カーソン日本協会”. j-rcc.org. 2023年7月6日閲覧。
  2. ^ a b c d リンダ・リア著, 上遠恵子訳『レイチェル : レイチェル・カーソン「沈黙の春」の生涯』東京書籍、2002年8月、巻末頁。ISBN 4-487-79633-4 
  3. ^ a b c フランク・グレアム・ジュニア著, 田村三郎, 上遠恵子訳『サイレント・スプリングの行くえ : 自然の保護と人間の生態』東京同文書院、1971年、巻末頁https://dl.ndl.go.jp/pid/12136293/1/162 
  4. ^ a b 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2023年7月6日閲覧。
  5. ^ a b 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  6. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  7. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  8. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  9. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  10. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  11. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  12. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  13. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  14. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  15. ^ a b 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  16. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  17. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  18. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  19. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  20. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  21. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  22. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  23. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  24. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  25. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  26. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  27. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  28. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  29. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  30. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。
  31. ^ 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2023年7月7日閲覧。